4 リベレイト アルティメト・フレイム
それから四日間、俺とケイトはアイテム集めをしていた。アイテムを集めるためには、決まった攻略ルートを通らなければいけない。「面倒くさいわね」と愚痴るケイトを連れて、ようやく二つ加速アイテムを入手した。無論、その他のアイテムや経験値もそれなりに入手した。
そして五日目、攻略の最中に緊急コールが鳴り響いた。ケイトがこちらを見る。俺は頷いた。
ケイトは空中にウィンドウを開いた。
「緊急コールが出てるのは、エリア20、青の沼ね」
そう言いながら、ケイトは俺にフックを投げた。それを受け取ると、俺はすぐに移動した。
目の前の風景が一瞬で変わる。俺は青の沼の傍に立っていた。
見ると、5人組パーティーがバグ・ビースト4体に囲まれている。こいつらは群れるようになったのだろうか。
そう思った矢先、一体のバグ・ビーストが、パーティー・メンバーの一人に襲いかかった。襲われた
魔導士は指輪から光を放ち、緑に光るエネルギーシールドで防御する。が、バグ・ビーストは、そのエネルギーシールドを喰い始めた。
「な、なんだこいつ! シールドを喰ってる!」
魔導士が叫んだ。あっという間にシールドを食い破ると、バグ・ビーストは魔導士の腕に喰いついた。
「う――うわぁっ!」
魔導士が悲鳴を上げて後退した。その腕から先が無くなっている。
「オ、オレの腕がぁっ!」
肘から先が無くなった自分の腕を見て、魔導士が悲鳴をあげた。バグ・ビーストはもぎとった腕を呑み込んでいる。どうやら、指輪が目的だったらしい。一瞬の出来事だった。
ケイトが横に現れた。
「グラード!」
俺は頷くと、デリート・ソードを取り出す。その時、もう一体のバグ・ビーストが剣士に襲いかかった。その時、剣士は横にいた巫女を引っ張り、バグ・ビーストの前に差し出した。
「きゃあっ!」
巫女が悲鳴をあげる。バグ・ビーストの頭が裂けて、大きく開いた口が巫女に喰いかかろうとした。
「クロノス・ブレイク」
俺は時壊魔法を発動させる。
バグ・ビーストの動きがほぼ止まった状態になる。俺はその場から走り、バグ・ビーストを斬り払う。そのまま別の三体も、デリート・ソードで斬り払った。
「ブレイク・アウト」
時を戻す。再び動き出した時間の中で、バグ・ビースト四体が一瞬で消滅した。俺は改めて、襲われた巫女の顔を見た。
「ム……」
驚いたことに、それはマリーネだった。だが、向うは俺がグラードの姿をしているので気づかない。このパーティーが、『アルティメット・フレイム』だったらしい。俺は赤と黒のやたら派手な鎧をまとった剣士を睨んだ。
「お前」
剣士が一瞬の出来事に驚きながらも、俺の方を見た。そして驚きの表情を浮かべる。俺はそれに構わず、剣士に向かって言った。
「今、そこの巫女を盾にしようとしたな? それが仲間にすることか」
剣士は一瞬気まずい顔をしたが、すぐににやりと笑って口を開いた。
「なに言ってんだ、お前? 俺の装備とこいつの装備では、かかってる元手が雲泥の差なんだよ! チーム力の維持のために、何を優先すべきか判断しただけだろ」
「優先したのはチームじゃなくて、お前のエゴだろう」
俺は剣士を睨む。剣士は薄笑いを引っ込めると、逆にこちらを睨み返してきた。
「うちのチームの事に口出さないでほしいな、グラードさんよ」
その剣士が、食ってかかるように言った。俺は、相手が自分の名を知っている事に、目線を止めた。
「あんた、グラードだろ? 覚えてるぜ、あんたの事は忘れたことがない。あんたは覚えてないかもしれんが、オレはドーベル。三年前、あんたに決闘を挑んで負けたうちの一人だよ」
ドーベルと名乗った剣士が、また薄笑いを浮かべた。ケイトが横から俺に囁いた。
「貴方、決闘とかを受けてたわけ?」
俺は黙って頷いた。
俺は決闘を断らない主義だった。決闘で勝つとランキングが上がる。ランキングが高いプレイヤーの方がレアアイテムの出現率が高いと言われており、そのために俺は申し込まれた決闘を全部受けていた。