縁日にて
「私みたいな美少女と一緒なんて感謝しろ。パパ」
口を不機嫌そうにゆがめ、悪態をつく娘。明らかに不良少女的な容姿。
白く染めた髪、タバコのヤニ臭い息、超ミニに切った学生服に黒くした肌。脚は最近流行のルーズソックスを糊付け。
「はいはい」
パパと呼ばれた男。笑いながら、「今日はコレだけ」といってカネを渡す。
「この程度かよ」村山智香は吐き捨てるように呟くと、カネをポケットに突っ込んだ。
「稼ぎ足りねぇンダヨ。銀行に勤めているって言ってなかったか? 」「最近は銀行も危ないんだよ」
「ウソつけ。銀行が潰れるわけねぇ」智香は吐き捨てると、「和利」男に抱きつく。
「サービスだ。どうよ? ノーブラだぜ? ……あと5千円な」
「……」和利は先ほどの行為の余韻覚めやらぬ様子を見せて、もう一度財布に手を伸ばした。
「しょっぼ。あんなキタネェアパートでやるなんてさ」
二度目の行為が終わった二人は、ゆっくりと歩き出す。近くの神社で縁日をやっているらしい。
「いいだろ。この浴衣」持ってきたらしい。妙に荷物が大きいと思ったと和利は思ったが。
「あと1万円」鬼か。といいかけて黙った。
「まぁ、お前みたいなブッサイクと、縁日に付き合ってやって、タダなんて俺の慈悲に感謝しろ」
相変わらず和利のおごりで屋台を物色する智香。その脚が一瞬とまった。
「……綺麗」
何処にでもある、安物の子供用のおもちゃの屋台。
「智香ってこういうのが好きなんだ? 」「ばっか」
悪態をつく智香だが、少し頬が赤くなって彼から視線を外したのを和利は見逃さない。
「智香、俺と結婚してくれよ」
買ったばかりのおもちゃの指輪を手に、和利は笑う。
「ば~か。アタシと結婚したけりゃ、年収3000万は稼げ。あと、指輪は最低でも600万な」
見た目も態度も悪い娘だが、そこそこ美人だから、ちゃんとした格好をすれば確かに美少女で通る。
10年ほど前なら、そういう台詞もアリだった。
「でも、まぁ、コレは綺麗だから、もらっといてやる」
そういって智香は和利からその指輪をひったくり、和利の腕を取って歩き出した。
20年前のことである。




