第15話 ふたたび、森へ。
一週間ほど間をおいて、今日は再び森での演習だ。
テレックは結局冒険者さん達の予想通り、放校処分になった。
放校処分は退学処分より重い。
他の領地の学校にも通知が行き、国内の学校ではもう受け入れて貰えないのだ。
なんでも、自分の非を一切認めようとしなかったのだそうだ。
そりゃ確かに、無理だなあ。
意固地になるにしても程があるし、そういう見極めのできない人間は、大成できないどころか、社会的にもはみ出す結果にしかならないだろう。
「逆恨みされそうでやだなあ」
お見舞いにいったら、モードゥナがあけすけにそうぼやいていた。気持ちは判る。
「正直あいつの住んでる村辺りまでは街の噂は届くから、俺たちも他人事じゃないんだよなあ」
アル兄がその件を蒸し返したのは、程よく森の中に入ったあたりだ。
前回のサーペント出現で全体的に荒れていた森も、今は落ち着きを取り戻している。
それでも、森が怖い、と参加できなくなった同級生が数人いたのは、仕方ないと思う。
参加不可能と判定された勢は、こないだのお説教の時の俺たちみたいに、学校内で自習してるはず。
そのうちの二人は、モードゥナの班にいた子だったので、しゃーなしだろう。
残りの二人は、元々森歩きに慣れている、俺らくらいの習熟度の子だったんで、そんなこともあるよね、って納得して、他の、自習組が抜けた班に入れて貰ってる。
なお女子は従者たち共々、全員出席組だ。つよい。
しかしあの従者達、顔こそ違うけど皆似たような茶髪だなあ、村を思い出すね。
今日の教導役は、フィリスねーさんではなく、サーペントを運びに来て猪の処理に巻き込まれた兄さんのひとり、ライネスさんだ。
フィリスねーさんは女子班の強い要望でそっちに連れていかれました。
大丈夫か?そのねーさん、担当班を置いて狩りに行ったぞ前回?
「なるほどなあ、同年齢層の中では既に熟練なんだな、村組」
そのライネスさんは、俺たちの動きを見て感心している。
前回、程々に俺たちから採集の基本を習った残りの三人も、現状なら合格点だそうだ。
「俺たちの森歩き熟練度は生活直結ですからね」
「そうそう、薪拾いがないだけ、やることが少ないくらい」
都会の民はどうか知らないが、俺たち辺境の村の民は、森に結構依存して生きている。
それこそトーテルが言ったように、薪拾いから、食べられる山野草や木の実の採集、果ては罠を使った狩りまで。
学校だと、暖房の燃料、薪じゃないんだよね。
なんと、館内全部集中制御で暖房するシステムができている。意外と近代的。
「薪拾いも周辺の村民や一軒家に住めない人間はやってるぞ。
学校だと精霊様の集中暖房システムがあるから必要ないけど、冒険者組合の初心者向けの仕事にもなってるくらいだ」
学校の暖房は、火の精霊様と契約して、精霊力で温めてもらっているんだそうだ。
設備は近代的なのに動力が一気にファンタジーだな!
この世界の精霊様は、一般人的には不可視の、いろんな属性を持つ、意思を持つエネルギー体だ。
国の中央に近いほうに集まりたがるという謎の習性があるので、村では殆どいなかった。
居酒屋の旦那さんが契約してる酔っ払い精霊、と呼ばれている子がいて、その子位だったかな、クレトスにいるのは。
あと多分流石にコルモラン男爵家の屋敷にはいそう。
(中央を好むのではなく、境界の存在を嫌うのだな。居酒屋一家の男共も男爵家の者も、西の森には入らぬであろう?)
コトンからの解説。いわれてみれば、確かにそういう記憶はある。
契約の報酬は、精霊様の好むなにかを差し出すこと。これも個体ごとにまちまちだという。
居酒屋の酔っパ精霊さんは酒好きのレア個体だそうだ。
してみると、俺は西の森……境界のある森に馴染みすぎていて、精霊様には当面縁がなさそうだな。
(ずっと縁遠いということもなかろうがね。精霊種や妖精種は好奇心が強い故な)
コトンのいう精霊種は目に見えない存在だけど、妖精種は目に見える実体を持った存在だ。
ゲーム的なアレじゃないほうのゴブリンとか、フェアリー、それにドワーフなんかがこの括りだ。
エルフもいるけど、こちらは魔物の領域の存在。亜人種と言われている。
で、魔物の領域の亜人種には獣人という存在もいる。
直立二足歩行する獣が服を着て歩いていると思えばいい、らしい。
つまり、かなりケモケモしいほう。
まあ実際見た事ある人なんて、ほとんどいないそうだけどね。
そんな感じで、余計な考え事をする余裕もありつつ、俺たちの二度目の森演習はつつがなく、何事もなく終了した。
のだけど……
「女子班が帰ってきてない?フィリスが付いていて、か?」
はい!問題発生!!
「フィリスねーさんが一緒にいて、女子班共々未帰還?そんな馬鹿な」
「従者が怪しいな、一人だけ、前回と違うやつだった気がする」
そして、俺が首を傾げたところで、トーテルが爆弾発言。
え?見た目的には一緒だった……いや違う!
「小僧、どうしてそう思った」
「「目の色がちょっとだけ違った!」」
俺もそのことを思い出したので、問うてきた冒険者のリーダー格らしい人に一緒に叫ぶ。
そうだ、初回の時の三人の従者は、三人とも村で見慣れたような茶髪に茶色の目だった。
今日見かけたときには、ひとりだけ、茶色ではなく、もっと濃い、ほぼ黒に近い瞳の色、だったんだ。
「茶髪茶目は村で見慣れてるからさあ」
ちょっと違うなって記憶に引っかかってたんだよね、とトーテル。
そこから、森歩きのできる判定を受けた俺らの班まで駆り出されて、森を捜索したけど、六人とフィリスねーさんは見つからなかった。
まあ、大型の馬車の轍が残ってたから、森にはもういない、ってのが割と早い段階で判ってしまったからなぁ……
この世界、暦も現代日本と一緒っす。(世界を創ったのが日本出身者という裏設定。




