第48話 『ねーさん』の正体。
神々の寵愛のその先は、眷属化だという。
まあ天人族自体の出自が、そもそも主神様たる女神オルデローザ様の子孫だという話なので、多分そうなっても表面上は案外何も変わらないんじゃないかな、と、隣の奥さんを見つめる。
「どうしたの?そろそろもう一人欲しい?」
ふふふ、といたずらっぽく笑う俺の奥さん、実は、女神様の化身。
化身というか分身、らしいんだけどね。
地上の天人族に分けた魂を降ろして、人類の様子を観察するのがご趣味なんですと!
そりゃあスキルを隠すも現わすも自由自在なわけですよ……
なおネタバレされたのは二人目の子供が出来た時。
普通じゃないのは知ってたけど、そんなレベルだなんて流石に想定してねえよ!
という訳で、俺たち夫婦が移住した時点で、かつて不毛化していた大地は、いずれ豊穣の地になるのが確約されてるって訳だ。
「欲しいといえば欲しいが、陸地に上がってからがいいな」
海の上でヤッちゃうと、海神の影響が出る説がございまして。
実際二人目の子供、ドゥーチェは海神様の影響が出たらしくて、青い髪に青い瞳なんだよな。
髪色の変異は天人族にも人類にも普通によくあることだそうで、ああ、海神様の加護が付いたんだね、で済まされたけど。
その判定をしてくれたシシェーリス確認官も、今回一緒にこの地に来ている。
但し、その目的はもう、俺のかーさんからの逃避ではなく。
「ほうら、ラクシェリア。ここが新しいおうちになる土地ですよ」
「はい、とうさま!」
セティの二人目の子と同じく今年五歳になる、実の娘連れ、だ。
なんと、突然変異だったという彼の綺麗な銀髪が見事に遺伝して、大変愛らしいお子様だよ!
ただ、この子の母親は、既にこの世にいない。
ほんの数年前にお見合い結婚したばかりだった奥さんは、ターミガン伯爵家、つまり学校時代のベティ教官の実家の縁者だったのだけど、大変な難産で、子供しか助からなかったのだという。
そのせいもあって、シシェーリス確認官は、すっかり娘にメロメロの溺愛系パパさんになってしまっている。
なお乳母はうちのセティでした。あんなんでも、一番安心して任せられる、そうだ。
あ、この世界、神官職でも結婚は普通にできます。問題ないそうです。
そりゃそうだよな、分身的なあれとはいえ、女神様が今なう人妻やってるんだしな。
「トーテル君も連れてきたかったですねえ」
ぼそり、と、シシェーリス確認官が呟く。
「無理だろ、あいつ王都の学院で引っ張りだこだっていうぞ」
トーテルは、スキルの読み替えの件で、教会と王都の大学院からそれぞれ激しい勧誘合戦を受けた結果、今は王都で研究者をやっている。
その功績で法衣とはいえ叙爵されたうえに、王家の傍系の姫君を嫁に貰ったらしいよ?
俺たちは、王都の方には俺の叙爵の時にしか行ってないから、それ以上の詳細は噂でしか判らないんだけど。
田舎のド農村の粉挽きの息子、大出世だ。
俺たち一行の中で一番身分が変わったのがトーテルだよね。
なお、俺の親父殿、前コルモラン男爵には、あいつを学校に送ると決めた理由は、結局聞き損ねた。
兄上曰く、父は人を見る目が異様に良かったように思う、という話ではあったけど、既に親父殿も寿命であの世、真相はもはや謎だ。
スキルといえば、シシェーリス確認官がスキルで転生者を見分けることができる、という話もあったな。
転生者の神授スキルだけは、この世界の文字じゃなく、日本語の漢字とひらがな、もしくはカタカナで書かれているんだってさ。
俺も他人のスキルを知る能力はあるけど、育ててまではいないから、どういう記述がされているかまでは、自分のも良く判らないんだよね。
使い方自体は詳細に判るから問題ないし……
天人族が大きく育てる事ができる能力って、二つまでだそうなんだ。
俺の場合は【内なる力】と、身体的な頑健さになったようだ。
【内なる力】は意図的に育てたんだけど、そういや、子供の頃から病気にかかったことがないし、怪我もろくにしたことないんだよね、俺……
あ、スキルは別枠だよ。あれは誰でも、持ってさえいれば育てる事ができるので。
(皆様、お待ちしておりました)
(あっぱぱだー!クーちゃんもドゥーちゃんも久しぶりー!)
港では、現地妻みたいな存在になっちゃっていた、エルフ族の嫁、ククレルシェレルが、下の娘のシャラミミシェハルと待っていてくれた。
今日からは彼女とも起居を共にすることになるそうです。
まさかのハーレムライフだってよ?マ?
尚エルフ側のもう一人の子供、息子であるクーンロウはもう独立して、旧帝国奥地の先遣部隊に混ざって働いている。
年齢差が十年ちょっとあるんだよ、エルフ組の子供たち。
エルフ族、女系家族だもんでか、女性の名前がやたら長いので覚えづらいんだよなあ。
それ以外は、本当にいいヒトばかりだし、気楽に付き合えるんだが。
(それでですね、獣人族のヤムシェがまた求婚に来ているんですよ、どうしましょう)
獣人族のヤムシェさんは、エルフ族がいけるならうちだって!という割としょうもない対抗意識でもって俺に求婚してくる、コアリクイという種の獣人さんだ。
だが済まない、割と節操なしの繁殖形態だと俺も思う天人族だが、獣人族とは子はできないんだってよ。
これはコトン情報だから多分間違ってない、はず。
「生態的に無理だから、どうしようもないんだよなあ。
でも獣人族も不思議だよね、親子兄弟で結構見た目が違う」
(あれは彼らの中でも最大の不思議だそうなので……)
成程、獣人族自身もよく判ってない、か。
まあ彼らも見た目は獣としか言いようがないが、内面は人類と大差ないといえば大差ない。
見た目と無関係に原則雑食性なのも同じだし。
ただヤムシェ嬢のようなアリクイ種のように、外見が理由で食事選択の幅が狭い人も、いないではない。
彼女の場合、対抗意識の裏には、その食性の都合による食い扶持に困って、ってのがあっての行動だろうから、その辺をどうにかしてやれればいいんだろうけども……
まだまだ、考えることもやることも多いのが、今の俺たち、なんだよな。
頑健が育った理由?かーちゃんのハグだが?
なお獣人族は音声言語は使用できない念話オンリー種族。声帯が無理。




