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第10話 友達はできました。

学校ものになるとどうしてもキャラが増えるぅ。

「カーク君、次の体技実習、一緒に組んでくれないかな?」

 昼休みが終わる直前に声を掛けてきたのは、この街生まれだという同級生、エランだ。


 そう!無事に!浮いてるなりに!友達ができました!


「実習……次の次のコマで、屋外だっけ。いいよー」

 そう答えると、エランはほっとしたような顔になった。


 このエランという子は、この街の中堅商人の末っ子で、体力に自信がないタイプだ。

 色白で俺と色目の似た感じの金茶の髪で、後ろから見ると兄弟みたいだ、とたまに言われる。


 顔は全然似てないから、正面から見たときには絶対そういう感想にはならないそうだけどね。

 俺はかーさん似の丸顔童顔、エランは儚げな細身の美少年だ。

 目の色も俺は紺だけど彼は緑だね。


 俺は村での鍛錬の時に、兵士のおっさんたちが年少の俺たちを気遣う様子を見覚えていて、相手に合わせた力の入れ方、抜き方を多少は知っているからか、エランにとっては一番やりやすい相手なんだそうだ。


 そうだよなあ、同級生、だいたい力任せだもんなあ。

 同等の腕力の相手ならそれでもある程度は許容されるだろうけど、エランみたいに体力の基礎のない子にそれを強要するのは、もはやいじめだと思うぞ。


 ただ、実際エランの腕力だと、女子クラスに混ざってやっとどうにか、くらいだからなあ。

 釣り合いを取るほうが大変だ、って気持ち自体は判らんではない。


 俺はそうしないことができると知っているから、やらないだけだ。



「あのねえ君たちィ?カーク君をもっと見習いなさい?

 いつまでたっても全力の力任せしかできないなんて、将来的にもすっごく困るのよォ?

 兵士になる場合でも力の抜きどころを覚えられないのは致命的だし、何より女の子のエスコートとか落第点押されまくるわよォ?」

 その演習にて、そう同級生たちに不可を出しついでに俺を悪目立ちさせてくるのは、実技教官のオネェ、ベティ教官だ。


 本名はベテルギウス、というらしいが、本人は絶対にベティと呼べ、と言ってきかない。

 というかなんだ、この世界にもいるんだな、オネエ。


(そいつは特別だ。おぬしと同じ転生者さ)

 どこかから見ているらしいコトンから教えられて、教官を二度見したけど、まあガタイのいい、かつ、この世界らしい見事な紫の髪をタワシのように立てた髪形の、化粧はしてないのに濃い顔の美人さんは、見た目だけではどうともつかない。


 いや黙ってれば筋肉盛った美丈夫、って奴なんだが。


「いやだってコルモランの子でしょカークって。絶対最初っから習ってる奴じゃん」

「だから見習えって言ってるのよォ!」

 二歳ほど上の、金髪のくるくる癖っ毛の少年の言葉に、教官が吠える。


「アッハイ」

「半年くらいしか習ってないから、ホントに基礎の基礎だけですよ?」

 真顔になった少年に、一応言い訳はしておく。


「半年でそこまで仕上がる上に相手への配慮も読み取ってるんだから、君は十分優秀よ?」

 そして言い訳には教官の真顔の回答がきた。


「村では普通くらいでしたよ」

「だからコルモラン男爵領ではそうだろうけど、街の人間から見たら熟練者なんだってば」

 更なる返答への年上氏のツッコミはこれで、成程どうもコルモラン家っていうか、コルモラン男爵領自体がそういう風土の土地とみなされてんだなこれ?


「そうなんだ?」

 隣で黙々と基礎訓練の復習をしていたトーテルも不思議顔だ。


「そうよぉ、まあキミタチはこの秋に出てきたばかりで街を知らないからしょうがないわよねえ」

「あ、そっか。村から出たことなかったんじゃ知らないよね、ごめん」

 そして教官から補足説明が入り、年上氏はおもむろに素直に謝罪を口にした。


「ううん、大丈夫。確かに俺たち、村の外の常識とか、まだ全然知らないや」


 そんなやり取りの後、ちょっとだけ、浮いてた感じが減ったのは、きっと気のせいじゃないと思う。



「年上にもしっかり応対ができるのは偉いよねえ、カークって」

「そうかな?俺らとしては年上に無礼になってないか、内心では心配してるけども」

 昼休みの食堂で、エランにそう言われたので、思うままに言葉を返す。

 隣でトーテルもうんうん頷いてるので、これは俺らの共通認識であっている、ようだ。


「よっ、さっきは済まなかったな。今度手の空いてるときにちょっと復習したいから手を貸してくれないか?」

 そこに、さっきの二歳上の同級生、モードゥナがやってきてそんな提案をしてきた。


「都合が合う時なら大丈夫です」

「年齢差はちょっとだけあるけど、同級生なんだから丁寧語じゃなくていいぜ?」

 確かに最初にクラス全体で自己紹介とかしたときに、年齢はあんまり気にしないように、と担任教諭からも言われていたっけ。


「今年のクラスはこれでも年齢差は少ないほう……いや、トーテルが十一だから五歳差のやつがいるなあ、そこそこ大きいか」

 モードゥナが言うのは、一人だけ俺より四歳上の学生がいるって話だ。


「おう、呼んだかい?お呼びでない?」

 そんな茶化すような言葉と共にやってきたのは、燃えるような赤毛のこれも派手に跳ねた癖っ毛に、ベティ教官によく似た金色の瞳のお兄さんだ。


 これが今年のクラス最年長、アルニタク氏だ。

 ベティ教官と似た色の瞳なのは、親戚だからだな。


 ベティ教官はコルモラン男爵領とはパートリッジ侯爵領を挟んで反対側にある、ターミガン伯爵家の前当主の末子、アルタニク氏はベティ教官のすぐ上の姉の息子で男爵家子息、だそうだ。


「呼んでないけどまあいいや。アルも一緒に復習やんね?」

「あ、カーク君に付き合ってもらえるなら嬉しいなぁ。俺、足がまだ本調子じゃなくってさ」

 そう述べるアルタニク氏は、本当ならもう三年くらい早く入学するはずが、落馬事故で長期間のリハビリが必要になったためにこの年の入学になったという、ある意味不運な人だ。


 リハビリ中にも勉強はしてたから、学業成績は断トツの一位なんだけどね。

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