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ライオン・パレット

「いや、オレの方はないけど。マリーネは?」

「いいえ、わたしもいいです」


 マリーネは軽く手を振ってみせた。

 僕らはレオニードを中心としたパーティー『ライオン・パレット』としてチームを組み、その攻略の様子のログ・ビューを配信サイトView Lineに投稿している。


 ログ・ビューは映画のように二次元の動画で見ることもできるが、三次元で好きな角度から鑑賞することもできるし、場合によっては特定の登場人物の視点に入り込むこともできる。もっとも、好きな角度からといっても視角限度はある。例えばうちのビューでは女の子のスカートを下から覗いたり、極端に上空から様子を見ることはできない。…という事は逆に、スカートを覗けることを売りにしてるチャンネルもある。けど、うちはそういうチャンネルじゃない。


 じゃあ何を売りにしてるかと言うと、うちはストーリーを織り込むストーリー・ビューのチャンネルなのだ。ただエリアやモンスター攻略の様子を見せるのではなく、それに伴って色々なストーリーが進行する。今回は、人気のVライナー(View Lineに投稿してる人の総称)であるリスティ&グレタとのコラボ企画で、二人に出演してもらった。


 セクシーな美女の剣士リスティと、クールな魔女グレタはストーリー・ビューを配信している人気のコンビだ。今回は二人が喧嘩分かれして、グレタがレオと知り合いになりレオがパーティーにグレタを入れようとする。


 それを魔導士の僕がよく思わずにパーティーを離れて…というようなストーリーだ。事前にアイデアを出し合う打ち合わせはしたが、シナリオを書いたのは僕である。それぞれの視点から見たい人もいるので、僕とレオたちが離れてるところは別撮りにし、後で合流するように編集する。映画的に見る人には一つながりで物語を追えるようにも編集するのである。


「じゃあ、そっちのログをコピーするよ。編集したら、また送っとくからチェックしといて」


 僕はそう言いながら、レオのファイルとマリーネのファイルのコピーを取る。レオが軽く息をついて言った。


「キアラの編集に文句なんかないんだから、そのままでもオッケーなんだけどな」

「駄目駄目。そういう風になれ合って、編集者が暴走して駄目になったチームは沢山あるんだ。節度は大事だよ」

「キアラさんって、ほんと真面目ですよね」


 マリーネがそう言いながら笑った。そこにレオが付け加えた。


「…っていうか、いい加減、編集分のギャラを別取りしてくれよ。もううちのチャンネルも登録者数が120万人を越えて、まあまあの人気チャンネルなんだぜ。それくらいのチャンネルは、大体プロの編集者を入れて配信してるんだ。いつまでも三等分はないだろ」

「いいんだよ、別に。プロじゃないし、そうなるつもりもない。僕はエフェクトも売れてるし、うちの人気はレオとマリーネに頼ってるんだからさ」


 顔を見合わせるレオとマリーネに、僕は続けた。


「レオのレンタル数は10万人。マリーネは12万人だ。対して僕は2万ってとこだからね、君たちなしじゃあ、チャンネルはもたないよ」


 『ノワルド・アドベンチャー』にはキャラクターのレンタルシステムがある。ソロでプレイするプレイヤーには、高ランクのモンスターは単独ではどうしても攻略できない場面がある。また、パーティーで攻略していても、モンスターの特性上、パーティーにいないキャラ能力が必要な場合もある。その時、他人のキャラクターをレンタルするのだが、キャラクターにもランクがあり、低い順からE~A、S、SS、Xとランクが上がっていく。


 Aランクまでは無償でレンタルできるが、S級以上は有償である。しかし、A級キャラでは太刀打ちできないモンスターも多く、必然的に有償キャラを使用することになる。その有償の一部は、キャラクターを使用しているプレイヤーに還元されるシステムなのである。


 キャラクターの能力、というのは重要だ。が、一緒にパーティーを組む以上、好みというものがある。美少女とか、格好いい剣士などは人気のキャラクターになりやすいが、見かけ以上に重要なのは、その『性格(キャラクター)』である。


 レンタルの際の主な言動(例えば極め技の時の言葉とか)を前もって入力しておくこともできるが、プレイヤーは有償で特定時間のの言動をAIに記憶させておくシステムを使うこともできる。そうするとレンタルキャラでも、ある程度のコミュニケーションが成立し、一緒にパーティーを組んでるような形でプレイができるのだ。


 で、ログ・ビューを配信するのは人気が出る必然条件になっていて、レオニードもマリーネもS級キャラとしては、そこそこ人気のキャラなのである。二次元動画には昔ながらの企業CMも入るので、チャンネル自体も収益になる。だから、二人の人気は僕にとっても大事だというわけなのだ。


「ま、キアラがそう言ってくれるのはいいけどよ。気が変わったら、いつでも相談にのるからな」

「あの……」


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