第1話 田舎ののんびり農村ライフ?
この回も説明回ですはい。
世界の名は、フランレージュというそうで。
二つの大きな大陸と、五つのそこそこ大きな島からなる、その割に海のほうが陸よりちょっと多いという世界は、一応丸いらしい。
今回俺が転生者として放り出されたのは、大きな二つの大陸の東にある方、レジュメイア大陸だってよ。
その中では随分と南西よりに位置する、セレバンディアという国のほぼ隅っこにある、コルモラン男爵領。
その更に南西の端にある、ちょっぴりどころでなく鄙びた農村、クレトス。
俺はこの村で、領主である男爵の庶子として生まれました!
あ、庶子なんで、継承権には一切関わりがないし、家に入る金も、最低限の養育費くらいだってよ。
「ごめんねえ、かあちゃんがあんまり美人じゃなかったばっかりに」
行儀見習いの奉公に出ていて、よりにもよって人違いで男爵の子を孕む羽目になったという母は、ことあるごとに何故か満面の笑顔でそう言うけど。
認知はされたし、養育費の金払いは真面目だし、この世界では一般的らしいけど田舎の庶民には本来縁遠い、教会でのスキル確認の儀式は受けさせてくれるって話だから、むしろ俺の中の偏見コミの貴族って奴のイメージからみると堅実、いや誠実に感じるなあ。
人違いで云々とか、幼児の俺に聞かせてどうすんだ?とは思わんでもないが。
そう、これ、男爵本人にも聞いたんだよね……二年ほど前の話だ。
ただまあ、幼い間に現実を知っておくのは悪くはないだろう、という考えは、俺にも判らんではないので素直に受け入れた。
流石にホラじゃなくて事実だろう。
俺の顔はどこから見てもかーさん似だが、色合いは金茶の髪に紺色の瞳で、コルモラン男爵家でたまに出る髪色だという。目のほうは、かーさんの祖母の瞳と同じ色、だそうだ。
田舎の男爵家から出る、彼らからすれば最低限の養育費ってやつも、ド田舎の農村でなら、親子二人でまあまあ真っ当な暮らしをしたうえに、俺の進学費用を積み立てることができるくらいの金額ではあるのだし。
「んー?かーさんはかわいいよー?」
この世界の母であるひとは、名をコニーという、いかにも田舎の若いお母さん、といった風情の人だ。
明るい茶色の髪と瞳、少しぽっちゃり気味だけど、上背が田舎の人としてはある方だから、太って無様、なんてイメージはない。
動きもいつもシャキシャキしているし、体型というか体格が大きめの人だからか、力も隣のおばさんより強くて、なんでもできちゃうんだ。
そのくせ丸顔気味なんで、ぱっちりした目と合わさって、子供の俺から見てもかわいいのだ!
男爵、本当に人違いだったのか?怪しいぞ?
あ、現在の俺の名は、カークライド・コニファラス、だ。
コニファラス、というのは姓ではなく、コニー母さんの息子、くらいの意味らしい。
流石に庶子に本家の姓を名乗る権利は、原則としてない。
よっぽど優秀なら、本家入りもあるらしいけど、そこまで狙うつもりは、現状ではない。
だって、社畜時代には考えられなかったスローライフが、ここにあるんだよ。
村民全員顔見知りどころか、大多数が親類づきあいしているような田舎の村だから、手違いとはいえ、ご領主様のお手付き女とその息子、ってバリッバリに浮くけどさ。
……なんだよ、結局この世界でも浮くんじゃねえか、俺。
「んもー!カーくんはどうしてこんなことを言っちゃうの!貴方が一番かわいいわよ!」
「んぐぐぐ!かーさ、ん!ちから!」
そんなどうでもいいことを考えていたら、全力で抱きしめられて、息が詰まる。
前言撤回。
うちのかーさんは、ちょっと変だ。
力が、多分強すぎる。
「コニー、まーたカークの息の根を止めようとしてる?」
「失礼ね!愛情表現よ!!」
その様子を目にとめた隣のお姉さんがあざとい首の傾げ方に流し目で、酷いことを言っている。
この人、フィリスさんは俺の十年ちょっと上、かーさんの五年ちょい下、という絶妙な年齢のお姉さんだ。
あ、うちのかーさんは十八で俺を産んだそうなので、現在七歳の俺、十九歳のフィリスさん、二十五歳のかーさん、ってことだね。
このフィリスさんは、はちみつ色の髪に水色の瞳、という、この村では比較的色合いの薄い人だ。
多分、この世界の基準でも、美人。
体型も出るところと引っ込んでるところのバランスが凄くいいと思うし。
なのになんで独身なんだろう。
十九って、この世界だと大半の女性は結婚してるはずだけど。
そうそう、村の人間の大半は、かーさんよりちょっと濃いくらいの茶髪茶目だよ。
なんたって、街から引っ越してきたフィリスさんちと、数年ごとに入れ替わりのある教会の派遣神官さん以外とは、ほとんど皆、遠かったり近かったりはしても、親戚だから。
「おはよーございますフィリスねーさん」
かーさんのホールドから解放されたので、とりあえずあいさつはする。
余談だが、普段は本名のカークライドではなく、ただのカークと名乗っている。
「おはよーカーくん。今日は余所行きの服だから、教会?」
「うん!スキルの儀式、してもらえるから!」
今日は、田舎の教会には常駐していない、スキル確認官という業務の人を、コルモラン男爵が呼んでくれたので、自分にスキルがあるかないか、を確認できる日なのだ。
むろん、俺以外の村在住の希望者も、いるならば誰でも、今日中であれば確認を受けられるようになっている。
いくら男爵の血縁者とはいえ、庶子の俺一人のために、そこそこ費用の掛かる確認官誘致は勿体ないからね。
俺はコルモラン男爵のそういうところも、嫌いじゃないよ。
親として、は現状意識すらしてないけどな!
人違いしたのって本当に男爵なんですかね疑惑。




