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ゴールデンタイム

作者: 花咲 潤ノ助

「生まれましたよ」という義母からの連絡。予定日まで一週間、昨日会った時には全く気配がなかったので、高を括って久々に酒を飲んだ帰りでした。


 久々もあっていい加減酔っていたのでしょう。二度車で来ただけでうろ覚えだった産科に、一人ではたどり着けず、やむなく交番に道案内をお願いすることにしました。まじめそうな警官二人と道順のやり取りをしましたが、この人心配だなと思ったのか警官の一人が産科まで案内してくれることになりました。


 まだ実感の湧かない長女の誕生に、お酒の酔い、おまけに警官同行で歩く知らない町の深夜の道、地に足の着かない理由の三連打に、私は宙を飛ぶようにフワフワした気分で歩いていました。あれ、私はこれから何処に行くのだっただろう?「生まれましたよ」という義母の言葉が、闇に紛れて遠くなり、どんどん現実感を失っていきました。


 どうやらたどり着いた産科の前で「ありがとうございました」と、警官に礼を言うと、突然、警官はピンと姿勢を正し、右手を帽子に当てて敬礼をしました。慌てて敬礼で応える私。警官は、真顔のまま「おめでとうございます」と言い、そうしてニコリと笑顔を見せてくれました。思いがけない祝福に驚き、と同時に、フワフワした気持ちが宙空から地面に降りて来たのを感じました。地に足が着いた、と思ったところで、ようやく長女誕生の実感が湧き上がってきました。


 産科では、生まれたてのわが子が、赤い顔で待っていました。「待たせてごめんね。でも、おかげで素敵なことがあったんだよ」やはり赤い顔をした私が、再び地面から飛び立ち、天にも昇るような心持ちで、今日出会った素敵な出来事を、娘に語りかけました。


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