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第8話 街の学校へ入学してみた。

時間経過、このあたりは割と早め。

 気が付けば秋だ。


 俺とトーテルは、コルモラン男爵領の隣、パートリッジ侯爵領にある学校に通うべく、田舎の村クレトスから、はるばる領都ポデントスまでやってきた。


 流石に距離があるんで、コルモラン男爵が馬車を手配してくれた。

 子供の足で歩いたらいつまでたっても到着しそうにないからなあ。


 ……この世界の馬車は、かなり、ケツに辛い。ということが判った……


「侯爵様とかもっと偉い人の馬車なら、もっと乗り心地はいいと思うんですがねえ。

 何せウチは質実剛健の傭兵男爵家でしょう?」

 御者として派遣されたおじさん兵士はそんな風に言う。

 全くもって、同意しかないので頷く。


 ごめん、喋ると舌嚙む。すっげえ、ゆれる。

 一応クッションとかはあるんだけど、揺れ方が半端ないんであんまり意味がない。


 これ、道路のガタつきが大きいのも理由だろうから、一概に馬車のせいだけでもないんだろうけどなあ。



「歩かなくていいだけで御の字だと思ってたけど、身体の鍛え具合でいくと歩く方が楽な場合もありそうだなあ」

 途中一泊した、パートリッジ侯爵領の端っこにある町の宿の公共浴場で、トーテルがぼやく。

 予算があんまりないのと、保護者が必要な年齢なので、御者のおじさんと三人で一部屋だ。


「ですなあ。我々だとポデントスまでは歩きの方がおそらく楽ですよ。

 私個人は輜重部隊なので、いつでも馬車ですがねえ」

 荷馬車担当だという御者のおじさんはそう言いながら、俺たちの背中を流してくれた。


 勿論二人でお返しに背中を流し返した。

 風呂場コミュニケーションはそこそこ大事である。


 多分周囲には完全に親子連れだと思われてた、そんな気はするが問題ない。



 領都ポデントスは、ガチめの都会だった。


 まず、歩いている人々の服装が村よりカラフル。

 村の人の服は基本的に古着だし、染色されてない素材のほうが多い。染めてあっても色落ちしてるレベルのものしか原則出回らないし。


 人間自体も薄い色の髪が多く感じるし、なんか青とか赤とか紫とか緑とか、奇抜な髪色の人も多い。

 ただ、これは、茶髪しかいないクレトス村のほうが珍しいんだそうだ。


 それでもシシェーリス確認官みたいな銀髪は全然いないなあ。

 白っぽい髪色の人はだいたいご老人だ。


 入学手続きがあるので、学校まで付き合ってもらう。

 少ないけど荷物もあるしね。


 と、門前まできたら、見覚えのある茶髪茶目のお嬢さんが一人。


「やっと来たの!おっそいわねえ!」

 そう述べるのは、村長の次女、ミーティスさん。

 あれ?行儀見習いにどこぞの商家に奉公に出るとか言ってなかった??


「なんでミーティスさんが」

「婚約がポシャったからついでに学び舎を体験してくるって啖呵切ったらこうなったのよ。

 あんたたちとは同級生になるわ」

 えぇ……?

 村の噂では、あの縁談、村長がすっごく乗り気って言ってたのに。


「あー、スキルの件が漏れたんすね」

 御者のおっちゃんは、あっさりと真相に辿り着く。


 実のところこの世界、スキルはさほど重要視されないのが庶民一般の感覚なんだけど、これがちょっとでも戦闘向きのスキルがあると、だいたいの場合は貴族に目を付けられることになる。


 恐らく、縁談先がミーティス嬢のスキルの件を何らかの形で知ってしまい、そういった貴族からの横槍を嫌がって破談になったものだろう。


「まったく、口の軽い行けずの叔母なんて持つもんじゃないわね」

 成程、村長の妹で嫁の貰い手がないまま婚期を逃したクレアさんか……あの人ほんとにシャレにならないお喋りだもんなあ。


 口は禍の門、という諺はこの世界にもある。

 つまり、極度の喋りたがり、秘密を守れないタイプの人間は、基本的に敬遠される。

 クレアさんが結婚できなかったのも、それが原因だ。


 ミーティス嬢は、行儀見習いに出るといってこの街に着いたところで破談の話を母親共々聞かされ、そのまま学校に入学することにした、ということで、既に手続きは済んでいるのだという。


 なので、ついでだからと俺たちを案内して貰った。

 流石に御者のおっちゃんも初めての場所だからちょっと戸惑っててね。


「バレちゃったからしょうがないし、〈拳法〉、育ててみようかしら」

「護身術にはなりそうだから、悪くないんじゃない?」

「女の子に何いって、あ、でも護身術必要なのって女性こそそうかあ」

 ミーティス嬢の言葉に軽く相槌を打ったら、トーテルが一瞬制止しようとして、あれそういえば、という顔になった。


 貴族や豪商のお嬢様なら護衛の一人や二人付くだろうけど、田舎の村長の娘だとそれもない、というのにトーテルも気付いたらしい。


「むしろ鍛えてそういう護衛業務を目指すのはアリかもしれないよ。

 女性の護衛に男性を付けたくない人は一定数いるから、需要は確実にある」

 御者のおっちゃんがそんな風に唆したもんだから、ミーティス嬢はすっかりその気になってしまった。


 まあスキルって育てて悪いものはまずないっていうし、いいんじゃないかな?



 学校への入学時期は、原則として秋の収穫祭が終わってから、となっている。

 俺たちも地元で収穫祭を祝ってから出発してきた。


 他にも人がちらほらいるけど、年齢層がばらばらで、生徒なのか入学前の人間なのか、見ただけじゃ判らない。


 まあ後で聞いたら、読み書き計算を覚えてからくる学校だもんで、十二歳で入ってくる子供は少ないそうだ。

 クレトス村出身の俺たちではトーテルが最年少だけど、今年の入学者の最年少もトーテルだと言われた。


 ミーティス嬢が十四歳で俺が十二歳。で、十三歳くらいで入学する子供が一番多いんだって。

 トーテルは俺の一つ下だからね。


 ……やっぱトーテル、普通に優秀なんじゃね?

 俺のは前世記憶っていう、いわばチート?だぞ?

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