二日目
……おはようございます。
いえ、投稿している時点ではもうおやすみなのですが。現在時刻は四時十五分です……
眠い!
今日の起床時刻は五時なのに……
テントの中のシュラフ(寝袋。ぬくぬくです)で眠っていると、周りのテントから物音、笑い声。どうやら近くに四時起きの団体がいたようです。
そして眠い目を擦りながら起き上がると今度は寒い!シュラフの中はあったかいのですが、それから這い出ると身体が思わず震えました。近くに備えておいたフリースにそそくさ手を通します。
(『防寒具を忘れないように』って、こういう事かぁ)
登山計画の時に言われたその言葉は、どうやら守っておいて正解でした。もっとも、その分バッグがパンパンになったのですけどね。
さて、友人も目を覚ましたので朝ご飯を作り始めました。朝食はフリーズドライのカレーリゾット。中にお湯を注いで三分待つだけで、美味しいリゾットが食べられるというスグレモノ。手間が少ないにもかかわらず、その味は劣っていない。美味しかったですマル
▽
出発前にトイレを済まし、テントを片付けバッグを背負う。バッグ、と言っても六十リットル入るメインザックカバンで登ります。体感質量はおよそ十二〜十四キロ。慣れない重さに振り回されるも、頑張って担いで小梨平キャンプ場を後にしました。
今日の日程は、小梨平キャンプ場を発ち、横尾を通り、最終的に涸沢ヒュッテまで登ります。
合計時間は六時間と想定。特に後半の三時間は急な坂らしく、重たい荷物を背負った僕は少し自信がありませんでした。
ごちゃごちゃ言っても仕方ないので足を動かし、脳内でBGMを流しながら歩いていきます。
引率の方のペース配分が良いのか、道中休憩を二回挟んだだけで、横尾までは特に疲れずに到着しました。予定時間よりも早く着き、一旦休憩と二十分の休憩時間を取りました。
その頃の僕はというと、
「ねぇ、友人。……肩、痛くない?」
「ん。俺も痛い」
普段経験していない重装備の所為か、肩が途轍もなく痛い。腕を軽く上げるだけで筋肉痛を酷くしたような痛みが襲ってきました。
「君達、きっとそれはザックの調整が上手くいってないんだよ。腰の部分の留め具を少しきつく締めたら、それだけで肩が楽になるよ」
「ほぇ〜、そうなんですか」
引率の方がそうアドバイスをしてくださり、早速試してみたところ、肩の負担が嘘のように消えました。荷物の質量が軽くはなりませんが、腰の部分で支えた分、肩にかかる質量が減ったそうです。
さて、体力も回復したので、再出発します。
▽
はいドン。着きました、涸沢です。三時間分を消し飛ばしました。……冗談ですよ。
横尾を出発して、まず思ったのは『岩が多い』という事。それもゴツゴツした大きな岩です。山を登ると言うより、岩の段を登るような感じでした。
さらに、斜面が段々と急になっていき、足も度々悲鳴を上げていました。休憩を挟んでも痛みは治らず、特に左足が痛かったです。
と言っても、せっかく登ってきたのに自分勝手な言い訳で、
「すみません、足痛いんで降りて良いですか?」
なんて言える訳もなく……。痛みを堪えながら斜面を登っていきました。因みにですが、涸沢について十分もしないうちに治りました。てへっ。
▽
涸沢までの道中、他のお客さんともたくさんすれ違いました。お年寄りから子供まで。家族で来ていたり団体で来ていたりと、どうやらここは中々の人気のようです。
しかしその中でも驚いたのは、すれ違えば全員が挨拶をしてくれた事でした。「おはようございます」や「お疲れ様です」は当たり前。順番を譲ったりすれ違いの時に立ち止まって道を譲れば「ありがとうございます」と声を掛けて頂きました。
僕はちょっと感動しました。やはり挨拶は大事という事に気付かされました。子供が大きな声で「こんにちはー!」と挨拶してくれた時には思わず微笑んで「こんにちは」と返しました。子供って、元気ですね。
そんなプチ交流をしながら登っていき、ようやく涸沢ヒュッテの旗(遠目から見たら旗でしたが、着いて見ると鯉のぼりについている虹色のアレでした)が視界に入り、あと少しだぁ、と気合を入れて登ってきます。登って登って登って、休憩してからまた登る。
……着かない!
視界に入っているのに、全然近付いた感じがしない!見えているだけにどんどん疲れが増していくようでした。「……なんか、遠いですね〜」と僕が愚痴ると、引率の方は笑って「うん。期待を裏切ってくるよ、ここ」と言ってました。いい笑顔でした。
▽
「着いたぞ、こんちくしょー!」
「いやぁ、結構長かったな。余裕だったけど」
「……なぬっ⁉︎」
涸沢ヒュッテについて、まず目に入ったのは売店と山を見下ろせる展望席。人が少ないと(勝手に)思い込んでいた僕は、賑わっている展望席を見て目を丸くしました。それに、カレーやラーメンを食べているのです!
「カレーとか売ってるっぽい?」
「アイスクリームも売ってるらしいぞ、ここの売店」
美味しそうな匂いが漂う中、先にテント設営を済まします。ここの地面は石がいっぱい。その上にテントを敷くと痛いので、レンタル出来る敷板を三枚借り、テントの下に敷きました(僕と友人が二枚、引率の方は一枚。2つのテントで寝ています)。
さて、テントの設営も終わり、いざ売店へ。カレーライス何円だろう?六百円あれば足りるかな?と思いながら僕は友人と共に売店へ向かいました。
壁に書いてあったメニュー表に目を通すと、
『カレーライス1000円』
「……高っ⁉︎」
『ラーメン1000円』
「……諦めるか」
僕の考えが甘かったです。
渋々ガッツリメニューは諦めて、アイスクリーム=五百円を食べ、カフェオレ=三百円を飲みました(あと二百円払ってカレー食えよ、とは突っ込まないでいただきたい)。その後、引率の方はどうやらビールの気分らしくビール缶を買っていました。
「いやぁ、値段が高いですね。カレーライスに千円もかかるなんて」
「まぁ、山の上だからね。あっ、そうだ。奢るよ」
「「えっ⁉︎」」
そう言って引率の方はさっと二千円を僕らに出してきました。流石に奢られるのはマズイので(値段が値段ですし)、「いやいや!半分は出しますよ!」と言ったのですが、「人の厚意くらい受け取ってくれよ」と引率の方(実を言うと僕らよりも歳上の方)に押し切られてしまいました。カレーライス、美味しかったです。
▽
その後は寝るまでやる事もないので(夕食を作るくらいだ)、友人は本を読み、僕は昼寝。展望席(ピークを過ぎたのか、空いていました)は風通しが良く、完全に寝れないにも気持ち良くウトウト出来ました。
そんな中、チャリンッ、というお金が落ちた音と、「あぁ〜……」という落胆の声が聴こえてきました。顔を上げて見てみると、お客さんの一人がテーブルの下を見て「やっちまった……」と呟いていました。友人が言うには、床の隙間(展望席の床は木の板を繋いだもので、三センチくらいの一定間隔で隙間が空いています。ここまでくれば察せるものです。
(僕も落とさないようにしとこう)
と、急いで財布をジッパー付きのポケットに入れました。人の振り見て我が振り直せ。油断大敵、です。
そんな風にして時間を過ごしていると(着いた時は太陽が出ていて暑かったのですが)、空いっぱいに雲が覆いかぶさり、一気に空気が冷えました。
気候変動の速さ。これが、高山地帯か……
ちなみに涸沢ヒュッテは標高2,309メートル。朝と夜はかなり冷えるでしょう。寝袋から出れなくなるかもしれない……
それはそうと、台風が近付いているようですね。天候によっては登山行動が中止になるとの事。安全第一ではありますが、どうせなら登りたいものです。
▽
現在時刻、十六時。到着してから三時間程経ちました。空は九割が雲に覆われ、太陽は隠されてしまっています。冷たい風が吹き、フリースを着ていても寒いです。
携帯の充電も一時8パーセントまで落ちました(天候に全く関係ない)。やはり長旅に予備バッテリーは必須ですね。今は60パーセントまで回復しております。
太陽が隠れて空気が冷えた所為か、着いた時に見えていた奥穂高岳や北穂高岳の山頂はガス(霧?)で見えなくなってしまいました。明日の朝もこれだと折角の景色が台無しですし、何より初心者には危険です。
テントに籠るのも良いですが、今いる展望席はテントから少々遠く(家からコンビニまでの距離よりかは断然近い)、動くのが面倒です。何より、隣に座って読書に耽っている友人は動く気が無いようですし。
仕方なく僕もこの日記を書いております。
どうでも良い事ですが、書いている途中に圏外になったりしています。上に手を伸ばして(多分、意味はないが)しばらくするとアンテナが小さく一本立つのですが、それまではハラハラして待っています。圏外だと、保存出来ないので。
十七時くらいには夕食ですかね。カレーライスでお腹は空いていませんが、遅過ぎるのもアレなので。
▽
十七時になりました。夕食の時間です。
読書をしていた友人は中断し、僕はテントへ調理器具を取りに行きました。テーブルの上は火気厳禁。なので僕達は展望席近くの岩場で調理を始めました。
そして恒例のじゃんけん。僕はチョキ、友人はグー。
……解せん。
「運がオカシイんだよ、バーカバーカ!」と言いながら(睨まれました)、炊事場に水を汲みに行きました。展望席では若い男女達(大学生……だろうか?)がビール片手に夕食を食べていました。僕と友人は酒を遠慮して、普通の夕食です。
今回の食事はフリーズドライの炒飯で、お湯を注いでから十五分待ち。チラチラと時計を見ても全然進まず、もどかしい限りでした。
十五分経って、食事開始。うん、美味しい。食べやすいので、パクパクと口に運んで数分で食べ終わってしまいました。
途中で引率の方が来て、明日の天気について尋ねると、「う〜ん、今の天気が続くんだったら、厳しいかなぁ」と言っていました。
キャンプ地のすぐ上には霧が迫り、明日登るにしてもこの霧が晴れない限り無理そうです。もし明日の天気が悪ければ、もう上高地(初日にテント泊した所)まで降りようとも言われました。
その後は雑談を交わして時間を過ごし、寒くなってきたのでテントに戻って時間を潰してから眠りに就きました。
明日の登山も、これからの予定も、全ては天気次第……晴れる事を祈ってます。




