不器用な告白(ナツ)
*ナツ×主人公……いや、ナツ→主人公?
*IF世界
*片思い…かも?
*二人で買い物途中
*微甘
アイツは自分で自覚してねぇだけで、容姿は平均以上に可愛い方……だと思う。
いや、実際はどうなのかは分からねぇけど。
……あれだ。一度好きになっちまうと容姿なんて関係なく可愛く見えるっつーか…それだとアイツを『可愛くねぇ』って言ってるみたいで嫌だな。
とにかく、アイツ――――アスカは可愛い。
その証拠として、アイツは今……ナンパされている。
「かーのじょっ?ちょっとぐらい良いだろー?」
「……あの、私は人を待っているから…」
自分の女ではないのに、こういう場面を見ちまうとすっげぇイライラする。
こうなるなら、アスカを連れてクレープを買いに行けば良かった。
事の発端は、買い物帰りにクレープ屋の屋台の前を通り過ぎた事。
普段はあまり何かを『欲しい』と態度に示さないアイツが……クレープ屋の前で立ち止まり、自分の財布を取り出そうとした。
けど、その前に俺様がアスカに「奢ってやるから近くのベンチに座って待ってろ」と言ってやった。
……んで、クレープを二つ買って、アスカの座ってるベンチを探してたら…
こーなってたってわけだ。
「人居ないじゃーん?
あ、誘ってくれる人を待ってるって感じー?俺みたいな?」
少なくとも、てめぇみたいな男をアスカは待つわけねぇから安心しろって。
……さっさと助けるか。
「―――――――邪魔だ、そこ退けよ」
「……っ…ナツ…!!」
「は?お前、誰?
つか今、俺が彼女を狙ってるんだけどー?」
二人の間に割り込んで、俺様よりもでかいナンパ野郎を睨みつける。
『お前、誰』って宣言は俺様がソックリそのまま言い返してぇけど……時間の無駄。
「だから邪魔だっての…
お前に拒否権はねえんだから、大人しくどっか行け」
「ガキが偉そうに言って――――――モガッッッ!!!!??」
あまりにもピーピーうっせぇから、俺様の分のクレープをナンパ野郎の口に無理矢理押し込んだ。
……つい力をいれすぎて、押し込んだ時に前歯を何本か折った感覚がクレープ越しに伝わったが…
アイツをナンパした制裁ってことで気には止めない。
ハッ、ざまあみろ。
「――――――コイツは俺様の女なんだよ、馬鹿」
「!!」
アスカが驚いたように目を開く。
俺様はナンパ男にそう吐き捨てて、アスカを引っ張ってこの場から去った。
********
「……悪ぃ…
一緒に買いに行ってたら、ナンパされずに済んだのによ……」
「………ううん、別に大丈夫…」
さっきの場所より結構離れた公園。
……ここなら、子供しかいねえし安全だろ。
けど、クレープを受け取ったアスカは、さっきから全然俺様と目を合わせようとしねぇ。
まさか、あのナンパ野郎のせいで男が怖くなったのか……?
「……なあ、さっきの野郎に何かされたのか?」
「いや、何も…」
「だったら、どうしてそんな暗ぇんだよ……正直に言え」
「………その、恥ずかしくて…」
「はあ?」
恥ずかしい?
何がだよ……やっぱ、あの野郎に何かされたのか…?
「何がだ、言え。
本当に酷い行為なら、今すぐ戻ってあの野郎を―――――」
「……ナツの、発言だよ…!!!」
「……………俺様の?」
「こ、公共の場で……皆、見てたんだからっ…!!!」
……あぁ、そーいうことか。
いつも言ってるから自覚はねぇけど…確かに恥ずかしい発言だな。
「………嫌か?」
「…へ?」
「お前が無性に好きで、誰よりも本気で俺様の女にしてぇって思ってたらどうする?」
「え、あ……」
「冗談だっての。
ほら、とっとと食って帰るぞ」
――――――まだ、流石に答えられねぇか。
けど、その時になったらもう一度言ってやる。
覚悟しとけよ?
...true end...