三日目
おはよーございまーす。現在時刻三時五十五分でーす。
……うん。眠いです。
今日は四時起きで、五時から登山行動が開始です。
今日登るのはーー奥穂高岳!
最大標高3,190メートルの険しい山です。涸沢は2,300メートル程なので、800メートル上に登ります。
特に気を付けないといけないのは高山病。頭が痛くなったり吐き気がしたりするらしいです。もし高山病に罹ったら、即撤退。高山病を治すには高度を下げるのが一番良いとの事。
ちなみに天気ですが、晴れました。起きた時はガス(霧)が出ていて、「今日厳しいかなぁ……?」と友人と話していましたが、結局は晴れました。良かったです。
昨日は涸沢までメインザック(容量は六十リットル)で登っていましたが、今日はサブザック(登山用のバックパック。容量は二十三リットル)で登る予定です。中身も食料、水、防寒具、その他小物だけを持っていき、軽量化を図りました。
「へへっ、サブザックが羽根のように軽いぜ……」
「いや、お前、水しか持ってないだろ。死ぬぞ」
「……荷物入れてくる」
取り敢えず、出発は予定時間通りに行きました。昨日とは違い、本格的な登山です。気を引き締め、靴紐を結んで僕達は登り始めました。
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今日の登山行動
涸沢→ザイテングラート→穂高岳山荘→奥穂高岳→穂高岳山荘→ザイテングラート→涸沢
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涸沢からザイテングラートへ向かう途中。
最初に感じたのは、イラつきでした。
「……虫うぜぇ!」
「ハエ……?よく分からんけど、めっちゃいるな」
羽虫が何故か寄ってくる。ブォンブォンと音を鳴らし、顔や耳にぶつかってくる。ええ、開始十分も経たずに集中が切れました。
引率の方は「虫を気にしているくらいでは、山には登れぬ!」とか言ってたっけ……?(言ってません)
とは言え、虫を消し飛ばす方法など無いので、僕達は仕方なく虫を無視して足を動かし続けました。登っている道の九割は岩や石。砂や土の部分の方が少なく、尖ったり平らだったり、安定してたりぐらついたりする岩の上を歩きました。
そして登る事、一時間。予定よりも三十分早くザイテングラート前に着きました。引率の方曰く、ザイテングラートはドイツ語らしいです。意味までは覚えていないらしいですが、『岩尾根』だったかなと言っておりました。通信状態に余裕のある方は是非調べてみてください。
ザイテングラートは不揃いの形の岩を段々に積み上げたような場所でした。足場が悪く、僕達は少し時間をかけながら進んでいきました。
ふと、足元から目線を外して辺りを見渡すと、壮大な景色が広がっていました。(語彙力の少ない僕の)言葉では表せないくらいの圧巻な景色に、思わず足を止めてパシャリと写真を撮りました。帰ったら知り合いに自慢します。
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ザイテングラートを抜けると、今度は斜面が急になりました。頂上に近付くにつれ、気温も下がってきています。
そして、風。絶え間なく強風が吹きつけ、それが寒さを感じる主な原因となっています。首にかけたタオルがなびいて、飛んでしまわないように気を配りました。
しばらく歩き、見えてきたのは第一の難関。ロープ、そしてハシゴです。ロープを左手で握り、足場の少ない大岩を移動します。
「ロープは補助として使うんだ。決して頼り過ぎないように」
「はーい」
引率の方からのアドバイスに元気良く返事をし、危なげながらもロープ、ハシゴを突破しました。
その後も急な坂道、険しいガレ場(岩や石がゴロゴロ転がっている、割と不安定な道)を通り抜け、七時半に穂高岳山荘に到着しました。予定時刻よりも一時間早い到着です。
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穂高岳山荘で休憩した後、僕達はさっきとは違う緊張を持って奥穂高岳へと向かいました。
まず、傾き具合が違う。『あれは崖です』と言われても信じるくらいに、急角度。実際に登ってみると想像よりは傾いていないのですが、見上げた時のあの荘厳な雰囲気は畏怖すら感じさせられました。
「気を抜いたら死ぬよ。滑落しないようにね」
引率の方は冗談ではなく、本気でそう言ってきました。慎重に行けば僕達でも大丈夫らしいですが、気を抜いたら知らないという風でした。
しばらく登っていくうちに、また難関がやってきました。鎖とハシゴ。先程とは長さも怖さも段違いです。「ハシゴを登る時は下をなるべく見ないように」ともアドバイスをもらいました。僕は鎖を握りしめて、ロープの時と同じように慎重に登り、ハシゴにまで辿り着きました。
「……まずい、友人」
「どうした。もしかして高いのが怖いのか?」
「なんで言っちゃうんだよ。その通りだよ、ちくしょう!」
ハシゴに足をかけただけでガクガクブルブルと足が震え始め、風が吹けば落ちてしまうんじゃないかと余計な事を考えてしまいました。
それでも友人の激励を受けてどうにかハシゴはクリアしました。ハシゴを登っている間は、高所恐怖症の人の気持ちが分かった気がします。
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その後は割と順調に進み、すれ違う人とは挨拶をしたり道を譲ったりと、少し余裕を持って進めました。途中ですれ違ったベテランの方とも少し会話をしたりしました。
「いやぁ、やっぱり(この高さは)怖いですね〜」
「なぁに言うとるね、若い頃ならこんくらい楽しんで登っとるだろぅ。私が若い頃はね、もう疲れなんて知らないくらいだったよハッハッハー!」
とても元気そうでした。そして、彼らから見ると僕達でもまだ『若造』のようです。……最近、どうも腰が痛いのは僕だけですかね。
とまぁ、そんなこんなで歩いていき、休んでは水を飲み、なるべく危険を伴わない登山をしていきました。奥穂高岳(3,190)で標高3,090メートル程登った頃、風が強くなってガス(霧)も僅かに出始めました。
それでもルート上はまだ問題がないと判断が下され、僕達は頂上への歩行は中断しませんでした。
そして、八時四十分。奥穂高岳、登頂!
あいにく、雲やガスで遠くの景色を見る事は出来ませんでした。ですが、雲がかった山や雲海を見る事は出来て、幻想的な風景を楽しめました。
登って良かったなぁ。
そう思える奥穂高岳登山でした。
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下山は割愛。
強いて言うなら、一回だけ足首を軽く捻った(捻挫はしてません)だけで、後は至って普通の下山だったからです。
そして、三時間の時間を経て、僕達はテントまで戻ってきました。その後、ヒュッテに行って軽く雑談を交わしました。
「いやぁ、疲れたねー」
「おう。ま、体力的には問題なかったな」
「お疲れ様、二人とも。アイス(五百円)奢るよ?」
「「ありがとうございます!」」
もう遠慮はしませんでした。
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アイスを奢ってもらった後は、昼食にしました。僕はカレー(千円)を頼み、友人は(軽量したいとの事で)自前のフリーズドライを食べていました。
食べている途中、手の甲に水滴が落ちてきて、上を見上げると顔にもパラ、パラ、と落ちてきました。
「……雨降ってきた?」
「……だな。一旦、屋根の下に行くか」
半分程残っているカレー皿を持って、僕達は屋根の下まで移動しました。それから雨はあまり強くならず、パラ、パラ、と降ってくる感じでした。
「ご馳走様でした。どうする?戻る?」
「そうだな、戻るか」
昼食を食べ終えた僕達はそうしてテントに戻り、僕はその後、昼寝をしてしまいました……
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「……おい、起きろ……起きろ!本ヶ谷!」
「はわわ⁉︎どうした友人!」
「雨!テント浸水してる!」
「へ?……ひぃ⁉︎」
眼が覚めると、テントの端に水滴が溜まってました。
どうやらテントフライ(雨除け)の設置が上手く出来てなかったようで、雨に濡れたテントの端が内側まで浸透してきたのです。
「取り敢えずフライ直すぞ!出て来い!」
「う、うん!」
僕はあたふたしながらもテントから出て、第一優先のテントフライの再設置を友人と協力して対処しました。弱かった雨はいつのまにか本降りになり、急いでバッグの底にある雨具を引っ張り出しました。
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……取り敢えず、どうにかなりました。テントの中の水はタオルで拭いて、少し湿った場所は新聞紙やレジャーシートを応急処置として置きました。
雨は降ったり止んだりを繰り返していて、気温も下がってます。先程の浸水でフリースが濡れて、今は雨具を着て身体を冷やさないようにしています。
現在時刻、十七時。雨が止んだので早いですが夕食の時間にします。
今日はフリーズドライのカルボナーラとドライカレー。雨が降る前にサクッと準備をして、お湯を沸かします。お湯が沸騰してきた所で、雨襲来。急いでお湯をフリーズドライ食品に注ぎ、雨粒を浴びながらも片付けをしてテントに避難しました。
外で景色見ながら食べるのも良かったですが、テント内で食べるご飯もまた乙なものでした。
その後はゴロンゴロンしたり日記を書いたり、友人に誘われて散歩(雨はだいぶ弱まりました)に行ったり。その後は外で暗くなるまで雑談し、テントに戻りました。
二十時になったら寝る準備を開始して、今日は寝るつもりです。
おやすみなさい。
追記。明日の北穂高岳登山は中止となりました。昼には上高地まで戻る予定です。それでは。




