大好きなお兄ちゃんへ(1)
友達にとあるカミングアウトをされたことをもとに書いてみました。
14歳のあかりの憧れは実の兄、優輝。
でもその「あこがれる」という感情は、誰かにとって足枷なのではないでしょうか。
あかりちゃん目線と優輝君目線で書きたいと思います。
私には11歳年上の兄がいる。
私が物心つく前から、お兄ちゃんは私を可愛がってくれていたらしい。
もうそんな歳じゃなかっただろうに、おままごとやお姫様ごっこをしてくれた。
幼稚園の運動会やお遊戯会にも来てくれていたし、
一年生になって初めての登校が不安だった時も小学校まで送ってくれた。
優しくて頭が良くて妹から見てもかっこいいお兄ちゃん。
私の友達は私のことを「ブラコン」とか「理想高すぎ」って笑うけど、
正直クラスの男子なんかガキしかいないし、私はもっと大人で色んなことを知ってる人がいい。
まるでお兄ちゃんみたいな。
お兄ちゃんは今東京の大学院で脳科学の研究をしてる。
忙しいだろうにバイトもしてるし、私が勉強でつまずくと電話やLINEを通して解き方を教えてくれる。
長期の休みには実家に帰ってきて、東京のお菓子をくれたり雑貨をくれたり。
兄の友達は兄のことを「シスコン」とか「ロリコン」って馬鹿にしているけど、私にとっては自慢の兄。
だいたいそんなこと言うほうが変なんだよ。
「あかり、明日優輝が帰ってくるからリビング片付けてね。」
「え? 明日って普通の週末だよね?」
「話したいことがあるんだって。」
なんだろう。
お兄ちゃんは帰省する前には必ず家族LINEに連絡を入れるのに、なんで今回は私に教えてくれなかったの?
もしかして彼女を連れてくるのかな。
……嫌だ。
急に、お兄ちゃんが遠くに行くようで、私は渋々片付けを始めた。
ーーーーーーーーーーー土曜日-------------
「ただいま」
「おかえりー!」
お兄ちゃんが帰ってきた。
でも……いつもと何かが違う。
辛そうで、不安そうで、中学生の私でもわかる苦しげな顔。
これはおめでたい話じゃない。
そう直感した。
「で、話っていうのは? 優輝に限って留年はないよな?」
重い空気を壊して、お父さんが冗談っぽく聞く。
多分お父さんも、これがいい話題ではないことをわかっているのだろう。
「……お父さん、お母さん、ごめん。」
長い沈黙の後、お兄ちゃんが口を開く。
俺……性転換手術を受けたい。」
覚えているのは、お母さんがショックで倒れたこととお父さんの怒鳴り声、
お兄ちゃんの鞄から見えた中高生向きのキャラクターだった。
この人は……もうお兄ちゃんじゃないの?
いったいこの人は……何?
もし家族が性転換手術を受けたいと言い出したら、あなたは賛成しますか?