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第42話 真のスキルの使い方。

スキルを鍛える、ホントの理由。

 そこに、トーテルが普段あまり見ないガチめの真面目顔でやってきた。


「カーク、神官様、あの外で騒いでる奴は討伐対象?」

 こういうとこ、冒険者らしくなったなあ、トーテルも。


「この大陸にはあの船団に隠れて付いてきただけで、討伐依頼自体は出てない可能性?」

「アレに付随していた時点で討伐対象ではないですかね、人類に倒せるならですが」

 そういやそのへんどうだっけ?と首を傾げたらシシェーリス確認官からツッコミが入った。


 そう、亡霊の類も当然アンデッドだ。多少変質はしているようだけど、物理攻撃は効かない。

 エランが起きてればワンチャンあるかなあ?

 でもこの暴れ方だと一、二発だと倒せないよなあ、多分。


「足止め、できる?」

「やってみないと判らない系だな。

 船団は幽霊船なりに実体のあるクチだったから行けたが……」

 スキルが【内なる力】を使用して展開するものである以上、【内なる力】と対消滅に近い反応をする亡霊系は囲える、気はするんだが。


「恐らくいつもの物理障壁ではなく、所謂バリア的なものを連想すれば、あるいは?」

 シシェーリス確認官の言葉に、成程、ここが前世知識の使いどころか、と感心する。


 俺、今回の人生、勉強の進捗以外で全然前世の記憶活用してねえもんなあ。

 ゲームの魔法知識?

 この世界の仕様が特殊すぎて、地道に鍛える以外やることなかったからさ……


「やってみるが……トーテル、策はあんのか?」

「倒すのは無理だけど、弱体化、かな?なら、多分」

 相談していたところに、エランとアル兄もやってきた。

 モードゥナがいないのは、スキル持ちの方がこの種の気配に鋭敏だからだろうか。


 なお城内も既に大騒ぎになってるので、起きない方がどうかしているんだが。


「本体がどこにあるか、僕では判らないから、いつもの足止め頼りですね」

 エランもこちらに来るなりそう述べる。

 サスキア姉さんに着せられたのか、随分もっこもこに着込んでいるので、普段より丸く見えるのがなんだか微笑ましい。


「モードゥナはフィリスねーさんに酔い潰されてぐだってるんで置いてきた」

 アル兄が、モードゥナがいない理由を簡潔に述べる。


 ねーさん、なにやってんすか……

 いや、晩飯は亡霊船団討伐祝いで酒宴だったから、シラフの俺たちの方がレアだが。


 なおトーテルは一滴も飲めない、村でも珍しいアルコール耐性なしなので、食事だけ貰って退散していた組、天人族勢は人類よりシンプルに酒に強いので、付き合い程度だと酔った気分にもならない、アル兄は妊娠中で飲めないミーティスに付き合ってシラフ、だ。


「まあ起きてても気色悪い亡霊の見学以外やれることはないからなあ。

 んじゃいくぞ、〈囲い〉」

 何となくあのへんだな、とアタリを付けた場所に、悪霊を封じる結界をイメージして〈囲い〉を発動する。


 途端に周囲が静かになり、白っぽく光りつつ空中に伸びる、円筒のような囲いの中でだけ、何かが暴れている、そんな感じになる。


 空中にいるものを地上から無理やりスキルを生やして筒状に囲ったから、暴れ方もやたら上下運動が激しくてちょっと笑える。


「結構抵抗力が強いな。長時間は厳しそうだ」

 予想はしていたが、当然のように激しい抵抗がある。

 余剰の【内なる力】を突っ込んで、押し留めるが……うん、長くはもたんぞ、これ。


「じゃあ、一発キメるぞー!還元……いや、〈元ニ還ス〉!」

 そして、トーテルは自分のスキルを読み替えて発動する、という、多分俺が前々世から合わせても、見た事のない気がする技を繰り出してきた。


「ナニソレ、読み替えなんてできるの?」

「多分スキルによる!」

「確かに、表音文字オノメー交じりで書かれたスキルを読み替えるのは、恐らく無理でしょうからね……」

 思わず質問したら、シンプルな回答に、業務上、スキルを見慣れているシシェーリス確認官の解説が付いてきた。


 そんな解説を耳にしつつ、囲いの中を観察する。

 トーテルのスキルも、ある程度減衰はされるようだが、それでもこっちに来る抵抗が一気に減ったのが判る。


「もう一発!〈元ニ還ス〉!」

 そういやトーテルも、育たないスキルだろうと言われながらも、日常で便利に使える面を見出して、マメに使い続けていたから、スキル熟練度も【内なる力】も結構高いんだよな。


 多分今、奴がやっていることは、その熟練度と【内なる力】、双方がなければ、できないことだ。


 この世界のスキルは、熟練度を上げないと碌なことができない。

 だがそれは逆に、熟達さえすれば、育たない判定のスキルですら、化けるスキルが大半だということでもあるのだ。


 前男爵がそんなところまで考えて、トーテルに学校を勧めたのかまでは判らない。

 ……いやまあ後ろで見てるはずだし、後で聞けばいいか。


 トーテルのスキルは、どうやら暫定シュライクが取り込んでいた怨嗟や断末魔のようなもの、それらを剥ぎ取り、『元の場所』に還している様子だ。


 解き放たれたものは、ふわりと漂っては、どこかに消えていく。


 そして、三回目の全力のスキル行使で、トーテルがガス欠した。

 但し、暫定シュライクの亡霊の方も、殆ど本体だけと思しき状況になっている。


 というか、これもうシュライクじゃないな。シュライクのガワも引っぺがされて、元の状態に戻された本体だけが、そこにいる。


 囲いの中でそれでも抵抗を試みているそれには、前世のどこかで見おぼえがあるな、と思う。


「……なんとまあ、牛鬼、ですか」

 ああ、なんか有名な妖怪漫画かなんかで見たな?牛の頭に蜘蛛っぽい胴体の、アレ。


 言われてみれば、確かにそんな風にも見えてくる。

 時々姿がブレるのは、多分数多の伝承を取り込んだものだから、じゃなかろうか。


 つまり、こいつも元々この世界のものじゃない。

 俺やシシェーリス確認官の前世がいた、あの世界からのもの、だけでもなさそうではあるんだが。


「このくらいなら二発でいけそうですかね……〈天与の魔砲〉」

 酔いが残っているのか、少し眠そうな声のエランが、言葉通りに、明け方の最初の光を利用して二発の魔砲を撃ちこみ――


 ――推定牛鬼は、跡形もなく消失した。


 ホントに人類の魔法でも消し飛ぶんだな、ああいうの……

実際には自分の知識内にあるそれっぽいものを当てはめて視覚化しているだけなので、牛鬼って訳でもなかったりするが、どうでもいい情報なので……

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