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イケメンリア充の憂鬱

作者: せつなっち

 俺の名は斎藤光さいとうひかる

 気軽にヒカルと呼びたまえ。

 そして、俺のちょっとつまらない愚痴を聞いて欲しいんだ。君に。


 唐突だが、俺は転生した。前世も日本人で、今から20年くらい前にこの世から去った。

 しかも童貞のままで。

 50年という短い生涯を、戦争や世界の発展のために尽くしてきた。いや、言い方を変えると無理矢理やらされた。

 そして、定番の神様のうっかりミスで殺されてしまった。

 俺なら銃弾さえ避けられるというのに、神の野郎は「手元が狂った」という言い訳してきやがった。

 女の子と付き合ったことさえない俺は、死んだ後に後悔した。

 もっと人生楽しんでおくべきだったと。

 そして俺は神に言った。


「イケメンで生まれ変わらせてくれ」と。


 それから13年後。

 中学生になった俺は、やはりモテた。ただでさえイケメンなのに前世の感覚があるのか?運動神経は抜群。一躍、中学校のスターになった。

 しかし、イケメンというのは想像以上に大変だった。

 まず、朝起きれば幼馴染の女の子が俺のアソコをいじっている。


「おま!!!何してんの!?」

「私の将来の旦那さまを可愛がっていたの」


 まさか!と思った。

 前世では知り得なかった女性達の実態はこんなにエロいのかと。

 そして、幼馴染と一緒に朝ご飯。


「はい!あ~ん」


 最初はこれがかの有名な「あ~んかっ!」と感動したものだが、食べ終わるまでこれやるのは面倒臭いし、時間がかかる。


「お義兄ちゃん、早く行った方がいいよ?」


 義理の妹は毎朝の食事と昼の弁当を作ってくれる。前世の俺は妹と全然仲が良くなかったし、こんなに優しくなかった。イケメンってすげーなと関心したものだ。

 しかし、最近妹の様子がおかしい。だって、夜中俺のベッドに侵入してくるのだ。イケメンだと妹にまで好かれるのか?いや、義理だけれども。妹だし、可愛いけど欲情しない。はっきり言ってメンドイ。


 俺は幼馴染と一緒に登校する。しかも手を繋いで。恥ずかしいので辞めて欲しいのだが、手を離すと急にすごい顔をするのだ。なんか精神的に病んだような感じである。


「ヒカル~!今日もラブラブですねえ」


 軽口を叩いてくるのは親友の男だ。一緒にサッカー部に入らされている。

 俺は野球派なのだが母親が「ゼッタイ、サッカー」と言って強制的にやらされ、結局7年くらいサッカー小僧だ。ちなみに山本浩二のファンなのだが、俺が死んでる間に随分と変わられた。今の選手?分からん。


「ぐるるるる……」


 幼馴染が親友に牙を向いている。俺が誰かと話そうとするともの凄く怒る。だから親友とはなるべく男子便所で会話する毎日だ……。

 おかげで俺は彼以外に友達がいない。


「なあ、もう手を離せよ」

「うん……」


 教室に入ってようやく開放される。もう学校中で俺らはカップルということになっている。そして、もちろんクラスメイトのあの子もそう思っているだろう。

 そう、俺の好きな子だ。

 チラっと彼女を見るとたまたま目が合った。慌てて伏せる。

 ああ、今日も可愛いなあ。しかし、俺は幼馴染のせいでロクに話したこともない。

 もっと男らしく、幼馴染を拒絶しろだって?無茶言うなよ、長い間生きてきたのに女の扱いに関してはど素人なんだから。


「今日は文化祭の発表を決めたいと思いまーす」


 スタイルのいいうちの委員長がそう発言した。

 私立中学だから文化祭があるのかな?どうでもいいが。

 ボケっとしてるといつの間にか、出し物が演劇になっていた。

 しかも白雪姫。おいおい白雪姫かよ。と思って誰が主役かなと思ってみたら。


「斎藤くん、王子様役いいよね?」

「え?……まあいいよ」


 こんなのはいつものことだ。そしてクラスの男共から怖い視線。

 仲良くないイケメンばっかり得をしてズルいよな。うん、分かるよ。

 そしてヒロイン役に幼馴染が選ばれそうになった時(カップルだからやりやすいだろうって意見)、一人の女性が手を挙げた。


「私……やりたいです」


 手をあげた女性はなんと俺の好きな人だった。うっひょおおお。超可愛い。頑張れ、俺の天使!


「えっと……いいのかな?」


 委員長は俺の方を見て戸惑っている。幼馴染は唖然とした表情。


「良いんじゃないですか?」


 俺は無難にそう答える。むしろ好きな子に決まって欲しいのだが。


「ちょっとちょっと!どういうことよ!」


 後ろの方にいるギャルAとギャルBが騒ぎ出した。


「ヒロインになればヒカル君とチュー出来るなら私だってやりたい!」


 ギャルAがとんでもないことぶちまけた。


「ふざけないでよ!!!」


 幼馴染がキレだした。こうなったあいつは止められない。


「ちょ……」


 委員長がめっちゃ慌ててる。つーか先生寝てるし。仕事しろ!

 ギャルAと幼馴染が言い争ってる。好きな人は立ったまま呆然。


「ちょっと待って!」


 委員長が叫んで、ようやく言い争いが止まった。みんな彼女の方を見る。


「だったら、私だってやりたい」


 委員長様!?何面倒くさいことおっしゃいましてんですか!?

 俺、混乱して日本語おかしくなりやがりましたよ!?


「じゃあ、斎藤くんに決めてもらお?」


 好きな人の一言でクラスの全員が俺の方を見る。

 男子は「なんであいつだけ……」とボソボソ呟いてるし、女子の多くは面白そうにこの状況を見ている。いや、誰か止めてくれよ!?


「じゃあ……全員で」


 ヘタレな俺に一斉にクラス中から消しゴムが投げられた……。痛え。


 その数日後、俺はたまたまクラスの男子生徒が小説を書いているのを発見した。

 小説を見るのは好きだが、書くのは好きじゃない。書ける奴ってすごいよな。

 しかしそのタイトルが奇抜だった。


「俺のクラスメイトはハーレム野郎」


 そういや、今の時代ってヘンテコなタイトルの小説が多いよな。俺の時代とはやっぱり違うんだなと思い、勝手に読み始めた。


 女の子にモテない主人公が、クラスメイトのハーレム男と仲良くなり、その周りの女の子を落としていくストーリーで、生粋の非モテ精神を宿している俺の心はすぐに引き込まれた。

 ハーレム野郎か……。羨ましいぜ。色んな女の子に好かれやがって。

 こんなことは現実に有り得ない。だって、神様にイケメンにしてもらった俺が言うんだから間違いない。

 女の子が無償の愛をくれるなんて有り得ない。俺の幼馴染を見てみろ?やばいよあれは。


 しかし、ハーレム野郎の名前はヒカルだった。


「これ、俺じゃねーか!?」


 よく見るとヒロインの名前がこの間、文化祭の役決めで言い争ってたメンバーだった。

 もしかして俺こういう風に見られてるの?

 登場人物のヒカルはイケメンでリア充……リア充ってなんだ?

 そしてたくさんの美少女と毎日のようにデートを繰り返してて心底幸せそうに書かれている。


「違ぇーよ!?こんなんないから!?」


 幼馴染の女の子はお淑やかで男の一歩後ろを歩くタイプだった。彼女はヒカルが他の女の子と遊んでても何も言わない。それを主人公にひたすら愚痴っていた。

 いや、俺の幼馴染だったら俺を半殺しにするんじゃないかな?ははは……。


 これは、彼の間違いを早めに正すべきかなと思った。

 こんなハーレムなんか有り得ないから。


 前世のモテなかった自分は、イケメンでモテモテの奴らが羨ましかった。

 でも今は違う。

 イケメンなんてこれっぽっちも良い事がない。

 同性の友達があまり出来ない。彼女を作りたくても、女の子達が俺を巡って戦争を起こす。イケメンゆえの過剰なプレッシャー。


 あの頃は幸せだったなっと、思いを馳せる。

オチが無かった!どうしよう!?

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