自称最強能力
初投稿
目を覚ますとそこには知らない景色が広がっていた。
「……あれ、俺は電車にひかれて死んだはずじゃ?」
部屋は薄暗く周りを見回しても何があるかよくわからない。
これはひょっとして……?
こんな俺でもアニメや漫画はよく見る。これは要するに……
「異世界転生ってやつか?」
すると、突然明かりがつき、目の前に誰かがいることに気づく。
「ついに、成功した……。やはり俺の研究は間違っていなかった」
そいつはおそらく年齢が50程になる男で白衣を身にまとい、何やら興奮しているようだった。
よく周りを見ると俺の周りには紋章のようなものが刻まれ、その中心に俺は立っていた。
「これで……ようやく……」
何やら興奮の収まらない男に今の状況を確かめるため俺は尋ねる。
「ここはなんですか?なんで俺はこんなところに?」
「ふふっ。そうか。そうだな。お前は何も知らないんだよな」
そういうと男は笑い出し、同時に涙を流し始めた。
この男が何を考えているのか全く分からない。
不気味さを覚え、俺は後ずさりする。
「怖がらなくてもいい。私はもうすぐこの世からいなくなる。だが、最後に君に伝えておきたいことがあるんだ」
急に不穏なことを言いだし、余計身構える。
だが、男は無視して続ける。
「君の力は「模倣」。相手に触れることで相手の能力と同じ能力を使うことができる。だから……後は頼んだよ」
狂気に満ちた顔でそう言うと、男は突然苦しみ始め、床に倒れ、動かなくなった。
「お、おい。じいさん?」
全く理解がおいつかない。一体何が起こったのか意味がわからない。
じいさんのもとに駆け寄り、じいさんの生存を確かめるため脈に手をあてる。
……ダメだ、動いてない。すぐに助けを呼ばないとまずい。
ズドォオン!!
急に後ろのドアが爆発し、そこから誰かがこちらに歩いてくる。
ドレスを身にまとった女性。凛々しい顔をしており、……かなり悪そうな顔をしている。
こちらに歩く途中で倒れているじいさんに気づいたようだ。
「なんだ。じじいは死んだか」
そういうと俺の方を見てほほ笑む。
「君はだれ?なんでこんなところにいるのかしら?」
優しい微笑みは嘘くさく、俺は危機感を感じる。
こいつは絶対やばい。逃げないと殺される。
本能が逃げるように体に訴えかける。
俺は急いで逃げようと周りを見渡すも、出口らしきものはこの女の後ろにしかない。
「ふん。逃がすわけがないじゃない」
そう言うと女は目にも見えない速さで俺の目の前まできて、俺の首をつかみ持ち上げた。
ふたたび俺に向かって微笑みかける。
「ねえ、なんでここにいるのか答えてくれない?このじじいとは、どういう繋がりなの?答えないと苦しい思いをすることになるわよ?」
まずいまずいまずい。
あまりにも強い力で呼吸ができない。
このままだと、本当にここで死んでしまう。
どうすれば……。
そのとき、俺の頭にさっきのじいさんの言葉が思い出される。
『君の力は「模倣」。相手に触れることで相手の能力と同じ能力を使うことができる。』
あいつが本当のことをしゃべっていたのかは知らない。こいつが何かの能力を持ってるのかは知らない。
だけど、こいつの動きはあきらかに人間離れしている。もう生き残るにはこれに賭けるしかない。
俺は首をつかんでいるこいつの腕をつかみ返す。
頼む。なにか起こってくれ。俺にはこれに賭けるしかないんだ……。
俺はその手を全力でつかむ。すると
ボキィ!!
「ぐぁああああああ!!」
こいつが奇声を上げた。
それもそのはず、こいつの腕は明らかに曲がってはいけない方向に曲がっていた。
左手で右の曲がった腕をつかんで、俺の方をにらみつける。
「な、なぜ?「身体強化」の能力を持つ私の腕が折られる?貴様も能力者かああああああああ!!」
身体強化。それがこいつの能力なのか。言い方からして、おそらく防御力も上がっているが、それ以上に強化された腕をへし折るこの力。
無警戒だったから相手の腕を折ることはできた、でも逆に考えれば相手に掴まれればこっちもやられる。
ならば、相手に近づいてはいけない。俺はこいつに捕まらずに逃げることだけを考えればいい。
「殺す。絶対にお前を殺す!!」
そう言うと目にもとまらぬ速さで間合いをつめられる。
しまった。脚力も普通ではないのだ。この速さならば先手必勝。先に逃げの行動を起こすべきだった。
……いや。
こいつが拳を作り俺を殴ろうとするのが、目で追える。どうやらこの能力、動体視力までも強化されているらしい。
こいつは左の拳で俺に殴りかかってきていた。しかし、こいつは最初におれの首を右手でつかんできていた。ほぼ確実に右利き。右の腕が折れたから左で攻撃を仕掛けているのだ。
おれは咄嗟に拳を作りこいつの拳に合わせるように振りかぶる。
今こいつがしているのは利き手ではない左手での攻撃。利き手じゃない今なら純粋な力勝負でも勝機はある!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ぐぅ!!なぜだ、私が力で負けるはずが……」
やはり思ったほどの力はでていない。それに、こいつは俺の能力が自分の能力だと気づいていない。
俺は全力で腕を振り切った。すると相手の体が宙に浮き向こうの壁まで飛ばされた。
今しかない。
俺は全力で走り、扉を抜け外に到達、その後も全力で走り続けた。