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第16話 フィリスねーさんの行方?

 森の探索のあと、学校に帰ってきたら、女子班の三人娘だけが、絶望顔で門前に立っていた。


「無事でなにより」

 まず俺が代表して一歩前に出て、それだけ言う。先生たちは、まだ無言だ。


「私たちは無事ですけれど……」

「うん、君たちさえ無事なら問題ないんだよ多分、今回は」

 だって、立派系馬車の痕跡があった時点で、狙われたのはフィリスねーさんなの、確定だし。


 そして、フィリスねーさん自身についても、おそらく心配は要らない。


 ちょっかいだしてきたの、多分フィリスねーさんの父方の実家、ファザント侯爵家だし!


「一応確認するけど、君たちの従者枠の子たちってどこで斡旋されたの」

「私たちの実家に、さる高貴な筋だという方から売り込みがあったのですわ。

 今日は一人だけ都合がつかないといって、違う者が入っていたのですけれど」

 この女子三人は実は姉妹とその従姉妹で、血縁同士だ。


 姉妹の実家に、何者か、まあ状況証拠的にファザント侯爵家の関係者が、従者としてあの三人の茶髪を面接させにきたのだという。


 そこまでの答えを聞いたところで、教官勢と冒険者組がそれぞれ二人ほど散っていく。


「カーク君ありがとう、我々だと威圧的になってしまうからね、助かった」

「事情はだいたい分かったわ。

 フィリスちゃんは我々の推測通りであれば安全な場所にいるし、貴女達も被害者よ、非を問われることはないわ」

 マーティン先生とベティ教官が口々に述べて、女子勢をエスコートするように校舎に連れて行ったので、俺たちも続く。


 そう、俺が最初に喋ってたのは、女の子たちが怯えて口が重くなるのを回避するためだったんだ。

 三人が校門に置いて行かれた、という連絡が来た時点で、先生たちがそう決めたってわけ。



 女子三人も、森での行動自体に問題点はなかったそうで、今回は全員が合格となった。

 演習レポートをメモしながら戻る途中で、立派な馬車に拉致されたんだって。


「あんな森から出てもいない場所から走り出したのに、随分揺れない馬車だから奇怪に思ってはいましたけれど、そうですか、侯爵家……」

 女子三人の最年長、姉妹の姉であるアイリス嬢が、夕食の席で俺たちの隣に来て溜息をつく。


 俺らがフィリスねーさんと懇意にしているのは知っているから、ちょっとでも情報が欲しいんだろう。

 安心を与えられる情報は帰着時のあれ以外持ってないけどね。


「あ、やっぱり高位貴族の馬車って揺れないんだ」

 この街に来るときに御者のおっちゃんに聞いた話を思い出して、ついそっちに話を逸らす俺。


「ええ、びっくりするくらい揺れが少なかったです。街に入ったらもう全く揺れなくって!」

 それに反応したのは、アイリス嬢の一歳下の妹、レティーナ嬢だ。


 隣で二人の従妹であるマキューラ嬢もうんうんと頷いている。

 彼女とアイリス嬢は俺のひとつ上だね。


「俺たちがこの街に来た時の馬車、ホントに振動がきつかったからなあ」

「我が家の馬車も基本的には荷物用で、人間が乗ると結構きついんですよ」

 そんな感じで和気あいあいと馬車の揺れ談義に話が逸れて、そのまま夕食の時間は終わった。


 部屋に戻ると、同室のアル兄がにこにこしている。


「おかえり、カーク。お嬢さんがたの接待お疲れ」

「完全に馬車の揺れ具合の話で時間潰しちゃったんだけど、あれでよかったのかなあ?」

 実は、女子三人は一応別室で詳細の聴取があって、その間にクラスの他の全員に、彼女たちのメンタル面を心配してのフォロー依頼があったんだよね。


 そして彼女たちに選ばれたのは、俺たちだった。

 まあ五人しかいない女子のうち、レメディア嬢は男爵家とはいえ貴族だから、敷居が高いのは判るし、ミーティスも俺たちと一緒じゃない時はだいたいレメディア嬢と一緒だから、女子勢に行けない理由は察しが付く。


 そうなると、フィリスねーさんと一番親しいのが俺とトーテルだからな。

 選ばれるのは必然だったのさ。


「十分話が盛り上がったんだから、あれでいいんじゃないか?」

 話しかけにくくなるとあちらが困るよね、と、今日はモードゥナの見舞いに行っていたアル兄も、途中からあの場にいたらしい。


「それにしても、フィリスさんはどこにいるのか」

「侯爵家に直接ってことはないだろうから、縁者の家だろうし、多分そろそろ帰ってくるよ」

 質問はさっくりぶった切る。


 あのねーさんが大人しく捕まってるわけないじゃん。

 女子勢の安全のために大人しくしてただけに決まってる。


「信頼してんなぁ」

「ねーさんの実力からしたら当然だと思う」

 運ぶのに大人二人がかりでもぜえはあ言いながら網掛けて引きずってたばかでっかいサーペントも、自分に向いてなかったとはいえ、アクティブな大猪も、一撃首スパン!のねーさんだよ?


 いや、人間相手に首スパン!は人道的にやばいから、逆に面倒かもしれないが……

 あの移動速度と敏捷性は、おそらく無手でも十分に戦える、そう俺は確信している。


「……確かに、あのサーペントの居場所まで行って首刈って戻ってくるまでの時間、ヤバかったもんな……」

 実はアル兄は〈モンスター察知〉というスキルを持っているんだそうで、モンスターの存在とその位置をかなり正確に察知できるんだそうだ。


 すげーな、俺らの班、ほぼ全員スキル持ちだったよ!


 うん、エランもね、実はスキル、持ってるんだ。

 ただ、あいつの場合、それは教会の協力の元、封印状態にして隠しているから、他の人は殆ど知らないはずだ。


 虚弱体質の原因でもあるそうだから、致し方ないんだけど。

 体質に影響するスキルなんてあるんだなあ。


(あの子のは……身に合わぬ強大なスキルを得てしまったからの。成人できれば、虚弱さは落ち着くであろうよ)

 コトンの解説も、なんだか心配げな様子だ。


 俺がなんで知っているのか?

 判らん。気が付いたら、見えてた。見るためのスキルもないのにね。



 なお、翌日の昼過ぎに、フィリスねーさんは予想通り帰ってきて、冒険者組合に報告書をぶん投げてからいったん村の実家に帰ったそうな。


 うん、想定内!

ベティ教官がちゃん付けしてるのは、フィリスもかつて生徒だったからですね。

なお、主人公は知らないので今後も出てきませんが、この後とある法衣貴族家が品行不行き届きと継嗣断絶でお取り潰し食らってる。

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