番外編 エイプリルフール1
「おい、なほ!お前の好きな俳優、牧野蓮が結婚を発表したぞ!」
「え、マジ!?ショックだよ牧野くん…。牧野くんは私の星だったのに…。私が、同棲して、ご飯も作って一生支えるつもりだったのに…。どうして、どうして牧野くん!」
妹のなほがガチ泣きしている。
しかし、コイツもう手遅れなところまで来てるな…。
いつも、「お前、キモい」とか「くっさ」とか言ってくる罰だ!!
そう今日はエイプリルフール!
嘘をついてもいい日だ!
だから、朝一番にコイツを懲らしめるために一番苦しみそうな嘘をついた。
「な、なんで牧野くん…嘘だと言ってよ蓮…」
もう、なほは戦意喪失していた。
ちょっと、やりすぎたか?
でもここまで泣かれると、ネタバラシしづらいな…。
しかし、今をときめく若手俳優、牧野蓮か…。
どこがいいのやら…。
たかが、料理番組で「蓮ジでチン!!」とか言ってすかしてるだけじゃないか…。
「おい、今のは嘘だ。牧野蓮はまだ独身だ。安心しろ」
それを聞いたなほは、ピクッと反応した。
そして、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
なんか、めっちゃ怒ってるだけど…。
「ほ、ほら今日はエイプリルフールだよ!なほ!4月1日は嘘ついていいんだぞ!おい、聞いてるか!4月の俺のう…」
パチン!
痛い!!!
コイツマジでビンタしやがった!
風呂とか覗いたわけじゃないじゃん…。
ただ、嘘ついただけじゃん…。
「お前、エイプリルフールというイベントを楽しめないやつだったとはな…」
「◯す」
「え、ええ!もうやめろ!痛いから!」
「冗談だよ。エイプリフール★」
「は?」
「今までのは全部演技だよ。お兄ちゃんが仕掛けてくると思って策略を練っておいたのだ」
え?
は?
「にしては目がガチなんですけど…」
「私が、牧野くんの行動を分からないわけないじゃない。ずっとsnsを監視してるんだよ。お兄ちゃんなんかよりずっと情報早いよ」
コイツ、やべーわ。
「おい、2人ともリビングに来てくれー」
親父の俺たちを呼ぶ声が聞こえる。
「だってよ行くぞ」
俺たちは、家族4人ダイニングに集まり座った。
親父と、母さんが妙によそよそしい。
「お前たち報告がある」
親父が、真面目な顔でそう口を開く。
「お前たちに、妹ができる」
「はあああああ!」
俺のなほは、口を揃えて驚く。
「親父、流石にエイプリルフールだろ!」
「なんだその、エビピラフプールってうまいのか?」
やばい、この反応はガチだ!
てことは、本当に妹が…?
「い、いやいや親父、今何歳だよ。子どもとかもう…」
「うるさい!何歳でもいいだろ!」
この怒り方…ガチだ!
この夫婦、仲良かったんだな…。
たかがコロッケ弁当であんな仲良く話してたしな…。
まあ、悪いよりは良いか…。
「で、いつ産まれるの?」
ナイス質問だなほ!
聞きにくい質問をズバズバと聞いてくれる。
しかし、コイツ動揺のどの字もないな…。
「産まれる?何を言ってるんだ」
「いやだって妹ができるって」
「養子だ」
なんですとー!!!
養子!?
なんでだよ!
俺たちがいるだろ!
ていうか、なんで今更?
「な、なんで今更養子?」
「いやー父さんな、知り合いから面倒を頼むって預けられてな!それで、養子ってわけだ」
母さんも首を縦に振っている。
養子ってそんな軽々しく決まるものなのか…?
なんか、こう家庭裁判所とかのイメージだったが…。
「で、肝心の妹は?」
ピンポーン。
「来たぞ」
そんな宅配便みたいに来るんかい!!!