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第6話 猫の謎、魔物の謎。

 さて、猫――聖獣ネフェルテム様は、普段は聖獣としての活動は隠していたい、らしい。

 なので適当な呼び名を寄越せ、と要求された。


「うーん、毛糸、糸、綿……コトン、とかどうですか」

 聖獣様に随分雑なネーミング?いやだって、隠したいなら雑な方がいいでしょ?呼びやすいし。


(悪くない。では我はこの村では当面、猫のコトン、だな)

 そしてネフェルテム様はあっさりその仮名を了承し、家についてきた。


「え?猫?いるんだ……?」

 そしてコトンを見たコニーかーさんの第一声は、なんか変だった。


「西の森からついてきました。名前つけちゃったんで飼っていいですか」

 ちょっと変に丁寧語が混じった上気持ち棒読みになったのは、かーさんの反応が変だったせいであって、俺の演技力のなさではない。ないったら。


「……カー君がちゃんとお世話できるなら、いいわよ。名前はなんていうの?」

「コトンって」

 かーさんは俺の要請をあっさり了承すると、教えた名前にもうんうん、と頷いている。


「コトンちゃんね。ミルクでいいかしら?」

「にゃ」

 そして、かーさんの問いに、キラキラ目で返事をするコトン様はちょっと猫らしく偽装するのを忘れていないでしょうか。


(いや、この世界の猫はこんなもんだ。自分で話しこそしないが、人語を解するのが普通だぞ)

 あれ、そうなんだ。


 ……そういえば、この村では犬は猟師のボブおじさんちにいるけど、猫はいないな?


「かーさん、なんで猫がいるのが不思議なの?そんな感じの第一声だったけど」

 コトンがミルクをちゃぷちゃぷ舐めているのを眺めながら聞いてみる。


「だって、猫って、この大陸では都市部の一部にしかいないレアなペットよ?

 西の森の方から来たなら、多分街から来た子ではないでしょうけど」

 村の教師役もやっているかーさんは、知識も豊富だ。


 かーさん自身も、よその土地から来た人で、この村に来る前には学校に通っていたクチであるようなんだけど。


 正直そこらへんは、大雑把にしか知らない。


 まあよく考えてみると、行儀見習いで男爵家に上がる『必要がある』程度には、いい家の子だったんじゃなかろうか。


 村から男爵家に働きに行ってる人は何人かいるけど、行儀見習い、として行くのは村長一家かその係累の人だけだもんな。


 そしてそれもかーさんが俺を身籠った一件以降は、沙汰止みになっている。

 手違いで娘を手籠めにされては困る、そうだ。ぐうの音も出ねえな!


 そんな我が家も、今はかーさんと俺だけの、二人暮らしだ。

 じーちゃんは俺が生まれる前に世を去ったし、ばーちゃんも、俺が三つの時に、西の森で迷って行方不明になって、それっきりだ。


 西の森というのは、国境沿いにある大きな森で、国境の向こうにも続いている。

 ばーちゃんは、うっかり境を越えてしまったんじゃないか、というのが周囲の人の結論だそうだ。


 この世界、実は国境をうっかり越えると、戻ってこれなくなることがある、らしい。

 森の中でも、ちゃんと国境部分には柵があるんで、見れば分かるようになっているんだけどね。


 ……その柵の何か所かは、壊れている。それは俺も知ってる。

 山菜とかワイルドベリーの類を採りに行くとき、その辺りまでは入るからな。


 直さないのか、と聞いたら、直しちゃいけない、のだそうだ。

 善きものが入ってこなくなるし、悪しきものが出ていかなくなるから、という説明が続いたので、どうやら、何らかのおまじない的なものであるらしい。


 で、この村の西の森の境界にあるのは、魔物の領域との境、だ。


 魔物の領域は、人間の国のような場所ではない、とされている。

 人のように偉い人が土地を支配したりはしていない、のだそうだ。


 ただ、領域侵犯には、凄く厳しい。

 帰ってこれなくなるのは、彼らに囚われるからだ、という説が一般的だ。


 まあ戻ってこないとされた人は、本当にガチで一生戻ってこれない、つまり今まで、行方不明になったら最後、誰も戻ってきていないってことだね。


 戻ってきていない以上、向こうで何があったかなんて本来判るはずがない。

 それがなんで魔物に囚われるって話になっているのか、というと、うちではない他所の国、というか隣の島、モスクモロルにそういう話があるんだそうだ。


 モスクモロル島は半分が人間の国モスクモロル、残り半分が魔物の領域なんだけど、昔、セレバンディア国から行方不明になったある人間が、モスクモロル国の海岸に漂着したんだそうだ。


 で、その人間が、この村の西にある魔物の領域に囚われていた、と語ったんだそう。

 まあ百年以上前の話なんで、ただの噂だ。


 ただその人間も、魔物の領域に囚われて、何をしていたのか、なんてことは殆ど語らずに死んでしまったらしい。


 その結果は……真実を話せない呪術というものがあるらしい、と、まことしやかに噂が流れ、そしてそれが、そのまま記録され、物語の形で本邦にも輸入された、という次第。


(そんなに間違った話でもないのう。呪術ではなく、普通に誓いを立てただけであろうがな)

 聖獣様がそんな風に解説をしてくれたけど、何それホントにあれ実話なの?


(事故で漂流し、うっかり反対の流れに流されてモスクモロルに至ったために回収できなかったものがおるとは聞いておる。時期的にもそやつであろうかなと)

 うわあ、聖獣様がガチの関係者だコレ。


 魔物の国とか魔物の領域とか人間は勝手に呼んでいるけど、もしかして:聖獣様関連の大事なエリアだったりする?


(いや?そういう訳でもない。

 我々から見れば、人も、魔物も、大差ない。それだけのことよ)

 そして聖獣様の回答は、なんていうか……ああいや、なんか、判ってしまったな?


 意思の疎通ができない種族、って、多分、建前だ。

 物語の本なんかに出てくる魔物は異形であったり人と違う部分を強調されているけど。


 うん、そうだな。人間はなあ。

 違うもの、周囲から浮くものには同族にも結構アタリがきつい、もんなあ。


 彼らが、距離を置きたくなったんじゃないかな。


 そして、それに対する回答は、なかった。

言語化するのよろしくない()

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