アリサ
「しかしどうしようかな。何にしろ、『ライオン・パレット』は解散だ」
「おい! 今、解散しないって言ったろ」
「いや、『ライオン・パレット』ってチーム名は、レオとマリーネをイメージしてつけたんだ。マリーネが抜ける以上、もう『パレット』は使えない」
「なんだ、そういう事か。案はあるのか?」
「いや、新しいメンバーを探して、そこから考えないとね…」
そう僕が洩らした時、不意に右下辺りの空中にコールサインが出た。レオには聞こえてないが、電話である。発信者はアリサとある。僕の彼女だ。
「もしもし」
「あ、明くん、寝てた?」
「いや、今はフロート中。レオと一緒だよ」
「え、レオ? ちょっと、合わせて合わせて!」
仕方がないのでモニターのボタンを押す。空中に二つ、平面画面が開かれた。うち、一つは僕とレオが映っている。もう一つには僕の彼女 里村有紗の美しくて可愛い顔が現れた。僕らのモニターの位置を手でずらして微調整し、よく見えるようにする。
「あ、レオ、ハーイ!」
「ハーイ、アリサ、今日も美人だね」
ブラウンの髪をボブにした有紗が、嬉しそうに頬に手を当てる。
「やだ、嬉し。けど、レオも格好いいわよお。ホント、男前よね。ライオンよりも、そのままで出ればいいのに」
「オレはライオンが好きなの」
はしゃぐ有紗に、レオが苦笑して見せた。こういう個人の事情を気にしないところが彼女のよさだ。
レオには僕の本名も教えているし、レナルテ内だけど彼女にも合わせている。レオの本名はムテバ・カマンダという名だと僕も教えてもらっているが、互いにキャラ名で呼び合うのはそっちの方が慣れてるからだ。
僕は有紗に言った。
「どう、今からこっちに来る?」
「あ、ううん。明日早いからよしとく。ね、それより明日ちょっと帰りが遅くなりそうなの」
「撮影?」
「そう。なんか遠方の高原に行くんだって。レナルテで済ませちゃえばいいのにね。こだわりの強い監督なのよ」
明日の夜はデートの予定だったのだが。有紗は女優とかモデルとかやってる芸能人だ。まだ街を歩いて騒がれるほどには売れてない。けど、仕事時間が不定期なのは仕方ない。
「そう。じゃあ、またにする?」
「ううん。レナルテで逢いましょ」
有紗はそう言って微笑んだ。