記憶の詐称
大変長らくお待たせいたしました
といっても今回短めとなります……
その後、鎧を着た女性から解放されたかと思ったら、今度は目の前で土下座されてしまった。
異世界にも土下座ってあるんだな……
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「あの、もう大丈夫ですから」
「うぅ……こんな可愛い子の肌に傷を付けるなんて……一生の不覚だったわ……これは責任を取るしか」
「だ、大丈夫ですって、ちょっと痛かっただけですから、それよりもずっと謝られる方が心が痛いというか……」
だって女性、しかもこんな美人さんに土下座されるんだぜ? 痛いよ、めっちゃ心が痛いよ。
「それよりも、まずはここから出ませんか? また魔物が襲って来たら……うっ」
つい先程の惨状が脳裏に浮かんできたが、頭をブンブン振って振り払う。
「そ、そうね、早めにここを立ち去りましょうか……」
「そうですね……では――「あ、そういえば」――ど、どうかしましたか?」
「まだ自己紹介してませんでしたね。私はローレイラ=ヴィーツォルと申します。長いので気軽にレイラと呼んでください」
「わかりました、レイラさ……」
ここまで来て、重大な事を忘れていた。
名前……どうすればいいんだ?
この世界で一郎だなんて名乗っても、流石に浮きすぎてるよな……
かといって他の名前も思い付かないし……
「ん? どうしたんだい?」
「え、あ、いや、その……」
「……まさか君、もしかして……記憶喪失なのか?」
「……え?」
……それだ!
「は、はい、実は記憶がなくて……」
「そうだったのか……それは大変だな……」
良心が痛むけれども、記憶喪失を貫いてた方が後々も楽だろう。
記憶喪失ならこの世界の事を知らなくてもおかしくない。
いやー我ながら完璧な作戦だ!
……まあレイラさんに言われなかったら、この作戦も思いつかなかったけどね……
「うーむ……そうだ、1つ提案があるんだが」
「は、はい、何でしょうか?」
「私の家に来るのはどうだ?」
「……え?」
感想や指摘などあれば是非感想欄にて