表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/33

第26話 戦とは凄惨であるもの。

はい残酷描写回です。あんなやり方で回避できるわけないですから。

 当日は、一応救助を求める人間がいれば回収する、ということではあったんだが……


 フタを開けたら、そんな人間は居なかった。

 潮が引き気味になった段階で乗り込んだ、もはや動かない船舶にあったのは、自害したらしい死体、斬り捨てられた幾人かの死体。


 そして、半分がた沈んだ船の、漕ぎ手部屋で累々と重なる、鎖に繋がれたまま溺死した、恐らく奴隷労働力であっただろう人々の死体。


 全てが、死に絶えていた。


 沈んでいない船の奴隷たちも悉く斬り捨てられていて、この種の事態に初めて遭遇する俺たちのパーティは、見事に揃って海に魚の餌をくれてやりに行く羽目になった。


 いや、エランは甲板上の死体を見た時点で気絶リタイアしたし、状況から目ざとくこれ以上踏み込んだ場合の予測を立てたらしいミーティスは、エランを介抱するといって離脱してたから、船倉の惨状までは見ていないけどな。


「いや、予想はしていたが、きっちいな……」

 ひとしきり海に胃の内容物を放出してから、モードゥナが力なくぼやく。


「情報らしい情報を持ってもいないであろう奴隷まで皆殺し、か」

 渋い顔で、でもやっぱり口元を拭っているアル兄の声にも力がない。


 俺ですか?朝食全部海にリバースしたに決まってんだろ。

 前世でも今生でも、こんな殺戮現場なんて見た事なんかないよ!


「それでも甲板に出るまで吐くのはこらえたんだから、君らは十分、肝っ玉座ってるわよ」

 そしてこちらは平然とした顔のフィリスねーさんだ。


 なおフィリスねーさんも最初にこの種の現場に出たときは吐いたそうなので、修羅場の数を踏んでいる、という奴らしい。


 っつか海事にも出動してたんですね、ねーさんも。


 粉砕された船がいくつもあったから、海岸にも、去年とは比較にならない数の、大量の死体が漂着した。


 ただ、鎖に繋がれていた人たちは船の残骸と共に沈んでしまったようで、こちらは純粋に船員または軍人っぽい溺死体ばかりだ。


 手足だけとか頭だけ、なんてのが混ざってたのは、かーさんの初撃、あとエランの魔法でも一隻あった、火薬庫が爆発した船の船員だった人間だろう。


 俺の壁にぶつかった連中は、火薬に火花が飛ぶ前に浸水したようで、爆発音は聞こえなかったしなあ。



 ともあれ、俺たちがそんな奥まで、見たらこうなると自分たちでも予測して足を踏み入れたのは、全てではないにせよ、これを成したのが自分たちだから、だ。


 やったことを見届けるのは、人を傷つける力を持つ者の、義務だろう?


 少なくとも俺はそう思っているし、モードゥナとアル兄も賛同はしてくれた。

 元々普通の村人だったトーテルを巻き込んだのはちょっと申し訳ないけど。


「そうか、下の兄貴もこんなことしてるんだな」

 でも、上の兄さんが水車番の跡継ぎで、二番目の兄が兵士として正規に就職しているというトーテルは、ゲロ仲間にこそなったけど、その後は思いのほか平静だった。


 実際、農民と水車番やら猟師やら、細かい仕事を持っている人たち以外の就職先はコルモラン男爵領の兵士が多いから、身近に海戦経験者がいない家の方が稀だものな。


 それこそ他所の土地から来たうちと、居酒屋くらいじゃないだろうか。

 今となっては俺とフィリスねーさんが経験者になったんで、村にその種の職と関わりない人間、いないな……



「しかしこの撃破規模だと、海も浚わねばなりませんか」

「そうですなぁ、流石にこの規模が沈むと、海が汚れますからなあ」

 コルモラン男爵親子とエルロス王子が、完全に平常モードで浚渫(しゅんせつ)の相談をしている。


 なおここはまだ敵船の上だ。

 そう、男爵親子と王子様も、いちばん安定して浮いている船に乗り込んできたんだ。


 俺と同じ理屈でね。

 まあ俺の理屈自体が男爵から学んだものだから、ある意味当然ではあるんだが。


 これは流石に人の手には余るのでは、と思っていたら、どうもそこらへんで便利なスキル持ちがいるらしい。


「カークライドと申したか、あの囲いというスキル、海水を取り除くように囲うことはできるかね?」

 はい、俺でした!まさかの王子様から直接ご指名だよ!


「除外指定は試したことがないので断言はできないですね……」

 だが、試す価値はあると思う。

 さすが王族のヒト、一回見たっきりのスキルの応用を思いつくなんて、発想力いいなあ。


「カークのそのスキルって、制限事項はあるの?」

(カド)を付けられないのと接地が必須なのと、完全に囲わないとダメ、くらいかな」

「うわあ、三つも制限あるとか神授レベルじゃないですか」

 フィリスねーさんの質問に答えたら、まさかのその王子様に神授バレしましたね……


「コニーの息子なのだから、さもあらん」

 だけど、前男爵はそんな一言だけでさらっと流し、王子様まであっそうか、って顔になりました。


 ……ちょっとまってどういうこと?

 でかいとはいえ石ころ一個で船一隻撃沈するだけでも大概なのに、うちのかーさん、まだ謎があるの?


 いや、むしろ前提条件の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って段階で、なんかないとおかしかったね。

 そんでもって、俺、この人の息子なんだよなあ……


 今日は一旦陸に引き上げて解散だ。

 褒章なんかは後日、その前に浚渫だけども。


 倒れたエランのアフターケアもしなくちゃならんよな、多分。

 恐らく人間の血を見るのがだめだろうって話は前からしてたから、そこまで根深いダメージになっていないといいけど……


 でもあいつも二隻沈めたのは事実だから、そこを気にしなければいいんだけど。

司令官だった人間は特攻命令無視した副官に斬られて首なし死体にジョブチェンジ、副官のほうは戻り途中で海賊に捕獲されたんでここの死体にはいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ