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第49話 囲ったのか、囲われたのか。

はい最終回です!時間がさらに飛んでます。

 随分と、旧帝国の土地には手こずらされたなあ、としみじみ思う。


 旧帝国の土地は、五代帝の時代以降、まともな農法が廃れてしまったらしい。

 建国の頃には、当時の最新理論でそれなりに成果を上げていたのにな。


 雑草すら碌に生えない土地ってのは、ホントに手ごわかった。


 神の力は偉大ではあるが、あまり積極的に世界に干渉するのは宜しくない、という事情もあって、そこまで大っぴらに改善には使えない、というのもあってね。


 神の力が濃くなりすぎると、異変が増えるんだという。

 俺の〈囲い〉を介して力を送っているのは、その辺の調整のためらしい。


「ゼロ通り越してほぼマイナスからのスタートでも、そこまで気を遣うんだな……」

「ネズミが出たからってエラン君の魔法を使ったりはしないでしょ?」


 ……確かにそれはそう。

 あいつの魔砲でトドメを刺すような相手は、基本大物だけ、だったね。


 つまり、世界の、帝国クラスの範囲の土地が、神視点だとネズミ感覚。

 こまめに分身を降ろして世間を見て回ってる分、この世界の神々は人間の感覚もちゃんと理解しているという話だけど。



 それでも、俺たちはどうにかやり遂げた。

 かつてエルフ族が述べたように、本当に百年掛かってしまったが。


 最終的に人間も入植した。


 ただこれは、母国セレバンディアからではなく、主にグウェンヴェランからの受け入れになった。

 というのも、五代帝の時代辺りに帝国から脱出した民の子孫がそれなりにいたからだ。


 この受け入れでも、シシェーリス確認官が大活躍した。

 いろいろ紛れ込んでいた怪しい輩を全部弾いてくれたんだよなあ。



 俺の子供たちは全員独立し、今はフランバル大陸を適当にほっつき歩いている。


 もともと天人族は、主神様の子孫でもある。


 天人族が流浪の民なのは、主神様の力の欠片を撒いて歩いている、という仮説をシシェーリス確認官が立て、フィリスも多分そんな感じ、と曖昧ながらに認めていた。


 全部で十二人のうち、エルフ族との間の三人以外が皆天人族になってしまったので、天人族ばかり増えるのも良くないのでは?ってなったりもしたが、元々フランバル大陸に殆ど天人族がいないのも考えたら、これでも最低限くらいだろうという話だ。


 シシェーリス確認官の娘はというと、これは普通の人間に育った。

 これまたとんでもない美女に育ったけれど、幸い良縁を得て、幸せな一生を送り、寿命で既に世を去った。



 レジュメイア大陸の方にも何度か里帰りはした。

 主に事務的な用事と冠婚葬祭で、だが。


 冒険者を始めた時の仲間は、皆鬼籍だ。当然だな、みんなは、普通の人間だったのだし。

 コルモラン家なんて、兄のひ孫が継いでいる。

 例の俺の領地だった場所は、数年前にアル兄の孫が爵位を継いだようだ。


 そうそう、人類が増えたので、こちらの冒険者組合も復活させた。

 実はこの組織、ヴァンレン国になる前に、初代二代、つまり俺らの前々世が立ち上げた組織で、帝国が強制解散するまでは、こっちに本部があったんだよ。


 発祥の地に冒険者組合を復活させるのは、シシェーリス確認官の悲願でもあった。

 あいつの前々世が、言い出しっぺだったからな。


「当時は、異世界知識で頑張るぞ、位の気持ちだったのですがね」

 そう、シシェーリス確認官は、前々世の段階でも、転生者だった。

 何度生まれ変わっても、記憶が消えないタイプ、なのだそうだ。


 結構しんどくないか?と聞いたら、やっぱりそれを聞くんですね、と、例の美貌で楽し気に笑われた。

 前々世でも、同じやり取りをしたらしい。


 俺はそっちはそんなに詳細に覚えていないからなあ。

 今だって、ずっと役職名付きの確認官、って呼んでしまうし。


 まあ今もその職にある以上、それはそれで問題ないはずだがね?


「そういえば、天人族って寿命どのくらいなんですかね?

 お年寄りがいらっしゃる以上、不老不死ではないはずですが」

 最近地元で作るようになったという酒を味見しながら干物をつまむ呑み会などしていたら、そのシシェーリス確認官がふと首を傾げる。


 相変わらずの美貌ですね。俺も外見は二十五、六くらいから変わらなくなったが。


「普通は二百年くらいね。あなた達は私と一緒にいすぎて、そこらへんがもう怪しいけど」

 そしてうちの奥さんは思いのほか神気駄々洩れタイプだったのか、そんなことを言い出した。

 勿論彼女もスタイル抜群の、幼い頃に初めて会った時のままの、大した美女のままだ。


 いや、俺に関しては予定通りなんだがね?

 シシェーリス確認官はなあ……こいつの加護もいつの間にか寵愛まで育っててなあ……


「なぜ加護がここまで育ってしまったのか……これ自体も神気の干渉なのです?」

「カー君の〈囲い〉を通して流していたとはいえ、神気にずっと触れていたわけだからね……でも、うち(オルデローザ)の眷属にはなれないタイプだから、ディクが自分の所に引き取る気なんじゃないかしら」

 ぼやきに対するフィリスの回答は、やや曖昧だ。


 いや、神官職ではあるけど、シシェーリス確認官は信仰心の強いタイプではないから、というのもあるんだろうけどさ。


「……そうですねえ、案外もう、その方がいいのかもしれませんね。

 千年物の記憶持ちとか、流石にもう転生しても、一般人類からは存在自体が浮きそうですよね……」

 ついに諦めの境地に達しているシシェーリス確認官だが、寵愛に進んでしまった理由は、別にあるんだよなあ……


 実は、こっそり、彼を美の象徴、ディクテラ女神の御使いとして崇める信仰が人間の間で出回っている。

 つまり、女神が彼を回収しないと、異端扱いにされてしまって立場がやばくなる方の話なんだよな……


 〈囲い〉をどこかに作って一世代くらい引き籠るんでも良かったんだろうけど。


 そろそろ俺らは見守る立場(天上)に移行する、それは既定路線だ。

 魔物の領域は既にどこも安定稼働しているから、もうこの大陸に問題は残っていない、多分。


 人類はこの地でも、もうちゃんと生活できる。

 俺たちの仕事は、無事完了、だ。


 地上を去る前に他国観光、なんてのもいいかもな。

 まだ、もう少し先の事だけど。


 膝の上のコトンを撫でる。

 ブラッシングがすっかりお気に入りになってしまったから、ブラシは安定して調達したいな。



 いろんなものを囲ってきたが、最終的には女神さまに囲われました。

 ……それはそれで、悪くない。

というわけで大団円。お付き合いありがとうございました。

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