表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/22

第13話 モンスターと対峙する。

 モードゥナは心配だが、残念ながら俺たちには戦力といえるものが、ない。

 防御力すら雑魚、いや稚魚レベルだ。


 しょうがないから下がるしかないな、と結論付けたものの……


 それはちょっと、遅かった。


 強力なモンスターが現れた場合、森は荒れる。

 出現、または移動してきたモンスターより弱い在来生物や在来モンスターが、追われて逃走し、しっちゃかめっちゃかに走り回るからだ。


 恐怖心で逃げる彼らはパニック状態で、普段なら人間に嚙みついたりしないようなウサギ系のやつらにも、障害物だと見做された段階で、攻撃を受ける羽目になる。



 今まさにそんな感じの、猪のモンスターが俺たちと目を合わせてしまった訳だ。


 ねーさん、これ大チョンボだよ、大丈夫?


「ヒッ……」

 あ、まずい、エランが限界突破して気絶した。


 幸い体格に勝るアル兄が抱えてくれたけど、これでレメディア嬢まで連れて逃げるのは、俗にいうムリゲーだ。


 ミーティスとトーテルは問題ないんだけどね、こういう時の対処方法は、クレトス村の人間なら子供のころから慣れている。


「どうするこれ」

「アル兄はお嬢とエランを連れてちょっとずつ下がって。俺とトーテルで奴の意識を逸らす」

 アル兄の質問に、簡単に答える。


 幸い相手は単体だ。

 向かう先に迷って、アル兄達の事を忘れてくれたら、実質こっちの勝ち、だ。


「うん、大丈夫。他のはこっちには来ていない」

「私は下がる組の護衛ね」

 トーテルもミーティスも村の子なので、さっくり自分の行動を判断する。


 うん、やっぱりクレトス村の人間、普通からちょっとずれてるな!


 会話を続けながらも、俺と猪は睨みあっている。


 ちょっと背は伸びたけど、そもそも人間はこの世界でも、猪と正面から相対できるようにはできていない。

 それでも、威嚇の意思を込めて睨んでやれば、ある程度は相手も怯む。


 とはいえ、相手は動物ではなくモンスターで、獣よりは知恵がある。

 俺らが武器を持っていないのを見抜いたようで、ぐっと頭が下がり、攻撃の姿勢になる。


「わあっ!」

 そこにトーテルがタイミングよく大声を上げ、猪の気が逸れる。


「おう!〈囲い〉!」

 ちょっと迷ったものの、試しに〈囲い〉を猪の周囲に発動する。


 俺のイメージ通りに出てきた囲いは、森の入り口で見かけた茨の藪だ。

 なんと、ちゃんと地面から生えている。


 トーテルの方に踏み出した猪は、茨の棘に引っかかって、ギイ!と悲鳴を上げた。

 モンスターなせいか、猪らしからぬ悲鳴ですね?


 ただ、流石に茨の棘程度では、一瞬しか怯んでくれない。

 猪は今度は囲いを作った俺を標的に定め――


 斜め後方から駆け寄ってきたフィリスねーさんに、短い首を一刀両断にされた。


「へえ!カーク君のスキル、こんな進化してるんだ、凄いわね!」

 返り血を浴びてもいないフィリスねーさんは、俺が茨を消したせいでぐらついた猪の死体を蹴り転がす。


「シシ鍋」

 それを見たミーティスが、秒で魅力的な単語を述べる。


「血抜きしないとなあ」

 トーテルも落ち着いたもので、早速脳内で解体の算段をしているらしい。


「もう危険はない?」

「「ないよー」」

「「ないわね」」

 アル兄の確認に、村組四人で即答する。


「……モードゥナも前に言ってたけど、やっぱりコルモラン男爵領の人間、強いよ……」

 アル兄はそう感想を述べると、その場に座り込んだ。


「流石ですわ。カークさんはもとより、トーテルさんも勇敢でらっしゃるのですね!」

 そしてレメディア嬢には、トーテルが意外なほど好印象になったようだけど。


 そうは言うけど、レメディア嬢はしっかり立って、余裕のある表情のままだからなあ。

 ひょっとしなくても、アル兄より肝が据わってるんじゃない?


「逃げる手段をちゃんと知ってるからできるだけで、勇敢ってわけじゃないです」

 トーテルの方は簡単に謙遜する。

 だけど、文字通りの本番でちゃんとやれるって、結構大したもんだと俺は思うよ?



 採集用のスコップで穴を掘って、頭を失った猪をさかさまに突っ込む。

 これである程度放血したうえで、後始末ができるってわけだけど……


 傷む前に臓物を抜きたいけどどうしよう、と相談していたら、他の班の護衛だった冒険者さんが二人ほどやってきて、俺たちを見るなり怪訝な顔になった。


「フィリス、それ何」

「さっきのサーペントにビビって逃げてた猪?」

 片方の質問に、さらっと表情を変えずに答えるフィリスねーさん。


 そうか、奥のデカブツ、サーペントだったのか。

 蛇系のモンスターって普通の蛇と違って、冬でも活動するんだなぁ。


「いや、なんで頭がこっちに、って血抜きしてるのそれ??」

「そう、解体しちゃいたいけど、私流石にそこまでは覚えてなくって」

 そんなやり取りのあと、二人のお兄さん冒険者がワタ抜きの処理もやってくれることになった。


「ところで君たちの担当の子は?」

「見つけ次第全員ひとまとめにして、もう最後に森に入った組あたりは外に出たからさ、俺らだけ戻ってきたんだ。サーペントを運ぶ人手が要るだろう?」

 どうやら、お兄さんたちもフィリスねーさんがモンスターを倒すって予想を立てていたようで、そんな回答が。


「フィリスねーさん、本気で強いんだ……」

「そりゃうちの組合の実質ナンバーワンだからなぁ。ねーさん呼びしてるってことは、君らクレトスの子かい?」

 お兄さん達は、フィリスねーさんが近年ではクレトス村在住なのは知っているようで、そう聞かれたので頷く。


「ねえ勧誘しても」

「だーめ。学生への勧誘は禁止でしょ」

 そして、何故か冒険者組合からも勧誘されることが決まってしまった気配が、ほんのりと。


 いや大丈夫、フィリスねーさんが言う通り、在学中は本格的な囲い込みは禁止のはずだから。

 そもそも、その前に教会の皆さんを捌かなきゃいけないんだけども!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ