『死亡宣告』
「おめでとう、貴方も人間になれるの」
それが、母親の声を聞いた瞬間でした。
「良かったな、これでお前が虐められる事も無いぞ」
それが、父親がした祝福の、初めての出来事でした。
「国からの援助が特別に認められてね、貴方の醜い姿を人間に変えてくれる施設に入れる事になったの」
それが、初めての
「これで貴方も人間になれるのよ!おめでとう!」
初めての
「良かったな! 本当に良かった!」
はじめて
「え、何処に行くの!?」
はじ
「逃げるなよ!」
「捕まえろ!」
「こら! 何処に行くんだ!?」
逃げました。
逃げて、逃げて、逃げました。
私は虐げられる存在で、決して逃げてはいけない。
そう分かっていたはずなのに、逃げてしまいました。
これでは、私が私でなくなってしまいます。
化物でなくなってしまいます。 駄目です、そんなのダメです。
そうです、自殺さんなら分かってくれます。
私は人間なのです。
だから、きっと。
「何を言っている」
そんな、私の予測は。
「良かったじゃないか」
……いいえ。
私の期待は、崩されてしまいました。
「良く、ありません」
「何処がいけないんだ?」
全部です。
私は何故人間にならなければならないのですか。
私は化物です、虐げられるものです。 そんな存在が人間になってはいけません。
人並みの希望なんて抱いてはいけないのです。
「そんな事お前が決める事じゃない」
「じゃあ誰が決めるのですか!」
「俺だ」
「意味が分かりません、何故自殺さんがそんな事を決めれるのですか」
「じゃあお前だ」
「自殺さんの言う事はめちゃくちゃです!」
「俺から言わせれば、お前の方がめちゃくちゃだけどな」
「何処がですか!」
「じゃあ聞くが、何で人間になるのが嫌なんだ?」
「そんな訳ありません! 私が人間になれば自殺さんのお話が分かるし、それに、虐められる事もなくなるし、だけどお母さんやお父さんとも話せるし、あれ、けど、えっと……」
「落ちつけよ」
そう言って、自殺さんは私に水筒を渡します。
水筒を受け取り。
「飲め、美味いはずだ」
抵抗はありましたが、自殺さんがいつも飲んでいたという事もあり、ゆっくりと口を付けます。
甘くて、酸っぱい。
今までに飲んだことのない、変な味。
味は衝撃的でしたが、喉が潤ったせいか気分が落ち着いて行きます。
「落ち着いたか?」
「……少し」
「なら十分」
自殺さんは私の手から水筒を取り、一気に飲み干します。
「よし、それでは始めるか」
「何を、ですか?」
「葬式だ?」
「へ?」
「お前の葬式だよ、安心しろ。 葬式なんてものは人生に一度は体験する、怖くない」
「そんな、私はまだ」
そう言いかけて。
「だから、安心しろ」
私は何も言えなくなりました。
彼がとても良い笑顔で。
「俺は既に、三回葬式を迎えている」
悲しそうに、言うものですから。




