『二人』
彼と二度目に出会ったのは、やはり裏山の森でした。
以前の彼と違う所は、学生服を着ていて、死のうとしていませんでした。
後、水筒に入った変な物を飲んでいました。 後々聞きましたが、自分で飲み物を作って、それをいつも持っているそうです。
他には、特にありません。
「こんにちは『化物』」
「こんにちは、化物」
いえ、ありました。もう一つの変化。
正確には私と彼の変化ですが、妙な挨拶が始まりました。
挨拶というものは初めてで、どうすれば良いかおっかなびっくりでしたが、どうにか上手く言えました。
「酷いな、俺の事を化物だなんて」
と思ったのですが、そうでもなかったようです。
では、どう呼べば良いのでしょうか。
「俺の事は『自殺』さんって呼んでくれよ」
これが彼の名前を知った瞬間と、私に名前が付いた瞬間でした。
彼と出会ってから様々な事を経験しましたが、不思議と胸が痛みます。
何故でしょう、よく分かりません。
「ところで、話は変わりますけど」
「何だ?」
「何をすれば良いのでしょう」
「質問の意図が分からないな」
「私という生物は、今まで会話した事がないです」
「その割に話すのが得意そうだけど」
「そうですか?」
「あぁ。 姿からして人の言葉を喋りそうにない」
「一応、人間ですので」
「人間に角は生えない」
そう、ですよね。
人間に角は生えませんし、耳の形も、服で隠れてはいますが背中の翼も、手の形も、人間とは違います。
「では、話を変わりまして、僕は何なのでしょう」
「人間だろう」
彼はキッパリ言いました。
表情を変えず、真剣な眼差しをこちらに向けて。
「しかし、先程人間に角は生えないと言ったのは自殺さんです」
「そんな物は関係ない、俺は何度も死んでいるが人間だ」
それは、生物として何か間違っているような。
「死にかけた、という事ですか?」
「いや、死んだ」
「ですが、自殺さんは生きてます」
「違うな、俺は生きてないんだ」
……希望。
何となく、昔の事を思い出しました。
希望が無いと生きれないけど、希望が手に入ったら死んでしまう。
人間は希望を求め続け、手に届かない何かを追い続けなければ死んでしまう。
ですが、私はその両方を諦めました。
では、彼はどうなのでしょう。 死んだけれども、生きている。
希望を手に入れて絶望したのでしょうか。
私には、分かりません。
「自殺さん」
「何だ?」
「似ていますね、私達」
「似てないさ」
「そうですか、ところで自殺さん」
「何だ?」
「また、話して頂けますか」
「……気が、向いたらな」




