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対決、アルデバラン

「判った!」


 俺はそれだけ言うと、西側階段へ向かった。陽動作戦に引っかかった。奴は一瞬でもいいから、俺を足止めしたかったのだ。


「――明くん!」


 動こうとした俺に声がかかり、振り返る。ぽめらが、両拳を胸の前で握ってみせた。


「ガンバ!」


 俺は黙って頷いた。


「クロノス・ブレイク」


 時壊魔法を発動させ、俺は城を駆け抜けた。

 俺がクロノス・ブレイカーを発動させた事で、アルデバランのスカイ・エンダーが共振してるはずだ。


 果たして、奴は来ていた。西側警護のレオたちは、ほとんど固まっている。そこにアルデバランが単独で襲いかかろうとしていた。俺はさらに加速し、レオの頭に落とされようとしていた鉈を弾いた。


「来たか」


 アルデバランがにやりと笑いながら、距離をとる。と思いきや、アルデバランは階段を駆け上がり始めた。俺も後を追う。


 奴はただ、サミット会場に到着し、首脳たちを削除するのが目的なのだ。俺と戦うのが目的ではない。


 だが、それは俺も同じだった。奴と戦うのが目的ではなく、奴の目的を阻止する。それが俺の戦いだ。


 9階の警備隊も、超高速の時間にいる俺たちには止まっているも同然である。その付近をすり抜ける際、アルデバランはその一人を俺の方へ突き飛ばした。俺はそれを避けるために、僅かに後れをとる。奴は10階会議室の、巨大な扉に手をかけた。


 衝撃音が響く。アルデバランの伸ばした手を、俺が斬り落とそうとしたが、それをアルデバランが防いだのだ。


「やはり、お前を片づけないと目的は遂行できなさそうだな」


 アルデバランは扉の前で、ゆっくりと両手の鉈を×の字から下に落とした。怪鳥のような姿だ。

 胸からぶら下げた髑髏の首飾りの真ん中に、宝珠が見えた。スカイ・エンダーだ。


 一瞬の笑いの後、アルデバランが仕掛けてくる。両手の鉈の、左右同時攻撃。一方を受けることはできない。俺はそれを見切って躱す。と同時に、下から奴を斬り上げた。


「ヒョォッ」


 奴が奇声を発しながら、それを躱す。と思うや否や、奴は片方の鉈を地面に突き立てた。その柄を踏みつけて、跳躍を見せる。思わぬ間合いの伸びに、俺の目算が狂う。奴が横に払った鉈が、俺の頬をかすめていた。


「ク……」

「ヒャッハーッ!」


 それを皮切りに、奴の連続攻撃が始まった。左右上下からの変幻な太刀筋。しかし俺には、以前よりそれがよく見えた。師の剣筋を嫌と言うほど、よく見たせいだ。俺は相手の攻撃を防ぎつつ、相手の隙を見つけて剣を繰り出す、しかし奴も、それを首尾よく防いでいる。


 ほとんど互角の戦いと思えた。膠着した状態で、俺たちの超高速時間が過ぎていく。


「そろそろ超高速が切れる頃だろう。そうすれば援軍も到着する。お前たちの陰謀は阻止されたんだ、アルデバラン」


 俺は奴にそう言った。その言葉自体も、時間稼ぎだ。だが、奴は薄笑いを浮かべた。


「どうかなあ?」


 奴がそう言った瞬間、足元から何かが飛来してきた。俺の足、手に絡みつく。紫色のアメーバみたいなものが、紐状になって俺の手足に絡みついたのだった。


「これは――」

「粘着魔法だよ。なにも剣だけで勝負するとは限らないだろ? ここはノワルド。場所には場所の、相応しい戦術があるんだよ」


「お前が…魔法だと?」

「だから、甘いんだよ、小僧!」


 身動きできない俺に、アルデバランが左右同時に斬りかかってきた。二本の鉈が、俺の両肩に食い込む。鉈は胸の中央まで俺を斬り裂き、そこで止まった。


「残念だったなあ?」


 顔を寄せた赤ゴーグルの下で、アルデバランが口元を歪める。


「…全くだ」


 俺はそう呟いた。奴は何か異変を感じたように、口元の笑いを消す。そして鉈を抜こうとした瞬間、その腕が凍りついていってる事に気が付いた。


「これは――」


 奴の鉈と腕が凍りつき、奴は身動きできない。今しかない。


   *


 僕はグラードのアバターから抜け出して、背中に廻った。目の前には、グラードの背中がある。


「さよなら、グラード」


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