表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/10

第7話 鍛錬の理由。

「ふむ、だいぶんと基本の体の動かし方にも慣れたようだな。

 読み書き計算の方も地理歴史の初歩もきちんと覚えたようだし、秋から学校に行けるよう、手配しよう」


 男爵家の館の横にある演習場で、兵士のおっちゃんらに運動の基本を教わっていたら、男爵様がやってきて、おもむろに俺にそう告げたのは、夏の日差しがきつくなりだした季節だった。


 読み書き計算はね、前世記憶のおかげでね。


 ……文字が覚えられさえすれば余裕ですからね、俺。


 うん、喋ってるのはどう聞いても日本語なのに、文字が全然漢字でもひらがなでもなかったっていう罠がね!!


 ただ、表意文字と表音文字の組み合わせであることに違いはなかったから、覚えてしまえばなんてことはなかった。

 この世界ではグラニカと呼ばれている表意文字は、漢字よりはちょっとシンプルだったから、覚えやすくはあったし。


 オノメーという名の表音文字部分が、カナ文字とは法則がちょっと違ったんで戸惑ったくらいだろう。

 子音要素にマークを付加して母音を指定していくタイプの文字なんで、慣れるまで見間違いが多くてなあ……


「あ、学校もやっぱり行かなきゃですか」

 兵士との鍛錬の時間を取るよう言われてたから地元就職コースだと思ってたんだけど!


「そりゃそうだろう。其方は庶子とはいえ男爵家の子息だ。

 其方だけ学校にやらないなどという選択肢はないとも。

 身体をある程度鍛えるように言ったのは、学校ではそれも必要だからだよ」

 コルモラン男爵はそう言うと俺の頭を軽くぽん、と、叩くとも撫でるともつかない触り方をする。


「つまり、身体を動かす系の授業もあるんですか」

「武芸の基礎を学ぶことになる。初等部で習うのは基本の受け身や護身術、あとは乗馬の並足程度までだがね」

 そして、男爵の答えはどちらかといえば予想通りではあった。

 前世でいう体育ってのの、実践的な奴だな。


「そっか、カークは学校行けるんだったなあ」

 俺の隣で一緒に鍛錬をやってたトーテルが思い出したわ、というように呟く。


「うん?成績優秀者なら奨学金くらいは出すぞ?」

「いえ遠慮します」

 男爵は気さくにその呟きも拾い上げたけど、トーテルの方はまさかの即答だ。


「即答なんだ」

 ちょっと引いた顔で見てしまったのは、許して欲しい。


「そりゃそうだよ!僕なんて成績優秀には程遠いし!」

 あ、トーテル君は勉強苦手なタイプだったか……?


「そうかい?自然分野では優秀だと聞いているが」

「あれはスキルにちょっとくらい変化がないかなって調べただけで……」

 トーテルは、俺のちょっとした言葉を覚えていたようで、いろいろと自然現象や実験の結果なんかを調べて、〈還元〉の使い道を探っていたらしい。


 ちなみに、赤土や血の汚れをある程度落とせることを発見していた。

 還元系漂白剤とかいうアレだな。


 なので、落ちにくい汚れのある時に洗濯中のおばさま方に呼ばれては、小遣い稼ぎをしているようだ。


「使い道が増えたなら、熟達しやすくもなるだろう。そういう努力は好ましいものだよ」

 ああ、そうか。

 コルモラン男爵としては、スキル持ちには努力して貰いたいわけだ。


 そうすると女子二名は……まあ、しょうがないよなぁ。

 村長の次女のミーティスさんは隣村に既に婚約者のアテがあるというし、女子に武力系スキルは当たり前のように好まれない世界だ。


 フィリスねーさんは……まあ、フィリスねーさんだし……

 そもそも成人してるからね、育てる余地はないだろうと全員納得してたからね。


 村には俺らよりも前にスキル確認を受けて、スキル持ちだと判明した人が数人、いるにはいる。

 サスキア姉さまもそのクチだ。


 だけど、サスキア姉さま以外の村人でスキルが出た人は、皆ちょっと年齢が高めで、育てられなかった、らしいんだな。



 なお、貴族というのは、基本的にスキルが出やすい。

 そういう能力のある人を優先的に血統に入れているから、だという。


「そういえばもう一人は村長の次女だったか……ああ、だめだな、もう縁談が決まっていたような」

 コルモラン男爵も思い出したように口にして、予約済みかぁ、とぼやいている。


 ……まさか俺への縁談じゃないよね?


「流石に無理じゃないですかね?ネースライド様とは年齢差がちょっと微妙な気が」

 俺が口を開く前に、トーテルからまさかのツッコミが入る。


 ああでも、ネース兄さまかあ。俺の八つ上だから……いやこの世界的には別に問題なくないか、そのくらいだと?


「……トーテルと言ったな。やはり其方、カークと一緒に学校に行きなさい。

 学習が面倒なら従者枠でもいいから」

 そして、突っ込まれたコルモラン男爵は、予想外なことを言い出した。


「この場でそこまで言えるなら、根性も座っていそうだからな。

 村で燻っているより、街の学校で見識を広めるとよさそうだ」

 あー、何となく、判った。

 即答しても怒られない話だって判断が早いから、そこを伸ばしたらどうだってことか。


 そうだな、そのセンは、俺も悪くない気がする。

 どっちかといえば、俺の苦手分野だし。


「トーテルが一緒に来てくれるとちょっと気が楽になるかも」

 正直、前世でも村でも浮いてる俺が、学校で浮かない自信なんて、ミリもないからな!


「親子で勧誘……そこまで言われたら行ってみても、いいかなあ」

 そして、トーテルは思ったよりさっくり俺の勧誘に乗ってきた。


 というか多分、トーテルのやつ、俺に誘われたかったんじゃなかろうか。


 そうだと、いいな。

せやで?^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ