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第35話 新たなる乱入者?

ホントはもうちょっと早く出したかったんだがこのタイミングになってしまった。

「ぴゃああああああ!?」

 翌朝いちばんに、城砦に未知の声による悲鳴が響き渡った。



 うん、昨夜は元パーティ全員、城に泊めて貰ったんだけどもね。

 エランがサスキア姉さんの婿になる件も無事認められたことだし。


 どうもやはり、メレニア夫人が懐妊できる体調になるのに、もうしばらく掛かるらしい。

 幸い、無理だという話ではないそうだが。


 結婚してから、これはよろしくないのでは、と、基礎体力を付ける、子供向けの訓練から少しずつやり始めていて、婚姻当時の、事あるごとに貧血と体力不足で倒れる、という状態に比べたら各段に健康になってきているそうだけど、母体に負荷のかかる妊娠はまだ避けた方がいいという話だね。


「多分あの方、フランコリン家の方だと早死にしてた気がするなあ」

 身も蓋もない事を言うのはアル兄。


「あー、確かにあっちには不健康な人もしくは子供向けの運動マニュアルなんてないよなあ」

 それに同意したのはフランコリン領にも親の仕事の付き合いで何度か出向いて知っているらしいモードゥナだ。


 弱小領であるコルモラン男爵領では、領民皆兵の可能性、として、村人にも子供の頃から基礎訓練が行われている。俺やトーテルも受けたアレだ。


 俺はそれが当たり前であるクレトス村で育ったから、そんなもんだと思ってたけど、規模と人口が多い大き目の貴族領ではそうじゃないと知ったのは、それこそ学校に行ってからだ。


 その話は、じゃあメレニア様は理想の婚姻先を得たんだね、で終わった。

 本人も現在のところ、運動できること自体が楽しいらしいので、ウィンウィンって奴だな?



 で、話は悲鳴のもとに戻る。

 慌てて夜着の上に外套だけ引っ掛けて声のもとに駆け付けたら、沖ノ太夫(モンタン)氏が、見た事ない子供……多分少女、を踏んづけていた。


「おはようモンタン、どしたのその子」

(急に吾輩の寝床に潜り込んできたので取り押さえた。吾輩は雄故、卵なんぞ抱いとらんのに)

 憮然とした様子でそう述べるモンタン氏は、最近ではすっかり物見塔の一つに藁編みの寝床と屋根付きの小屋を設えて貰って、この城を拠点にしている。


「ち、ちがうっすぅ、寒かったんで、もふっとしたところに潜りたくてぇ」

 そう述べる少女のようなものは、ライムグリーンのくるくる髪はぼさぼさだけど、顔つきはかなり愛らしい部類だ。


 まだ子供らしく、体型はつるぺただな。手足も細いが、食べるに窮しているという感じまではしない。


 ただ、服装は晩秋である今の季節に合わない、露出度の高めな薄物だ。

 ……ってかそういう薄地で手足が丸見えで、ブローチとベルトサッシュで打ち合わせて留めてるだけ、って服は、この世界だと教会の宗教画でしか見た事ないんですが?


 いや、前の世界でも漫画か宗教画でしか見ないやつだよコレ。


「……えぇ……御使い様……?」

 俺たちの後ろから優雅な歩みで現れたシシェーリス確認官が、呆れ半分、驚き半分の声を上げる。


 御使い様?えーと、元世界で言う、天使的なアレ?

 いや、あっちの宗教画によくあった翼を持つタイプは天空神ディクテラ様の御使いだけのはず。


 なお翼を持っているからといって、鳥類がディクテラ様の眷属とは限らない。

 モンタン氏は沖ノ太夫(アルバトロス)という海鳥で、副神にして海洋神カレルドラ様(男神)の眷属だよ!


 それはさておき、神官であるシシェーリス確認官に御使い認定された少女っぽい何かだ。

 うん、御使い、の時点で少女かどうか、だいぶ怪しい。


(……?いや、今踏まれているソレは少女で合っているが……こやつ、以前はおなごではなかった気がするがのう……?)

 そして、コトンからは、どうやら知り合いである、らしい言葉が……おなごでは、ない?


「とりあえず逃げない暴れないって宣誓して。でないとモンタン氏どいてくれないよ、多分」

「しますしますぅ!そもそもここが目的地なのにそんなことしませぇん!」

 とりあえず取り押さえたモンタン氏が困惑してしまっているので、足を退けるための条件を指示してやる。


 二つ返事で宣誓されたので、モンタン氏はふわりと宙に浮かんで、少女を解放した。


「あいたたた、人間系ボディ割と貧弱ぅ。

 えーっと、カークライドさまー、ボクの事覚えてないかもだけど、お仕えに来ましたぁ」

 そして、立ち上がるなり、俺の前に跪く少女。


 はい?


 ……って、この妙にカルい口調、まさか、最初にカッコイイを聞き損ねた、あいつか?!

 あの時は男の声だったじゃん!


 ……いや、コトンも言っていた、こいつ女じゃなかったはずだって!!


「カーク君の関係者なのですね?」

 シシェーリス確認官に問われて、思わず首を傾げてしまう。

 いや、当時の経緯は今もバッチリ覚えてはいるんだけどさ、女子の姿でってのが、悪い予感しかしねえんですわ。


「そんなぁ!ネフェっち擁護してよぉ!」

(お主は普段からやたら煩いから……)

 そして本名はネフェルテムという、うちの猫コトンさんも、やかましい奴は嫌いだ、とイカ耳で完全塩対応の構えだ。


「あー、まあ、何となくですが、把握はしました。

 御使い様、そのご衣裳はこの季節には向いておりませんし、少々目の毒です。

 女性体なのですから、もう少し慎み深い衣装を選んでいただけると幸いです」

「え?あ、今変更機能とか使えないんで何か貸して?」

 罰でいろいろ機能制限されちゃっててぇ、と、シシェーリス確認官の助け舟に、やっぱり軽い調子で答える御使い。


「このサイズであれば、私の子供の頃の衣装でよかろうか」

 これも押っ取り刀で駆けつけてきていたサスキア姉さんがそう述べ、侍女さんの一人が衣料品の保管庫へと小走りで向かっていくのを見送る。


 まあ御使い様、の時点で人類としては本来なら丁重に扱わないといかんので、そっちの対応が普通なんだ。


 俺が個人的に嫌だなあとか思ってるのは、多分俺が転生者だから、じゃないかねえ。

 元の世界でも今でも、信仰心ってあんまないからなー。

台詞がない人たちも一通りいる。そのくらいデカイ声だった。

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