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十一話 異世烏賊ハンティング祭り

 

 海。

 異世島から見える海といえば、我らが地球の伊勢湾の次元とか空間とか歪めてすっぽりと収まる広大な『異世湾』なのだが、この異世島にも海水浴という概念が存在する。


 地球で想像される海水浴とまぁ大体同じである。しかし今はまだ少しシーズンには早い。じゃあ何の話かというと……。


「イセイカの大量発生ねぇ……」


 砂浜に集められた俺とメメリュ、他にも大量の簒奪者ハンター達。他にも漁師っぽい人や、一般人ぽい人も紛れている。

 今は異域アウター・ゾーンが発生していないので、暇な簒奪者ハンターが多めだった。

 平日の昼間だしね。普通の人は仕事だよ。


 イセイカとは、大体俺と同じくらいの背丈をしたまぁまぁデカいイカである。イカとは、地球にもいるあのイカである。日本語で烏賊と書き、10本の脚と槍のような頭を持つ、あの軟体生物だ。


 大量発生というのは毎年このくらいの時期になると起きる定期イベントらしい。いっぱい取れるので、それらを主に食用としてそのまま食べたり加工したり長期保存したりする。

 結構美味い。なんか店に売ってたスルメみたいなのを食べたことあるけど美味しかった。


 で、大量発生の大量とは如何なる程度か。なのだが……。


「き、っもぉ……」


 思わず、そんな声が漏れた。横にいるメメリュは参加したことがあるのか普通の顔で立っているが、こんなの何度見ても慣れそうにないんですけど。

 というのも、まるで東京の満員電車を思わせるひしめき具合のイカイカイカイカ。砂浜は、もはや烏賊浜と言わんばかりのイカだらけだ。すでに生臭い、最悪である。


『えーお集まりの皆さん。もうお分かりだと思いますが、この異様な光景、異臭、見慣れた方もいらっしゃるでしょうが、私は慣れるものではないよなぁと思っております』


 主催者はハンターズギルドだ。何故か司会をしてるガゥダーさんが、嫌そうな顔で進行する。


『こいつらは放置すると、このままさらに増殖、近隣への氾濫を起こします。幸いなことに結構美味しく食べられるので、皆さんが狩ってくれたイカ達は異世島名物『イセイカのスルメ』に変身します。身体を綺麗に残してくれれば、より高い報酬が用意されますし、てか普通に持って帰ってもらってもいいです』


 先ほども言ったが一度このスルメを食べたことはある、普通に美味かった。この時期にめちゃくちゃ獲れるから通年で安いし。日本にも結構輸出してるとか聞いたことある。


『はい! 次に皆さんがお待ちかねの情報ですが、今回の《イセイ核》の値段ですが……1gあたり大体1000円! あとは形と色で判断って感じですね。今年は去年より買取価格が上がってますヨォ〜」


 ウォォォォ! と、参加者達のテンションが爆上げされる。横のメメリュもテンション上げ上げだ。俺はちょいと横腹を突いた。


「これがメメリュの言ってた、イセイカから稀に獲れる『宝石』の話?」

「そうそう。イセイ核とかバカみてぇなネーミングだけど、吸い込まれるような白色と、綺麗な球体がウリらしい」


 へぇ。真珠みたいなもんかな? なんでか知らないが、あのイカの中にそんな宝石(?)が稀に生成されているらしい。


「ミィロもしっかり狙ってけよ! くれぐれも壊すなよな! 大体この辺にあるから!」


 いつの間にかイカ一匹を捕まえていたメメリュが握り潰す勢いで殺しながら、大体眉間? っぽいとこを指差す。

 ズプリとメメリュの指が刺し込まれ、しかしそこには何もなかった。


「チッ」


 ペイとメメリュが捨てるイカを俺はキャッチして、大体人間の子供くらいのサイズ(イセイカの標準サイズ)のそのイカをじっと見る。

 半透明の身体は、日本にいた時に刺身とかで見たことのあるスルメイカとか、アオリイカとかと大体同じだ……色は個体によって様々だが、説明するのは難しいので日本でも獲れるイカと似たような色をしているという説明だけで終わる。

 というわけで、俺は足を齧ってみた。うむ……こんな新鮮なイカは初めて食べたが、歯応えがあって美味いな。

 ガゥダーさんの説明司会は未だ続いているのに、いつの間にかイカを捕まえていたメメリュとそれを急に食べ始めた俺に対して周りは引いていた。



 そんなこんなで、俺達のイセイカ狩りが始まった。



 眼前に迫る触腕。首を捻り回避すると、その隙に俺の胴体を狙って数本の脚が向かってくる。逆にそれを掴み取り振り回す。地面に叩きつけ、胴体部分を殴りつける。しかしイカは軟体生物だ。俺の拳を受けて表面がたわんだかと思うと、そこから波紋が広がるように衝撃が吸収されていく。


「んげっ!」

「もっと腰入れてぶん殴れ!」


 メメリュからの喝が飛んでくるが、それに反応する間もなく俺は自分の胴体をイカの脚に絡め取られ、ぐわっと宙に持ち上げられる。

 周りを見ると、俺と同じようにイカに捕まって宙吊りになった奴らが大勢いた。

 特に女性だと触腕が身体を這うように捕まっていて、その煽情的な光景を見に来ていたらしい奴らの酒のつまみになっていた。いやイカ狩れよ。


 ボンッ! ボンッ! と、メメリュはバットを振り回してイカの脚を弾き飛ばしている。上手く決まった箇所は切り飛ばせているが、多くは弾くだけに終わっており、イセイカの肉体の柔軟性を物語っていた。


「イカ強くない?」

「正面から戦えば、まぁまぁめんどい部類じゃない?」


 イカにブンブン振り回されながら聞く俺を一切心配することなくメメリュはめんどくさそうにそう答えた。確かに、周りを見ると


『雷撃』とか言って電気系魔法で複数体を動けなくしている人や、『縛束バインド』とかいう魔法でできた紐みたいなのを網状にして大量確保していたりする人があちらこちらにいる。

 正面から殴り合いしているのも珍しくはないがイカを捕まえるという一点においてそれはかなり非効率であった。


「だから、わざわざ正面からやり合う奴らの目的は一つでしょ。私もそうだけど」


 つまり、一体ずつ肉弾戦で挑んでいる者達は例の《イセイ核》を狙ったものだということだ。漁さながらの大量確保をしてから一体ずつ検分する方が効率よく思えるが、誰もがそれを行える魔法を持つわけではない。


 マジカル・デバイスは決して安いものではないのでポンポン買い替えるものじゃないし、複数の術式が刻まれたものほど大型化、回路の複雑化、魔力効率の悪化を招くので、無難に身体強化に加えて《刃》とか《弾》といった攻撃系術式のどれか一つ刻まれたデバイスを使うのが一般的だ。


 さてそうなると、なんか色々術式が使える俺のマジカルデバイスの性能が怖くなってくるのだ。

 小さいし、術式いくつもあるし、なんなら増えるし。常識を知るほど、この俺の手に握られたスマホ型デバイスの異常さがわかってきた。


「まぁ、使えるものは使うが」


 キュィィィン! デバイスに魔力ファルナを流し込み、『身体強化パラメータ』を発動。俺を簀巻きにしていたイカの脚を強引に引きちぎる。

 解放された俺は地面に降り立ち、なんか前にテレビで見た記憶のあるイカの活け締めの仕方を思い浮かべながら、俺を拘束していたイカの目と目の間に手刀をぶち込みぐりぐりと周辺を抉った。

 すると体表がスッと透明になり、糸の切れた人形のようにイカは地面に崩れ落ちる。俺はそれを無言で見下ろし、わずかに微笑む。


「なんだ、楽勝じゃん」


 ボコォ! と俺は横合いから殴りつけられた。別のイカだ。バシィ! 今度は足を叩かれた。鞭の如き一撃は肉体へのダメージ以上に痛みがある。


「て、てめ」


 ベシッ! バシッ! さらにあらゆる方向から追撃を喰らう。俺はキレた。





 *




 身体強化された俺の手刀がイカの触腕を弾く。続いて飛来する3本の脚を、巧みに躱しながら本体に接近。イカは地面にしっかりと脚を根差し、槍の如く残りの脚を突き出してきた。ここまで来ると、俺は避けない。俺は俺自身の身体強化と肉体を信じて突き進む。

 ガガガガ! と、およそ人体と軟体生物の肉体がぶつかったとは思えない音が鳴り、彼我の距離は縮まった。


「『ブレード』」


 俺のデバイスにも、もちろん『ブレード』の術式がある。それを手の先に纏うように展開した。

 なんかよく分かんないけど上手く刀身が伸ばせないし、切れ味もそんなによくない。そういった魔法への得意不得意には個人差があるとか。

 しかし、このような使い方をすれば───目と目の間に手刀を突き刺すのは、より容易になるのだ。活け締めである。


「次ィ!」


 返す刃で横にいたイカにも突き刺す。活け締め。後ろにいたイカを蹴飛ばし、斜め後ろにいたイカを活け締め。



 俺の周囲に散らばる活け締めされたイカ達。俺自身から臭う生臭いイカ臭、なんかよく分からん体液と、服についたイカ墨であろう真っ黒な汚れ。

 俺は半泣きになってきた。


「飽きたよ……俺もう辞めたい……」


 メソメソしながら締めたイカから《イセイ核》を探すが、どれもハズレである。運ぶ用の網に適当に詰め込み、一回換金してもらいにいく。


「おおー、一体ずつ狩ってるのにペースいいね」


 ガゥダーさんがニコニコしながら対応してくれている間に、メメリュが俺と同じようにドロドロの姿でやってくる。


「ミィロ、もう飽きてきた。帰って風呂入ろうよ」


 メメリュも飽きていた。

 二人してテンションだだ下がりである。そんな俺たちを見て、ガゥダーさんが何かを閃いたような顔をして口を開いた。


「まぁそう言うなって、今年は『ヌシ』が出るんじゃないかって言われてるんだ」

「「ヌシ?」」


「そうさ、そのサイズは通常の10倍以上……もし、そのイセイカに《核》があったとしたら、そのサイズはつまり……?」


「10倍!?」


 俺の驚く声が周囲に響く。メメリュが横で指を折り数字を数える。


「まぁ《イセイ核》の発生条件には魔力の大小が関係していると言われていて、《ヌシ》と呼ばれるほど大きく育った個体の宿す『魔力』は間違いなく大きい……強くないと《ヌシ》にはなれないだろ? とはいえ、魔力の大小がそのまま肉体のサイズに比例するかというと」


 ガゥダーさんの長い説明を聞く限り、じゃあいくら10倍デカいとはいえ《核》がそのまま10倍になるわけではなさそうだ。逆にそれよりもデカい可能性もありそうだが。


「まぁ味は落ちるらしいし、《核》も上手く採れるか分からないし、大きさも謎だし、あんまし人気はないんだよね」



 ギャァァァァァ!

 そんな話をしていると、どこからか悲鳴が上がった。聞こえてきた方へみんなで顔を向けると、なんとそこには見上げるほどの大きさのイセイカがハンター達を薙ぎ倒す姿が。


「ガゥダーがこういうこと言うと、すぐ出てくんだよな……」


 ボソリと呟くメメリュの言葉に、ギルドで厄介者専門家みたいに扱われているガゥダーさんの……何故そうなってしまったのか、その片鱗をたったいま目撃した気がする。


「メメリュ、どうする?」

「……まぁ、せっかくだし」


「「やるか」」


 ハモった。


 そう、俺たちは最近───暇なのだ。

 なので、めっちゃデカいイカを率先してしばき回したいってほどでもないけど、暇なのでやるかって感じ。そんな……ノリなのである。



 だが数秒後には後悔し始めていた。


 何故なら、硬いのである。それでいて柔軟性は失われていない。というか、シンプルにデカくなったせいで有効打が決まりにくくなっている。


「どりゃぁぁあああ!」


 今もほら、メメリュが雄叫びをあげてバットで胴体をぶん殴るけど、体表に波紋が広がり鈍い太鼓みたいな音が響いたかと思えば脚でベシッと弾かれて飛んで行った。


「メメリュであれかぁ」


 ポツリと俺は呟き、試しに『星弾シューティング・スター』を撃ってみた。バインバインと跳ねてあんまし有効打にはならない。俺はデカいイカに目をつけられて脚で潰された。





「ちょ、マジムカつくんですけど」


 脚の下から這い出てきた俺に寄ってきたメメリュがそう言った。俺も結構痛かったので、割と普通にムカついている。

 デカいイカは俺達に構っている暇はないのか、別のハンター達を襲っていた。故に隙は大きい。


魔力ファルナ全開で、一撃必殺かますしかないか」

「私もフルスイングでブッチ切ってやるよ」


 ぐっぐっ、と拳を何度も握る俺と、ぶんぶんと素振りをしているメメリュの近くにいつの間にか様子を見にきていたガゥダーさんが少し引いた顔で口を開いた。


「君たち本当に丈夫だね……」


 我ながらギャグ描写のような振る舞いだが、デカいイカは文字通りデカいので、そんな質量でぶん殴られた普通の人間は割と負傷している。

 というかまぁ普通サイズのイセイカによる負傷も発生するので、今救護用テントは割といっぱいだしデカいイカによる被害者は結構増えている。

 それはさておき、俺には秘策があった。否、必殺技である。


「メメリュ、見てろ。俺の新必殺技……ついに名前が決まったんだ」

「へぇ」


 どうでも良さそうなメメリュを放って、俺は一人で前に出る。俺のマジカルデバイス『ハンズ・オブ・グローリー』は、事前に刻まれた術式しか扱えない普通のデバイスと違って自ら術式を書き換えることができる。(名前は最近決めた)

 デバイス同士の干渉の防ぐためにデバイスは複数持つことができないので、普通は扱える術式の数がかなり限定されている。それに対して、俺のデバイスにはその縛りがないのだ。

 まぁ条件いくつかあるみたいだし、ぶっちゃけまだ仕様よく分かってないけど。


 メメリュには「あんたそれ周りに知られない方がいいよ」って真顔で言われるくらい、結構すごいデバイスらしい。出所不明で普通にキショい気持ちもあるが、便利なので使えるものは使うのである。



 そして、俺がこの度完成させた新たなる必殺術式のお披露目の時が来たわけだ。


 しかし、発動前に普通に弾き飛ばされて俺は砂浜に刺さった。


「何してんだよ! 早く必殺技とやら使え!」

「できたらやってんだよ!」


 メメリュと口論しながら俺はデカいイカに突貫する。しかし、脳みそも全体のサイズに合わせて大きくなっているのか、触腕と脚の使い方が巧みなのである。

 脚の二本が俺の眼前に迫り、それをさばこうとすれば途端に方向転換して左右から攻めてくると見せかけて触腕による突き。

 ドコォ! と思いっきりくの字に折れ曲がって俺は宙に舞う。


「あーあー」


 ガゥダーさんの間抜けな声がぼんやり聞こえた。もう少し心配して欲しい。


 トドメと言わんばかりに、空中の俺に向かってさらに触腕が伸びる。だがやられてばかりの俺ではない。

 喰らうと分かっている攻撃ならば、我慢すれば良いだけの話だ。


 キュィィィン!

 手の中でデバイスが駆動音を奏でる。スマホ型デバイスの画面に写し出されるのは、俺の考えた『術式名』だ。

 身体強化パラメータと併用し、俺は空中で姿勢を整えながら触腕を迎え撃つ。


綺羅星キラボシ


 触腕にぶつけるように突き出した拳が纏うのは星々の輝きにも似た閃光の群れ。拳の軌道に合わせて尾光を引いて、ぶつかると同時にそれらの星々はバラバラに瞬き、一点に向けて収束する。


 身体強化パラメータ系術式と結界プロテクション系術式に、バレット系術式をありったけ込めた複合術式。


 俺は魔力ファルナを近距離でしかうまく維持できないので、バレット系術式も少し距離が開けば大きく威力を減衰させてしまう。


 しかし、この『綺羅星キラボシ』は違う。


 その威力は、一本の槍の如き爆発が俺の胴体三つ分くらいあるイカの触腕を風穴どころか千切り飛ばして、なお余りある。


「負けてらんねぇ〜」


 ドヤ顔で地面を見下ろしたら既にメメリュは先程までいた場所にはおらず、いつの間にか俺のすぐ横に浮いていた。

 直後に、あたり一帯を飲み込むほどの魔力ファルナ解放。メメリュは魔力操作がド下手過ぎるのだが、凄まじい量の魔力を保有しているので下手を強引に量でカバーするのだ。


 そうして莫大に放出された魔力をありったけ適当に雑にバット型デバイスにぶち込むと、バットは表面にいくつもの光の筋を生み出してメメリュの身体能力を強化する。


 それは俺への追撃として向けられていたもう一本の触腕への迎撃の為だ。なんの捻りもなく、ただただ思いっきりバットを振る。それだけで、あの硬く柔軟な触腕は水に溶けた便所紙のように引き千切れていった。


「最初からそれやれよ!」

「こっちのセリフなんですけどー」

「俺の場合は小手調べのつもりが手痛い反撃喰らっただけじゃん!?」

「それ自信満々に言うことぉ?」


 言い争いをしている俺とメメリュだが、デカいイカはまだ倒していない。だが俺とメメリュの反撃を喰らいデカいイカはかなり怯んでいる。これを勝機と見た他のハンター達も一斉にデカいイカに向かって襲い掛かる!

 彼らの目に映るのはもしかしたらあるかもしれないデカい《核》だけではない、あるいは痛い目を合わされた復讐か、もしくはただその場のノリか、はたまたとりあえずデカいし目立ってるし倒せそうだから攻撃をかけるのか。

 ハンターは、決して頭のいい奴らばかりではない。みんなで集中してここを攻撃しようとか、そんな綺麗な連携はない。しかしそのおかげで大きな隙が生まれ始めたのだ。

 デカいイカには調和なく攻撃してくる大量の人間を効率よくシバき倒す知能はないらしい。


「メメリュ、頼む」

「おっ? やるか」


 タンっと飛び、両足を揃えて膝を折り畳む。そこに合わせるように、メメリュはバットを振り当てた。


「行くぞ───メメリュ、特大ホームラン!」


 グンと俺の体が加速する。メメリュの身体強化込みのフルスイングに、阿吽の呼吸で合わせてバットを足場に跳躍。発動した結界プロテクションにより空気抵抗を均した俺は正しく砲弾の如く空を切り宙を裂く。


魔力ファルナ、全開ッ!」


 魔力の全力解放。それを全てデバイスにぶち込み、俺は結界プロテクションの中に星弾シューティングスターをありったけ籠める。

 直後、すでに眼前に迫るデカいイカの胴体に向けて俺は拳を振りかぶる。


「特大、綺羅星キラボシ!」


 俺が結界を内側からぶち破ってその勢いのままイカの胴体に突き刺さり突き破っていく。結界から溢れ出た星弾がイカの体内を破壊しながら俺を追う。


 そしてイカの馬鹿でかい胴体に、俺の身体よりも大きな風穴を開けた。これが新必殺技『綺羅星』の応用合体奥義である! 思い付きだが!


「今だァァ! 全員かかれーッ!」


 誰かがそう叫んで、グラついたデカいイカ目掛けて大勢のハンター達がトドメを刺すため走り出す。


 ちなみに俺は、宙に投げ出されながら萎えていた。


 なぜならば、俺の全身はイカの臓物塗れなのだ。


 ひゅぅぅん、とイカを貫いた勢いのままどこか力なく飛んでいき、俺はそのまま異世湾の海に沈んでいった……。




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― 新着の感想 ―
触手物といえば触手物だが、ここまで興奮しない触手物は初めてだw 着実にヨゴレ系女子としての地位を確固たるものにしつつあるミィロ女史であった。
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