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大統領来日

「私はせめてNISにいる女の子を助けたいと活動して来た。けど、その脱出にもお金はかかる。NISを運よく脱出できても、その後、外国での生活費用だとか色々な面でお金はかかるの。そこへユキは1億や2億レナルをいきなり出してくれたから、とても助かったわ。最初は罠じゃないかと疑ったくらい」


 グレタは苦笑してみせた。


「多分、サガとして稼いだお金だね。雪人は使い道がないって笑ってたけど…君たちの役に立てたんだ」


 リスティは頷いた。


「けど本人が現れて、リベレイトに参加すると言い出したの。もう貯金はないからって。実はあたしたちがノワルドに参加するようになったのは、ユキのアイデアなのよ」

「そうだったのかい?」


「君たちがノワルドで、直接資金を稼ぐこともできる…って言って、色々教えてくれたの」

「それにノワルドでの活動は、つらい現実を忘れる息抜きにもなったしね」


 グレタは微笑して見せた。


「けどユキはそれ以外にも、とても重要な働きを見せてくれたわ。色々な情報を入手して、NISの動向を調べるのにとても重要な働きをするようになったの。私たちの活動は、ユキのおかげで格段に向上した」


 そうだったのか、雪人…。君はスカイ・エンダーの力を、この人たちのために使ってたんだ。


「前にね…ちょっとだけ、ユキが自分の好きな人の事を話してくれたよ。ちょっと見、女の子っぽいけど、頭が良くて芯が強い、優しい人だって。キアラの事なんでしょ」


 リスティはそう言って、少し泣きながら笑ってみせた。僕は首を振る。


「それはみんな、雪人に言える事だよ……。僕にはそんな資質も資格もない。それで…死ぬ前に、これを君たちに渡してくれと頼まれたんだ」


 僕はそう言って、メモリーを渡した。グレタが手に取ると、PCに差し込む。


「これは……サマナ大統領の行動計画表。来日やレナルテ・サミットの日程の詳細よ」

「NISは、サマナ大統領の行動計画を熟知している?」


 僕はグレタの顔を見た。グレタが流し目をよこす。


「NISはサマナ大統領来日に合わせて…何かを企図している」

「許せないわ、そんな事。今回のサミットは差別の撤廃を世界的に公表するもの。主要国が同意した後、イスラム圏を含んだ国際会議で、同じ宣言が採択される見通しだわ。サマナ大統領は熱心なその推進者よ。あたしたちだって、応援している」


「だからこそ、邪魔なんだろうねえ。…もう一つファイルがある。これは――民間軍事会社アームド・スペルと取引がある個人や企業。国の名簿だ。つまり、アームド・スペルを通してNISを支援してる連中という事になる。これは凄いわ。これを公表したら、表だってはNISとの関係を否定していた連中が、世界の非難に晒されることになる」

「雪人が命懸けで入手して来たデータが……これだったのか…」


 僕は切ない想いをかみ殺して、画面を睨んだ。


   *


 サマナ大統領は専用リムジンから姿を現した。

 ブルーのスーツに身を包み、レセプション・パーティーの会場へと颯爽と足を運ぶ。そのサマナ大統領の傍に、周囲から四機のレナロイドが身を寄せてきた。


 短い通路だが、報道陣はロープで警備された外側両脇に大勢いる。警備の警官も、大勢が導入されていた。フラッシュが瞬く中、サマナ大統領は笑顔で歩いていく。

 その瞬間だった。


 左後ろのレナロイドの手が、サマナ大統領の首筋に伸びた。


「――クロノス・ブレイク」


 間に合うか。僕は手を伸ばした。

 こちらが超高速をかけるという事は、向うにもかかる。アバターは超高速になれても、現実の機械には速さに限界がある。それでも瞬間の速さを捉えるためには、超高速の中にいた方が有利だ。


 意識は早く動いてるのに、機械の動きが遅い。間に合うのか、届かないのか。

 サマナ大統領の背後に伸びる機械の手を、僕のレナロイドの手が弾いた。


「ブレイク・アウト」


 通常の時間帯に戻る。普通に扱うなら、通常時間の方が動きやすい。

 大統領の右後ろにいた僕のレナロイドに、急襲を妨害された相手のレナロイドが襲ってくる。相手はすかさず、僕のレナロイドの眼、モニターを狙ってきた。手刀がモニターを襲い、画面が半分壊される。


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