SS「異世界に必要なものを箱に入れてください」(1000文字以内)
「この段ボールの中に入れた物と共に、異世界に飛ばして差し上げます」
大型トラックに轢かれて死んだはずの3人の男達の前に、いきなり真っ白の世界で目の前に小さな小型の段ボール箱が現れるとそんな言葉が舞い込んで来た。
その声の主は女神と言う物で、最近はチートとかを与えるのが多すぎるという事でこのような話を持ちかけたんだそうだ。女神が言うには箱に入る限り、この世界にある物ならばなんでもこの世界に持ち込めるみたいである。
最初はなんで死んでしまったと嘆き、悲しんでいた3人であったが、今時の現代日本人として多くの異世界転生小説を持っていた彼らは、瞬時に理解した。
「その世界に元の世界との通信手段はありますか?」
1人の眼鏡をかけた男がそう尋ねると、女神は「あります」と答える。すると、眼鏡をかけた男は決心が固まったらしく、
「私はこれで転生させてください」
と眼鏡をかけた彼は女神にそう言った。彼の持つ段ボールの中には、ノートパソコンや携帯、さらには念には念を入れて手動で発電出来る発電装置が入っていた。どうやら彼は、異世界にて現代知識を使っての内政チートを企んでいるのは目に見えた。
「分かりました。では、存分に異世界を楽しんでくださいませ」
女神の手によって、彼は異世界へと旅立った。
「俺も決めたぜ!」
と、筋肉質の良いガタイをした男はそう言って、続いて女神に箱の中身を見せる。箱には、金銀財宝と言うこの世界でのお金になりそうな宝石や貴金属が入っていた。どうやら彼は、大金を使ってのお金持ちルートに入りたいみたいである。鉄やニッケルなど本当に様々な金属が入っているのは、その異世界でどの金属が一番高く売れるかを考えているようだ。
「分かりました。では、存分に異世界を楽しんでくださいませ」
そう言って、金銀財宝を持ってガタイの良い彼は異世界に旅立った。
残ったのは、痩せ細った、いかにも暗そうな男子高校生。
「あなたも何を持っていきたいか決まりましたか?」
と女神が彼に尋ねると、コクリと頷く。
そして空っぽの箱を見せて、こう言った。
「箱に入る限りはなんでも出てくる、この不思議な段ボール箱をください」