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精霊使いと賢者の遺産  作者: 夜空琉星
第2章 雷狼と風の忍び
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第2章 13話 惨状

 みなさん、お久しぶりです。

 一ヶ月ぶりの更新となりました。


 前回の精霊使いと賢者の遺産は・・・・・・


 緊急招集の鐘の音を聞きつけて里長の屋敷前へと集まった宙翔たち。

 そこで善蔵から第五班〜第八班の忍びたちが魔獣と交戦し負傷者が多数でているため、救援および魔獣の討伐作戦を決行すると告げられて・・・・・・という内容でした。


 ということで本編をどうぞ!

 「これは!?」


 現地組が準備を整え、里を出発してから約数十分後。

 報告にあった地点に到着した一行は現場の状態を見て息を呑んだ。


 周囲の木々は(なか)ばから折れているものが大半(たいはん)で、地面は所々が(えぐ)れてクレーターができおり鮮血に染まっている箇所がいくつも見受けられる。

 そして折れた木々に身を預けたり地面に倒れ伏せていたりする忍びたちが大勢いた。

 この悲惨な光景から戦いの壮絶さと、これから相対することになる魔獣の強さがうかがい知れる。

 出発前の段階で想定していた中でも、かなり最悪に近い状態だった。


 それでも冷静さを欠いてはならないのが里の精鋭である班長である。

 隼人(はやと)はいち早く状況を飲み込むと、紅葉(くれは)の方に視線を向ける。


 「紅葉さん、状況の確認を」


 隼人に指示された紅葉は負傷者の数と怪我の程度を把握するため、すぐさま鋭い目つきで周囲へと視線を走らせる。


 「ざっと見た感じだと、負傷者の数は十三人。重傷者は四人、軽傷者は九人ってところだな。軽傷といっても決して傷は浅くないようだが・・・・・・」


 周囲に視線を走らせることわずか一秒程度の間に瞬時に負傷者の数と怪我の程度を把握するとはさすがは救護所の所長といったところだが、その報告を聞いた隼人は(わず)かに顔を(くも)らせる。


 「足りないですね」


 そう呟いた隼人は近くにある木にもたれかかっていた比較的軽傷な忍びの元に駆け寄ると、片膝をつき目線を怪我した忍びに合わせる。


 「大丈夫か?」


 「・・・・・・ああ」


 隼人に声をかけられた忍びは、片腕を押さえ苦しそうにしているものの何とか話はできそうであった。


 「この場にいない七人はどうした?」


 隼人が気になったのは、この場にいた忍びの人数だ。

 隼人たちが善蔵(ぜんぞう)に緊急招集をかけられるまでの間に第五班と六班、七班と八班の計四班の総勢二十人が魔獣と戦闘したはずなのだが、この場にはその内の十三人しかおらず残りの七人の姿がなかったのだ。

 しかも現場で指揮をとっているはずのそれぞれの班の班長たちの姿が見受けられないのも気になっていた。


 「負傷者にこれ以上被害が及ばないように、魔獣を奥に誘導して・・・・・・」


 「そうか。救援に駆け付けたから安心してくれ」


 隼人がそう声をかけると、忍びは苦しそうではあるものの(いく)らか安心したような表情を見せた。

 この負傷した忍びの話を聞く限り、現場にいた班長たちは負傷者たちから魔獣を遠ざけるために動ける忍び数名を連れて魔獣を森の奥へと誘導し、この場から離れる判断をしたようだ。

 これで人数が足りない理由はわかった。


 隼人は立ち上がると紅葉の方に向き直る。


 「紅葉さん、救助の方にどれだけ人数がいりますか?」


 「そうだな。この場にいる人数と、森の奥で現在進行形で魔獣と戦ってるやつらの中にも負傷者が出てる可能性もあるからなあ・・・・・・」


 隼人の問いかけに紅葉は顎に手をやり一瞬考えこむ。


 「討伐組から六・・・・・・いや四人ほどこっちにまわせるか?」


 「わかりました」


 隼人は頷くと、今度は第四班班長の風守(かざもり)史郎(しろう)と第九班班長の風林(かぜばやし)亮太(りょうた)の方に視線を向ける。


 「第四班と第九班から二人ずつ救助組の応援を」


 指示された二人は即座に自分の班内から人選を行う。

 選ばれた四人が紅葉の元に合流すると、紅葉は改めて現地の状態と救助組の状態を確認する。


 この場にいる負傷者の数は重傷者四人、軽傷者九人の計十三人。そしてこの場から魔獣を遠ざけるために今なお交戦中の忍びが七人おり、そちら側の負傷者の数と怪我の程度は不明。

 対して救助組の方は、第十班の人数が救護所に負傷者の受け入れ準備のため医療専門のくノ一である美景(みかげ)を残しているので四人。内訳は班長兼救護所の所長である紅葉。里に三人しかいない医療専門のくノ一である風上(かざかみ)(あや)山風(やまかぜ)文乃(ふみの)。そして医療技術の勉強中であるくノ一の風峰(かざみね)静香(しずか)

 そして討伐組から四人応援を借り受けているので、救助組の総勢は八名だ。

 紅葉は瞬時に確認を終えると、個々の能力値を踏まえたうえで現状に合った最適な人選を行うため頭をフル回転させる。


 紅葉は約一秒程度で考えをまとめると、救助組の面々に指示を出す。


 「よし、よく聞け。ここにいる重傷者四人はあたしが診る。静香はあたしのサポート。文乃は軽傷者の処置にあたってくれ。綾は今魔獣の相手をしてる奴らの中に負傷者がいるかもしれないから討伐組と一緒に行ってくれ。第四班と第九班から来てくれたあんた達四人は文乃のサポートと負傷者の搬送を頼む」


 紅葉の考えとしては、この場にいる重傷者の怪我の状態から(かんが)みて最も医療技術に長けている紅葉自身が処置を行い、処置に専念するためにサポート役に静香をつける。文乃ならば一人で軽傷者の処置と討伐組から来てくれた四人への指示出しもできるだろう。現在魔獣と戦っている忍びたちの方については負傷者の数と怪我の状態の把握が現時点ではできないため、不測の事態でも対応できるように紅葉に次いで医療技術に長けている綾を向かわせることにした。

 ここまでの状況分析と迅速な判断を行えるとは、救護所の所長と第十班の班長を兼任する紅葉は伊達(だて)じゃないということだ。


 「了解」


 指示を受けた七人はそれぞれの役割を果たすために動き始める。 

 隼人は紅葉が一通り指示出しを終えて救助組が行動を開始したタイミングを見計らい声をかける。


 「それじゃあ、紅葉さん。ここは頼みます」


 「はいよ。こっちが片付いたらすぐに討伐組に加勢に行くからな」


 「了解です」


 余裕とはいかないまでも笑みを浮かべて答える紅葉に、隼人はやはりこの人は頼もしいと思った。

 紅葉は広い視野で状況を見極め迅速に的確な判断を下すのに長けているうえに、医療技術に関しては折り紙付きだ。だから隼人は一切口出しすることなく、この場において救助に関するあらゆることを紅葉に(ゆだ)ねている。

 隼人にとって紅葉はそれぐらい信頼できる人物なのだ。


 そして一部始終を見ていた宙翔(ひろと)は、二人の経験に裏打ちされた的確な判断能力と信頼関係に感嘆に似た思いを抱いていた。


 「俺たちは森の奥に行こう」


 隼人は宙翔を含めた残った討伐組の面々を引き連れて、魔獣のいる森の奥へと向かった。

 第2章13話「惨状」を読んでくださり、ありがとうございます。


 今回は風間の里の班長である隼人と紅葉がメインとなる話でした。

 特に紅葉にスポットを当てて、それぞれの班長または救護所所長としての一面を描きました。

 冷静な状況把握や迅速な判断、そして口を挟まずに人選や割り振りを任せるというのは、これまでたくさんの任務を班長として共にこなしてきた信頼があるからこそできることだと思っています。


 そして次回、いよいよ魔獣との戦いが本格的に始まります。

 そんな次回の更新日ですが、7月1日金曜日の21時ごろを予定しています。


 次回もぜひ読んでください。

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