第34話 告白と謝罪と加護。
「実は、かつて、コニファー嬢に対して、男爵を身代わりにしたのは、私なのです」
一旦軍議的なものを終了してから、個人的な話がある、とシシェーリス確認官に呼び出された途端、そんな風に言われて頭を下げられたんですが。
つまり、シシェーリス確認官は最初からかーさんが彼を狙っていたのは承知していて、そういう奇策に出た、と。
「っつかあれ、なんで女性側が夜這いを掛けるなんて話に?」
「天人族の習性のようなものですね。圧倒的に女性が多い種族なのですよ」
なので、数少ない同族男性は、そういった形で狙われやすくなるのだと。
ああうん、その話、そういえばかーさんにも聞かされましたね、最後に会った時に。
その時は、自分も気を付けろ、と言われた気がする。
俺には他にも女性関係では気を付けないといけない事情があるから、そっちは話半分くらいに思っていたんだが……
「まあ俺は今の生まれと育ちには満足してるから、貴方に謝られる必要は感じないかな」
これは本心だ。
なんだかんだで前男爵は、その立場をも考慮すれば、最大限にいい親父であったからな。
生活に不自由はなかったし、学校にも行かせてくれたし。
「まあそこは、私の気持ちということで?」
そう述べて微笑むシシェーリス確認官は、幼少時と変わらぬ美貌の男性で。
天人族だからって顔の造作に恵まれるわけでもないのは俺が証明してるけど、なんだか顔面格差が激しいなあ。
ちなみに、俺が暫く前から他人のスキルが何となく把握できてしまうの、これも天人族の仕様、らしい。
シシェーリス確認官の場合、スキルではなく、この天人族の仕様部分を鍛えて、確認官としてモノになるところまで育てた、のだそうだ。
そんな感覚的なところまで育成できるのか、天人族……
でもそうか、ナイトホーク家という、この国の貴族でも格別の名家から、いかなる内容であろうとも、『スキル持ち』が出ていけるわけないもんなあ、そこは納得した。
なお、今回コルモラン男爵領に来たのは、コニーかーさんが旅立ったという情報を聞きつけて、なら当分ここいらには戻ってこないだろう、と、避難しに来たのだそうだ。
で、俺が生まれた折の経緯でそこら辺の事情も知っている前男爵が受け入れた、と。
つまり、まだ狙われてる可能性、ゼロじゃないのか。
うん、俺も今更妹や弟が増えて欲しくはないし、協力するか……
「そういえば、教会としては、亡霊ってどういう扱いなんです?」
転生者に関してはまあ置いておく。
男爵親子が知らなかった時点で、公には認知されていないもののはずだし。
「亡霊、と単語を指定する場合は、所謂怨霊、悪霊の類ですね。
……っと、貴方も転生者である前提で話をしてしまいましたが」
シシェーリス確認官が今更なことを言うので、軽く頷く。
も、と言ってる時点で、彼は自分もそうであることを俺に隠す気はないからな。
相手が隠すなら合わせるが、そうじゃない場合もまた同様に、だ。
「もとは隙間ゲーマー系リーマンなんで知識は偏ってるが、一応」
「成程、とりあえずあちらの世界式のお祓いの類は原則無効です。
神々の力に頼る系はこちらの世界の神々に対応できれば、という条件付きで、有効だそうですが」
ほうほう、ホラーゲー系統のあれもだいたいだめ?
いや、ゾンビ系がいるのかどうかで変わるか、それは。
謎を解く系ホラーはもともと苦手なんだよなあ、隙間時間向きではないし。
シシェーリス確認官の前世は、神主の息子、だそうだ。
転生時の特典を選べたクチで、容姿で酷い目にあったので、スキルは要らないから顔がいいようにしてくれって頼んだらやりすぎ状態になった、らしい。
「過ぎたるは及ばざるがごとし、というのを実感しましたねえ」
(ああ、其方ディクテラ様の加護を得ておるな……それは……)
そこまで黙って話を聞いていたコトンが、シシェーリス確認官にそう告げつつ語尾を濁す。
ディクテラ様とは、この世界の天空神で女神。主神様の長女とされている方だ。
天空の光を統べる、美しいものを好む女神様、だって。
「ええ、そうなのですよ聖獣様……」
そう述べてシシェーリス確認官は溜息を吐く。
成程、そんな仕草のいちいちも、美しいな。
転生者であろうとなかろうと、神々にその在り方を気に入られたものには、加護が付く。
加護をくださった神の資質やその神の好むものに強い補正が付くのが、この世界の加護だ。
俺?コトンが派遣されている時点で、主神オルデローザ様の加護付きだよ!
この世界の大地を司る大地母神様でもあるので、俺のスキルが接地属性をきちんと満たせば破格の性能になるのも、そのためだ。
シシェーリス確認官は、確認官としては技芸神スティレジア様の教会に所属している。
これは加護と信仰は別でも原則問題ないし、親愛以上に昇格したくない場合は別の神を奉じるべき、という制約の為でもある。
そう、実は加護は進化する。
だって俺自身、今のランク、親愛だってコトンが言うし……
これは主神様のお眼鏡に叶うようなスキルの使い方をずっとしていたから、だ。
よーするに、コトンと暇を見ては遊んでたのが加算対象って訳だな!
神様とて、自分の身内に優しく構ってくれる者には愛想がよくなるっていうのは人と変わらんらしいなあ。
(それもあるが、最初に其方相手にやらかした者がおろう?アレの件もあってな)
コトンはそう述べるけど、普段は存在すら忘れてるから、もうそこは気にしてないぞ。
結果として、おいしいところを持っていける、多分カッコいいスキルには育ったんだし、さ。
その時は、そんな感じで軽くコトンの言葉を流していたんだけどねえ……
加護→親愛→寵愛→眷属。




