第2章 12話 緊急招集
みなさん、お久しぶりです。一ヶ月ぶりの更新となりました。
前回の精霊使いと賢者の遺産は・・・・・・
宙翔は半蔵の頼みを聞き入れ、稽古をすることとなる。しかし半蔵は、稽古中の動きから炎姫に「何をそんなに焦っておるのじゃ?」と指摘されてしまう。
そして半蔵は自分の過去、兄について語り始める。
その直後に緊急招集の鐘の音が鳴り響いて・・・・・・という内容でした。
ということで本編をどうぞ!
緊急招集の鐘の音を聞きつけた宙翔たちは、半蔵に先導され里長の屋敷へと急いでいた。
宙翔たちが里長の屋敷へとたどり着くとすでに多くの忍びたちが集まっており、その中には宙翔やシャルロットも知っている忍びたちがいた。
半蔵は宙翔たちを引き連れてその忍びたちの方へと声をかける。
「隼人さん、紅葉さん」
半蔵に声をかけられた二人も、宙翔たちに気づいたようだ。
「お、ようやく来たか」
「いったい何が?」
「あたしたちもまだ何も・・・・・・」
半蔵の問いかけに紅葉が首を横に振る。
それは他の忍びたちも同様なようで、緊急招集の鐘の音が鳴った理由について周囲に聞いたり各々の意見を言ったりして、かなりざわついていた。
そしてほどなくして屋敷の中から善蔵が姿を現した。
里長である善蔵が現れたということは、これから鐘の音についての説明があるのだろう。
善蔵の言葉を一言一句聞き逃すまいと、先ほどのざわつきが嘘だったかのように瞬時に静寂が訪れる。
「みんな集まったようだな」
善蔵は周囲を見回し、任務や里の警備などで持ち場を離れられない者以外が全員集まったことを確認すると、重々しい表情になり緊急招集の鐘を鳴らし皆を集めた経緯について話し出した。
「先ほど、昼過ぎから魔獣の件で森を探索していた第七班と第八班から『一体の魔獣と遭遇、負傷者多数、救援求む』と連絡があった。すぐに第五班と第六班を救援に向かわせたが、『負傷者を連れて逃げるのもままならないほど苦戦を強いられている』と追加で連絡があった。総勢で二十人ほどが魔獣と相対しているのにも関わらず状況が好転しないとなると、相手は魔獣化した上位精霊であると思われる。これほどの危険な存在を野放しにすれば、いずれ周辺の村や町に甚大な被害をもたらすだろう」
宙翔は起きていることの重大さを知り、息を呑んだ。
それは少なからず他の忍びたちも同様だったようで、声は出さずとも驚きや緊迫感が肌で伝わってくる。
「よってこれより、負傷者を救出しつつ魔獣の討伐を最優先にした作戦を決行する」
善蔵が声を一段階強めて宣言すると、各々の表情が引き締まり空気がピリッと張り詰める。
「第一、第四、第九班は現地にいる動ける忍びと合流して魔獣の討伐。第十班は負傷者の手当てと救護所への搬送。搬送時に手が足りない場合は他の三班から人員を確保。あとの細かい采配については隼人と紅葉に任せる」
指示された班の班長たち、特に采配を任された二人は善蔵の指示に対して強く頷いた。
「第二班と第三班は、引き続き里の警備にあたるように」
緊急招集の鐘の音を受け、警備を班員たちに任せ里長の屋敷に来た第二班と第三班の班長も善蔵の指示を聞いて頷きで答える。
「異論がなければ、ただちに・・・・・・」
「善蔵さん!」
善蔵が言い終わるよりも前に手をあげ、善蔵を呼び止める者がいた。
その人物に周囲の視線が集まる。
「空閑殿なにか?」
「俺も風間くんたちと一緒に行かせてください」
「それはなぜだ?」
「なぜ、ですか?」
考えなしというわけではないが、宙翔にとって「一緒に行かせてほしい」というのは自然に出てきた言葉であったため、善蔵に問われた宙翔は思わず聞き返してしまう。
「そうだ。君に取って我々はあくまで他人。今回は半蔵を助けてくれた時よりも危険が多いのも明らかだ。それなのになぜ同行を申し出た?」
宙翔は自分の胸元に手をあて拳を握ると、自分の胸の内を語り始める。
「炎姫と契約した時、この力はみんなを助け、守るために使うと決めました。助けを求める人がいるのに何もせず取り返しのつかないことになってしまったら、絶対に後悔する。もうあんな思いはしたくない! だから行きたいんです!」
宙翔の脳裏に浮かぶのは七年前の光景。
燃え盛る家で両親を助けたくて必死に手を伸ばしたが、その手は届くことなく目の前で失ってしまった。
あの時の絶望感と喪失感、悲しみと後悔の念は今でもこの胸に深く残っている。
身内だとか他人だとか関係ない。目の前で誰かを失うという絶望を繰り返さないため、助けを求める人にこの手を伸ばし続けると誓ったのだから。
宙翔のまっすぐで力強い視線を受け止めた善蔵は僅かにほほ笑むと、どこかに視線を移した。
その先には隼人や紅葉をはじめとした班長たちの姿があった。
善蔵は視線だけで宙翔を同行すべきか否かについて班長たちに確認をとる。
ここにいる班長たちは善蔵と苦楽を共にしただけでなく、そのほとんどが善蔵に戦闘面や班長としての心構えなどについて教え込まれている。そんな両者は言葉を交わさなくても、視線や表情だけである程度言いたいことがわかるのだ。
だから班長たちは視線から善蔵の言いたいことを正確に読み取り、加わってくれるのは心強いといった様子で強く頷いて見せた。
ただ二人を除いて。
その二人というのが第二班班長の俊也と第三班班長の透だった。
宙翔には知る由もないところだが、俊也と透は宙翔の存在をあまりよく思っていない二人だった。
二人が頷かなかったのを見た善蔵がやや目を細め何か別の意思を伝えてくると、二人はばつの悪そうな表情を浮かべた。
なぜなら善蔵の視線から「人間性には問題ないと思うが、それでもお前たちは空閑殿に対する考えを頑なに変えないつもりか?」という言葉がありありと伝わってきたからだ。
二人も宙翔の言葉と口調から嘘のない真っ直ぐな思いを感じたし、状況が状況なだけに戦力が少しでも欲しいというのも理解している。
だから二人は遅まきながらも善蔵に頷きを返した。「まだ完全に認めたわけじゃありませんから」という思いが滲み出ていたが。
程度の差はあれ、この場にいる班長たちから同行を許しても構わないという思いを受け取った善蔵は、うむと一回頷いた。
「わかった、いいだろう。隼人、確か・・・・・・」
「はい、まだ一花は動ける状態じゃないですね」
「それなら空閑殿は第一班に加わってくれ。そのかわり隼人の指示には従ってもらう」
「はい! ありがとうございます!」
宙翔が力強く返事をすると、その隣にいたシャルロットが遠慮がちに手を挙げた。
「私にも何か手伝えることはないでしょうか?」
「君は・・・・・・」
善蔵がシャルロットについてどうするべきか考えを巡らせていると、紅葉がシャルロットの肩にポンと手を置いた。
「それなら救護所の方に来てもらえるか? 負傷者の受け入れのために何人か救護所で準備してもらうつもりなんだけど、なるべくなら現地組の方に人数を割きたいからな。あんたに受け入れ準備を手伝ってもらえると助かるんだけど」
「はい、やらせてください!」
「里長もそれでいいですか?」
それなら問題ないと善蔵も紅葉の提案を受け入れる。
「それじゃあ美景、この子と一緒に救護所で負傷者の受け入れ準備を頼む」
「はい」
紅葉に声をかけられた美景がシャルロットの隣へと歩み寄る。
すべての段取りが付いたことを確認すると、善蔵は意を決したような表情になり力強く宣言する。
「よし、ではこれより作戦を決行する!」
善蔵の宣言を受け、それぞれが出発の準備や自分の持ち場に戻るためにその場から散開した。
「宙翔さん、くれぐれもお気をつけて」
「うん、行ってきます」
そして宙翔とシャルロットもそれぞれのやるべきことを果たすため、シャルロットは美景と共に救護所へ、宙翔は半蔵たちと共に里の外へと向かった。
第2章12話「緊急招集」を読んでくださりありがとうございます。
今回はなぜ緊急招集の鐘が鳴らされたのか、そして脅威となる強い魔獣の存在が明らかになりました。
今後宙翔たちを待ち受けますものは・・・・・・
さて、次回の更新日ですが6月3日金曜日の21時ごろを予定しています。
次回もぜひ読んでください。




