第2章 8話 忍びとの立ち合い・見解
みなさん、あけましておめでとうございます。
今日が2022年最初の更新になります。
前回の精霊使いと賢者の遺産は・・・・・・
宙翔と凌也との立ち合いが始まりました。
序盤こそ凌也の動きに翻弄されてしまった宙翔ですが、炎姫の授けた策が功を奏し無事に凌也に勝利しました。
それを受けた風間の里の人たちの反応と対応は?
ということで本編をどうぞ!
空閑宙翔と風谷凌也の立ち合いから数十分後。
里長である風間善蔵は、自分の屋敷にある里長の間に班長たちを集めていた。
別任務のため不在にしている者もいるが、十人いる班長のうちの約半数がこの場に集められていた。
取りあえず里に残っている班長たちが一通り集まったのを確認すると、善蔵は今回班長たちを集めた理由について語り始めた。
「皆に集まってもらったのは、先刻から里に滞在している空閑宙翔殿に対する今後の対応を協議するためだ。皆の耳にも入っていると思うが、先ほど凌也と空閑殿との立ち合いを執り行った」
善蔵はそこで言葉を区切ると、班長たちの顔を見回す。
班長たちは眉ひとつ動かすことなく、冷静な表情で頷いて見せた。
あの場にいなかった班長たちも、ある程度情報を把握しているようだ。
「契約している精霊の格からある程度予測していたが、立ち合いに勝利したのは空閑殿だった」
善蔵の言葉に班長たちは当然だろうといった表情で頷く。
下位精霊であるスコルピオンを使役する凌也に対し、宙翔が使役するのは神格精霊から神性を分け与えられた上位精霊である炎姫だ。
それだけを見ても精霊使いとしての力の差は歴然だからだ。
「俺は空閑殿をなんとしても里に引き入れたいと考えている」
「里長本気ですか!? 確かに使役してる精霊の格から考えれば相当強いんでしょうけど、だからといって完全に部外者の者を里に引き入れるというのは・・・・・・」
善蔵の考えに対して体を前のめりにしながら強く反対したのは、第二班班長の風内俊也だ。
「そうですよ! 我々は古来より世に知られることなくこの古都国を守ってきた忍びです。それなのに七年前の戦争終結間際にレームル王国側に我々の存在が露見。今では良いように使われる始末! これ以上他の者に知られる危険を冒すわけにはいきません!!」
俊也に続いて反対の意を述べたのは第三班班長の風早透だ。
「確か義輝殿と剛介と隼人は立ち合いを見ていたんだよな。三人は里長の意見には賛成なのか?」
前の二人と比べ冷静な態度で問うたのは、十人いる班長の中で唯一の女性であり救護所の所長も兼任している第十班班長の涼風紅葉だ。
「我が孫の恥をさらすようで大変癪だが、儂は里長の考えに賛成している」
「義輝殿!?」
第五班班長で宙翔と立ち合いをした凌也の祖父である風谷義輝の言葉に俊也は目を見開く。
「俺も爺さんと同意見だ」
「剛介まで!」
「隼人、あんたはどう思う?」
紅葉に問われた第一班班長である風宮隼人は顎に手をあてながら自分の見解を述べる。
「彼が精霊術を発動した時、訓練場全域に影響を与えていた。それほど広範囲に影響を与えるとなると彼の保有霊力量は相当なはず。霊力量と使役している精霊の格から考えるとおそらくS級相当の実力でしょう。ただ気になることも」
「気になること?」
「はい。S級相当の実力を持っている割には、戦い方にぎこちなさがあったなと」
隼人の言葉に第六班班長の風見剛介も腕を組みながら、うんうんと頷いていた。
「確かにな。序盤は凌也の動きに翻弄されてたぞ」
そんな班長たちのやりとり、特に隼人の言葉を聞いて善蔵は満足そうな表情を浮かべた。
「隼人、お前もだいぶ目が養われてきたな」
隼人は班長たちの中で最も年齢が若いが、その実力は班長の中でも一、二位を争うほどで冷静で頭も切れる。善蔵が最も目をかけて育てている忍びの一人だ。
そんな隼人の忍びとしての人を見る目と、状況分析能力が鍛えられているということを善蔵は喜ばしく思っていた。
そんな善蔵の言葉からある程度認めてもらえたと感じた隼人は、軽く頭を下げ感謝の意を示した。
しかし直後その言葉にもう一つ意味が込められていることに気づき、すぐに顔を上げる。
「では里長も?」
それは隼人の見解に対する肯定の意だ。
「うむ、それは俺も感じていたことだ。精霊使いになってまだ日が浅く戦闘経験が乏しいというのが俺の見立てだ」
「ならば、今のうちに奴を始末してしまった方が・・・・・・」
善蔵の言葉を受け、里に引き入れることに反対している俊也が意見を述べるが、善蔵は透の発言に対して首を横に振って答える。
「いや、あくまで俺の見立てではという話だ。本当は何らかの理由で実力を隠して戦っていた可能性もある。その場合、簡単に返り討ちに合うだろう。それに俺の見立てが合っていたとしても彼に戦いを仕掛けるのは性急だろう」
善蔵の言葉に俊也は首をかしげる。
「それはなぜです?」
「立ち合いの後半、凌也の集中力を乱していたとはいえ凌也からの攻撃を一発も食らうことなく捌ききっていたからだ」
「それは対応力が高いということでしょうか?」
隼人の言葉に善蔵は首をわずかにひねる。
「対応力というより、おそらく成長速度が速いのだろう。俺の経験上そういう相手が一番厄介だ。戦うたびに、もしくは戦いながら成長してくる相手ほど戦うのが怖いものはないからな」
里長になってからは任務に赴き戦闘をすることが減った善蔵であるが、以前は多くの戦場で活躍した忍びだった。
そこで数えきれないほどの敵と相対してきた歴戦の忍びである善蔵の経験則は馬鹿にならない。
この場にいる班長たちも里の精鋭たちだ。たくさんの戦闘経験を積んでいるので、善蔵の言葉には納得できるものがあった。
「我が愚息と颯鷲丸を失ったことによる里の戦力低下は否めない。可能ならここで少しでも戦力を増強したいからな・・・・・・」
善蔵の言葉に一同の顔に影が差し、重苦しい空気が流れる。
皆の頭の中には同じ人物とあの日の出来事がよぎっていた。
そんな重い雰囲気を感じた善蔵は、両手を軽く叩き皆の意識を切り替えさせる。
「どちらにせよ、もう少し様子を見る必要があるな。一応空閑殿たちには半蔵をつけているが少し不安だな。できればもう一人つけたいところだが・・・・・・」
善蔵はそこまで呟くと、何かに気が付いたのか天井を見上げた。
「ちょうど適任の者が帰ってきたようだ」
善蔵が言った直後、天井の一部が横にスライドする。そこから一つの人影が飛び降り、膝をつき首を垂れた状態で着地する。
「風守史郎、ただいま戻りました」
現れたのは第四班班長である風守史郎だった。
「よく帰ってきた。まずは例の件の報告を頼む」
「はっ。王国側から依頼されたデトス・チャート護送中の襲撃についての調査ですが、やはり現場には戦闘の痕跡はなく、精霊使いたちが目撃した黒ローブの三人組につながる手がかりはありませんでした」
「そうか。現場にいた者たちからの証言については?」
「デトス・チャートが今回の件の依頼主について何も覚えていないと言うのはおそらく本当のことかと。自身が契約していた精霊が手元からいなくなっていたことに関しても心当たりがないようでした。現場の精霊使いたちが眠らされていたことと、デトスの状態から鑑みるに闇属性精霊が何らかの形で関わっているということは間違いないようなのですが・・・・・・」
史郎からの報告を聞き、善蔵は腕を組みながら眉をひそめる。
「つまり事前にナイトオブスピリッツから送られてきた情報以上のものは何も得られなかったと・・・・・・」
「はっ。申し訳ありません」
「いや、お前が出向いて何も手がかりが得られなかったというのならば、本当に何一つ痕跡は残っていなかったのだろう」
隠密行動を得意とする忍びである彼らなのだが、第四班はその中でも特に隠密行動と情報収集、暗殺を得意とする班だ。
そんな第四班の班長である史郎の技術や能力は相当なもので、隠密行動と情報収集、暗殺においては現状この里の中で彼の右に出る者はいない。
そんな史郎が何も得られなかったのならば、誰が行っても結果は同じだ。
(史郎をもってしても手がかりが見つけられないとは、その三人組は一体何者なんだ?)
疑問や謎が残るが、風間の里側からはこれ以上打つ手はない。
「史郎、休む間もなく申し訳ないがお前に新たに任務を与える。今この里に空閑宙翔という少年とシャルロット・シールーダという少女が滞在している。王国に送る調査報告をまとめしだい、彼らの動向を監視して俺に報告してくれ」
「はっ!」
「空閑宙翔殿の今後についてはしばらく様子見をし、史郎の報告を踏まえて後日決定することとする」
善蔵の言葉に若干名不服そうな表情を見せる者もいるが、皆首を縦に振り了承の意を示す。
「解散!」
班長たちは音もなく一瞬でこの場から去り、里長の間には善蔵一人が残っていた。
(狂暴性の増した魔獣の増加と謎の黒ローブの三人組、そして賢者の遺産を探す少年か。何やらきな臭くなってきたな・・・・・・)
この三件に繋がりがあるかないかはわからないが、歴戦の忍びである善蔵の勘が嫌な予感を告げていた。
第2章8話「忍びとの立ち合い・見解」を読んでくださりありがとうございます。
2022年最初の更新なりました。
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この目標の達成がよりたくさんの人に拙作を見てもらえることに繋がると思うので、気合入れて頑張ります!!
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次回の更新日は2月4日金曜日の21時ごろを予定しています。今後の展開が気になる方はぜひ次回も読んでみてください。




