第九話 王との謁見。家族会議はそんな方向へ!?
異世界転生定番、王様との謁見!!
こんな謁見もありでしょう!
さてさて。とにかく、王城につき、私たちは王との謁見に向かうことになった。このお城は母の実家ということもあって、色々スムーズに入れたし、色々な声も聞こえた。
「ああ、お嬢様……。お美しくなられて……。」
「あ!久しぶりですね!」
「あれは、旦那様と娘さん……?」
三者三様の言葉が飛び交っていた。まあ、家を出て連絡もなしに長い間過ごしてきたのだから当たり前と言えば当たり前か……。
――謁見の間前――
「ここが謁見の間よ。王様がこの中にいるの。一応親族とは言え、謁見の間での作法は必要よ。部屋に入ったらお母さんの真似をしてね。」
作法とか無関係だったからなぁ。とりあえず、失礼がないようにしなくっちゃ……。お母さんを凝視してよう。
「お嬢様。よろしいですか?」
謁見の間の前で門番をしている騎士が母に声をかけた。お嬢様呼びなんだ……。親族というけど、結構位が高いのか……。
「ええ。いいわよ。お願い。」
騎士は母の言葉に了承して一つ頷いた。それと同時に叫ぶ。
「カイト・マツォーネ様並びにクレア・マツォーネ様、元クレア・フォン・サンローラン第一王女様、御息女、サーシャ・マツォーネ様の謁見です!!」
……!?
いい位だと思っていたけど、第一王女……!?
親って王様のこと!?
「……黙っててごめんね。後でちゃんと話すからね。」
そう私に耳打ちして開く扉から部屋の中に入っていく。先頭は父。その後に母。私は母の隣を歩く。
父も母もビシッとした感じで歩いている。そして、向かう方向には階段があり、その上に玉座があり、1人のおじさんが座っている。あれがこの国の王様か。
王様は魔法が盛んな国とは思えないほどがっしりとした体格で、髪をオールバックにし、イケオジって感じだ。王冠をかぶるその人は豪華な王冠にも負けないくらい眼力と自信、それ以上に纏う雰囲気が王であることを納得するしかない。
私たちは玉座前の階段の下で片膝をついて頭を下げる。
「面をあげよ。」
王様から言われる定型文ランキング上位に位置する定型文を発した王様。本当に言うんだ!?すっげー!!私は少し違った意味で興奮してしまった。そして、両親に習って下げた頭を王様に向けた。
「久しいな……。」
王様はただ一言、母に向かって言葉を発した。
「本題とは違うが、お前のことをみくびっていた。よくここまで頑張ったな。」
王様は母に向かって労いの声をかけた。その声は王様というよりは父親のそれだった。表情も柔らかい。本来は優しい人なんだろうな。
「……。ありがとうございます。私もわがままを押し通してすみません。ここまで来れたのも、私の力だけでなく、夫や娘の存在があったからこそです。」
おやおや?意外と簡単にわだかまりは溶けたのかな!?よかったよかった。
「で、あろうな。毎月カイト君から文をもらっていたからな。状況は理解している。」
「……っ!?!?っちょっ!!王様!!それ言わないお約束……!?」
王様の言葉に父があたふたと慌てている。そんなことを内緒でやっていたのか……!?
母は驚いた顔と少し怒った雰囲気を出しながら笑顔で父に声をかける。
「家族会議で詳しく聞かせてくださいね……。」
黙ってそんなことをしていたことに怒ったのだろうか。
「……あっ!すまんすまん!!……だが、それがあったからこそ自由にできていたのも間違いではない。怒ってやるな……。」
王様は意外とお茶目な一面もあるのだろうか?少し親しみやすくなったな。
「こほん……。とにかく、長くなってしまった私とクレアの喧嘩はこれでおしまいだ。私が悪かった。」
王様が謝ることなんてあるんだ……!?まあ、1人の親と思えばそれも頷けるか。
「ふふ。わかったわ。ただ、カイトとサーシャがいないと乗り切れなかったわ。だから、今回の喧嘩は引き分けよ。それに、サーシャのことがあったからこんな機会を得られたわ。サーシャがいなかったらここに来ることはなかったかもしれないわね。」
母も案外強いな。どんな喧嘩したんだろう……?
「さて……、当初の目的と違った話をしてしまったな。すまない。それで、その子が……?」
王様は私の方を見て問いかけた。
「ええ。私とカイトの娘のサーシャです。貴方の初孫ですよ。」
王様の問いかけに母が答えた。その言葉に王様は顔を綻ばせて言った。
「サーシャちゃん。色々すまなかったね。いきなりで驚いているかもしれないけど、私が君のおじいちゃんというわけだ。よろしくな。」
はいそうですね……って軽々しくできるかぁぁ!!ビビりまくりでガクガクだわ!!
「……は、はい。よ、よ、よろしくお願いいたします……。」
私はあまりの緊張から辿々しくなってしまった。
「ふふ、そんなにかたくならなくてもいい。王ではあるが、サーシャの祖父なんだからな。もっと気安い感じでもいいぞ!さあ!おじいちゃんと呼んでくれ!さあ!!」
王様の圧がすごい……。だからってこんないきなり王様をおじいちゃんと呼べと言われたって……!?
「もう!お父さん!!怖がってるでしょう!急なことなんだから急かさないでよ!!」
母が王様に向かって、家族を思わせる言い振りで言葉を発した。王様もそれを咎めるでもなく受け入れている。
「そうか……。やはり初孫だけあって可愛いがりたいではないか!」
「だからって限度があります!!」
などなど、父と娘の会話が繰り広げられた。
そして、ここで話に割って入ったのは父のカイトだった。
「仲睦まじいのはいいですが、本題入ってもいいですか?」
父は片手を軽く上げて意見いいですかーと言うように発言した。その言葉に恥ずかしくなったのか、王様と母は2人とも同じように顔が赤くなり、我に帰った。
「「も、もちろん!!」」
完全に焦ってる。
「さてさて、今日謁見にきたのはそのサーシャのことについてだったな。報告書は読ませてもらったが、とんでもないことになっているな。」
やっぱりとんでもないことなんだ。勇者の生まれ変わりとサンローランの子孫の子ってことだから血筋的にもやっぱり可能性はあったのかな。神め、余計なことをしやがって……。
「サーシャの事だが、一つ心当たりがある。」
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
王様は何らや心当たりがある様子。
次回にご期待!!