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第19話 三年目の召集状。

 十六で学校を卒業し、気の合う仲間と共に冒険者組合にパーティを正式に登録して三年が過ぎた。


 思えば、七歳からずっと地味に育て続けてきたスキル〈囲い〉も、熟練度が頭打ちの気配だ。

 とはいえ、これは恐らく熟練度に見合った対象がもうこの辺ではいない、ってことだと思う。


 だって、毛糸で作った〈囲い〉に聖獣様コトンが飛び込むときは、まだ熟練度が上がるからね?


 それにしても来年ハタチですよ俺。育ったもんですなあ。



 パーティメンバーには変更はない。

 結婚で一抜けするんじゃないかと思っていたミーティスも、のらりくらりと縁談を躱しながら相変わらずの見事な前衛っぷりだ。


 まあミーティスが目を付けてるのはアル兄だったりするんだけどね!

 アル兄の方も、多分あれはまんざらじゃない、ってやつだ。


 スキル持ち同士がくっつくなら、平民同士だろうがそうでなかろうが、世間は歓迎するからな、ちょっぴり身分差があるとはいえ、二人の間に障害はほぼないはずだ。


 そうなってないのは、今のミーティスが純粋に殴り前衛ライフを楽しんでるからだと思う。

 そして、それを見るアル兄の目は、限りなく優しいんだ。


 他のメンバーに浮いた話は、現状ではない。

 成人と同時にハニトラの機会が急増したせいで、その防衛にかかりっきりで、逆に正規の機会を損失している、ともいうな!


 メンバーで唯一スキル持ちじゃないモードゥナにすら、ハニトラを仕掛けられたのには全員で失笑したけど、アリの一穴、っていうからなあ、油断しちゃダメ。


 モードゥナは自分だけスキルなしであることは気にしてないらしい。

 そんなのなくてもパーティの最前衛は奴で決まりだからなあ。


 そう、モードゥナの売りは、器用さと俊敏性。回避盾みたいなもんだな。

 俺たちもそれに合わせた編成と戦術を練ってるから、代わりが効かないのさ。


 トーテルのほうが時々凹むレベルだからな、スキルが洗濯の時にしか役に立ってない、って。

 普段の活動ではごく普通、むしろ俺より上手に槍働きできてるから、居場所がないってことは絶対ないんだけど。


「でもお洗濯で血の汚れがきれいに落ちるの、素晴らしいことなのよ?」

 女性の悩み事、半分解決できてるわ!と、フィリスねーさんやミーティスが良く慰めている。


 そう、トーテルのスキルを思い出したフィリスねーさん、ちょいちょい洗濯物を頼みに来るんだよ。ちゃっかりしてるなあ。


 あーでも、コルモラン男爵には予想外の結果だったかなあ、俺たちが依頼が多いポデントスを拠点にしちゃって、収穫祭の時くらいにしか帰らなくなっちゃったの。



 そんな風に思うようになりだした頃に、コルモラン男爵領からの急報が届いた。


「えぇ……?海賊じゃなくて、海軍?」

 届いたのは、男爵家の血縁である俺に対する召集状だ。


 異国の海軍が急速に接近してきたので、応戦要員として招集します、だとさ。


 無論、コルモラン男爵領、ひいては地元クレトス村を守るためなら、戻る一択だ。


「戦功立てたら叙爵の夢とか抱いていいかなあ」

 なんて言い出したモードゥナに釣られたのか、アル兄とエランも含めて、パーティ全員と、これも個別に呼び出しが来たというフィリスねーさんの七人で、地元に帰ることになった。


 尚、現在の俺らはBランク。三年で上がれる最大値だ。

 流石にAを目指すには、年数が足りない。最低五年間、功績を上げ続けることが必要だってさ。


 それを十一歳からの五年で、しかもほぼソロで成し遂げたフィリスねーさん、どうなってんのあの人。

 そりゃ生きる伝説扱いの有名人にもなるわ……



 去年、それまでに貯めた報酬で、商人が買い替えで放出した中古品を買い込んだ、がたごととそれなりに揺れる幌馬車で、クレトス村……ではなく、その手前、かつ海寄りルートにあるコルモラン男爵領の領都的存在である、コルモックの町に向かう。


 コルモックは領都と呼ぶには小さい町だ。村よりは確かに店も人も多いな、ってくらい。

 でもここには領主の館という名の城砦がある。


 というか、城砦の中に、町が囲われている。

 最初っから、籠城戦前提の作りの町だ。


 子供のころに何度か行ったことはあるけど、その当時は、なんでこんな中途半端な位置に?というのが素直な感想だった。


 今、地図と照らし合わせてみると、まあまあな要衝なんだな、ここ。

 当時は知らなかったけど、このセレバンディアという国の西海岸側は、大きな船が接岸できる場所が、思いのほか少ないんだ。


 コルモラン男爵領やパートリッジ侯爵領の向かい側には、結構大きな島があるんだけど、そこは全周が断崖絶壁で、住んでいるのは神獣様と動物だけで、人類は立ち入り禁止だ。


 対岸であるこの国の西の海岸線も、八割はそんな感じなのだ。

 それらが高さを減じ、接岸可能な岸壁を整備できているのが、コルモラン男爵領の辺りと、北端のフランコリン伯爵領の二つだけ、だったりする。


 そして、王都に近いフランコリン伯爵領では海外交易のための港があるけど、コルモラン男爵領の方の港は完全に国内向けだ。


 これは、南部の海が海賊の多い地域だからだ。

 モスクモロルの南部あたりに海賊のでかい根城があるらしいんだよね。


 モスクモロル国とは一応国交があるんで、海賊退治の要請はしているんだけど、海賊の根城の場所が難攻不落らしくて、それなりの戦力程度では落とせない、らしい。


 おまけにモスクモロルはフェ・ダと仲が悪くて、海賊たちにフェ・ダの船舶の略奪許可を出してるって噂もあるしな。


 うん、レジュメイア大陸の外側、結構物騒なんだよ。


 それでも、大陸西端の魔物の領域には、誰も手を出さない。

 碌なことにならないのは歴史的にも明らかだからだ。


 なので、コルモラン男爵領の存在意義は、主に海賊退治と港の防衛、というわけだ。

 だからこその、海鵜コルモランなんて家名なのかもしれないな。

ウミウのこと、だけでもないんだが、まあ鵜の仲間なんてどいつも川にも海にもいますので<訳語

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