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第36話 元チャラ男、今チャラ子?

 サスキア姉さんのお古の子供服が丁度よいサイズだった御使いの少女は、名を名乗らない。


「元の名が使えないんですぅ。性別、変わっちゃったしぃ」

「それはいいが、もうちょっと普通の言葉遣いにはならんのか」

 思わず文句を言う。

 あざとい系狙いっぽさがキツくて、なんかイラっとするんだよ、こいつの喋り方。


「えぇ……あの世界の一般男性はこういうの好きだって調べてきたのにぃ」

(嘘つけ、お主は昔からチャラい喋り方しかできないタイプじゃろうが)

 少女の言葉に、コトンが辛辣だ。

 うん、コトンさん、ずーっとイカ耳でねえ。それはそれで可愛いんだけど。


「なので主様に名前を付けて欲しいんですぅ」

 と言われたものの、俺、仕えられることを承諾しておりませんが?


(いや、流石に我らが主神様から遣わされた者ゆえ、追い返すわけにはいかんぞ)

 自分自身は全力で塩対応してたのに、コトンが酷い事を言う。


(そりゃあ、我は奴とは同格だが、其方はそうではないからなあ)

 ……はい論破されました。しゃーないなあ。


 この御使い(各種制限中)は、元の名は制限されていて、現在知ることすらできないようで……


「んーじゃ、セティって呼ぶか」

 呼び名というなら、まあ適当でいいんだろう、と、思い浮かんだ女性名っぽい名を口にする。


 それを聞いたシシェーリス確認官が、うわぁ、って顔したの、なんでだろう?

 きょとんとしてたら、うわあ顔は、溜息に変わった。


「ああ、ご存じないんですね……ならば問題ないでしょう、多分」

 なんすかそれは?と思ったものの、俺以外のほぼ全員がきょとんとしているので、現状この場で突っ込むべきではなさそうな感じ。


(なんじゃなんじゃ?この世界とは関連のなさそうな名称だというのに)

 コトンまで首を傾げているんじゃ、シシェーリス確認官本人に確認するしかなさそうな感じだなあ?


「はい、今日からわたくしはセティ、ですね、今後宜しくお願いいたしますぅ、ご主人様」

 そう復唱した少女――セティは、改めて俺の前に跪く。


「う、ああ……取り合えず今日はメシでも食っとけ。細っこいちびっ子見てると、なんか不安になる」

 これは今世での経験ではなく、前世から来る忌避感だ。


 中学の同級生に酷い拒食症を患った子がいてさ。

 結局卒業する前に、亡くなってしまったんだけど。


 何の因果か、俺が丁度クラス委員なんてやってた頃だったから、見舞いに行ったりしていてさ。

 細すぎる手に、無理やり刺された点滴、なんてものを見せられてさあ……


 最初は自分の意思でのダイエットだったのに、やり方を間違え、自分では吐き戻しを止めることができなくなり。


 どれだけ痩せても、衰えても、まだ足りない、骨が太い、などと言い続けていた彼女は、何かが壊れてしまっていたんだろうか。


 ああ、随分久しぶりに思い出してしまったな。

 前世ではたまに夢に出てきてたけど、こっちでは思い出したりなんて、しなかったのに。


 まあ、だからって訳じゃないだろうが、俺は健康的にぽっちゃりしたタイプの女性のほうが好み。

 コニーかーさんはそういう意味ではまあまあ理想的かな、あくまでも俺にはかーさんでしかないけどさ。


「ご主人様はぽっちゃり好み?」

 俺たちも朝飯タイムになったんで皆で食堂に移り、早速貰ったごった煮スープをうまいうまいと食べながら、セティが聞いてくる。


「健康的であれば体型に拘りがない、のほうが近い。そもそも、見た目より中身だ」

 この世界では不健康に太ってる人を見ること、あまりないな、そういえば。

 まあ人間、見た目より中身だよ。


「ほー、もう少し脂肪付けようかしら」

 そして何故かフィリスねーさんがそんなことを言う。


「え?ねーさんはそれで理想の体型なんじゃないの?」

「あらそう?なら現状維持でいいか……」

 そして一言で前言を翻すねーさん。まあいつもの事と言えばいつもの事だ。


「カー君って女心判ってないよね」

 なんかモードゥナが酷い事言ってるけど、そもそもセティはそういう対象では全くない以前に完全に論外だぞ?俺、ロリ趣味ねえもん。


 フィリスねーさんも……

 ん?ねーさんは、どうなんだ。昔っからやたら絡んできた隣人ではある、が……?


 でもあれだな?

 これまでにかーさんとシシェーリス確認官に聞いた天人族の習性から推測すると、特に俺の事はその手の意味ではなんも思ってないやつなのでは?


 思い返せば、フィリスねーさんからの扱いは、常時『お隣の被保護者の少年』だった気がする。


 実際学校を卒業するまではまさに被保護者だったから、当時は、その立場だったことは疑いようのない事実だろう。


 顧みて、学校を出てからはどうか。


 これが、あんまり接触してないんだよねえ。

 お互い真面目に仕事してると、仕事場所が合わないんですよ、ランク違いだと。


 せいぜい、俺が帰省する時期には必ず、ねーさんも居酒屋の手伝いをしている、くらいだけど、それも基本的に帰るのが収穫祭で店が忙しい時だから、つまり、ただの必然だ。


「お、青少年様が悩んでるぅ」

 そんなことを思い返していたら、セティが要らんことを言い出した。


「青少年ってなんだよ、少年って歳じゃねえぞもう?」

 ハタチは!この世界では一人前の立派な大人だってばよ!


「神獣様や御使いの方は見た目で年齢が判りかねますが、寿命があるという話は聞きませんからねえ、長命種目線というものでは?」

 シシェーリス確認官に指摘されたものの、どうもこのセティにはそういう感じがしない。


 コトンやモンタン氏は、ちゃんと年齢を経た立派な聖獣様、神獣様に感じるんだけども。


(其方が名付けた時点でカウントが変更されている気配はあるが、そやつは我より年上だ)

 へ?コトンより年上?マジ?


 だめだ、御使いの生態が、全く判らん。

 そう呟いたら、シシェーリス確認官に、我々教会に属する者でも判らないです、と言われた。


 それもそうか……

年上年下といっても、多分一時間差くらいだし、第0話の時点ですでに立ち位置は逆転済み(ネフェルテムが上司枠、別に統括とかはしてないけど)。

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