第八話 初めてのスキル。旅は順調!?
スキルを使ったサーシャ。
両親の反応はいかに!!?
私はスキルによって荷馬車を召喚した。案の定両親は驚いて固まっている。
「御者さん。もう大丈夫ですよ!」ポンポン
耳も閉じていた御者さんに全て終わったことを伝えるために肩をポンポンと叩いて知らせる。
「お、もういいので?……ってうわ!?新しい荷馬車!?」
御者さんも今の状況に驚きを隠せなかった。
「馬を付け替えられます?」
私は馬までは召喚しなかった為、荷馬車を引く馬を新しい荷馬車に繋げられるか確認した。
「……ええ、それはできそうですが……。ええ!?」
驚きつつも自分の仕事はきっちりするようだ。早速御者は馬を繋ぎ変えている。あとは……。
「言いふらさないでね?」
私は両親に向かって冗談めかしく口止めをした。まあ、これだけの所業を言いふらすことは両親に限ってありえないと信頼しているからの言葉だ。
「……言える訳ねぇ……。」
父は空いた口が塞がらないようだった。
「王様との謁見の後にちゃんと話すから!むしろ話してからじゃないと上手く伝えられないし……。だから、とりあえず、この旅の間は普通に過ごしてくれる?」
私は念を押した。
「……まあ、これは話してもらわないわけにはいかないわね……。」
母も説明は欲しいと言わんばかりだ。私だけこの扱いは酷いんじゃない!?!?
――――
色々あったが、無事に都市までの旅を終え、すぐさま転移をするために大規模転移魔法陣が備え付けてある広場へ向かった。
この都はサンローランのちょうど中心にある都市でセントラルと呼ばれる都市だ。サンローランで1番人が行き交う場所であり、商業施設なんかも充実している。王都付近よりも店舗数は多く、サンローランで1番の都市と言ってもいいかもしれない。王都周辺はあくまで王都に付随する文化の発祥と言った感じだろうか。
セントラルでは都市の中心に直径1キロメートルほどの広すぎる広場がある。この広場の中心に転移魔法陣が備え付けられている。だが、転移の効果範囲はこの広場の全体であるため、人が往来が激しい。それを緩和するためにこれほどまでに大きな広場が必要であった。
転移魔法陣がある都市はもれなくこれほどの広場を有している。この転移魔法陣は国民であれば自由に使える。他国の人であっても、そんなに高くない利用料で使用できる。良心的だと思う。まあ、そういったところが発展につながっているのだとも思う。
「よし。じゃあ、王都まで行きますか。」
広場に着くと同時に父がそう促す。
「そうね。少し急ぎたい気持ちもあるし……。」
母はそう言いながら私の方を見た。
「いやいや、私だって聞きたいことあるからね!?」
私が全て悪いみたいな反応は心外だな。王族の母と勇者に匹敵する強さの父を持つ私はそれの方が気になるよ。
「うん。じゃあ、急ごうか。」
父はそう言いながら、目の前に現れるウインドウを操作した。
転移魔法陣の効果範囲に入るとホログラムのようなウインドウが各々の前に出現する。そこに必要事項と身分証明書を記入する必要がある。今回は父がまとめて申請し、私と母は身分証明書だけを提出で問題ないようだ。お役所仕事が自動化されているようで便利だな。現代日本でも魔法があればもっと便利だったのだろうな。
「……。よし。じゃあ、この円に入ってくれ。」
申請が終わると同時に父を中心に地面に円が描かれた。その中に入ることで申請人数の確認や空間の固定をするみたいだ。転移魔法陣の転移は人や物を送るが、人や物体そのものというよりは、その空間を転移先と入れ替える感覚に近いらしい。
だから、転移する物たちが多少なら動いても大丈夫だけど、その空間から出ちゃうとそこだけは居残り、まあ、残酷な話、手が空間からはみ出ていたら手がちょん切れるみたいなことだ。それに対処するように、円の中に入り承認をすると空間が固定され、移動する空間から外に出られなくなる。
至る所で人が消えては出てくるを繰り返している。これを自動で制御しているのだからすごいと思う。まあ、だからというのもあるが、この転移装置があるのは大都市にかぎるのだ。
私たちは父に言われる通り円に入る。知識はあるが、実際に転移をするのは初めてだ。結構緊張する。
「……大丈夫なの?」
私は少し怖くなり質問した。
「怖いの?大丈夫よ。怖いならお母さんにしっかり捕まってて。一瞬よ。」
母は私に声をかけてくれた。そして、父が始まりを教えてくれた。
「……お、行くぞ。」
――シュン……――
すると一瞬にして世界が真っ白になり、すぐに景色が現れた。もう……移動したのか……?広場は高く白い塀に囲まれている。広場の見た目は基本的にどこも一緒のようだ。
「ん?もう移動したの?」
私は半信半疑で質問した。
「ああ、ここが王都だ。」
と、言われても景色は変わらないので、全然変わり映えはない。
「まあ、まだわからないわよね。移動後に景色が変わると酔ってしまう人もいるから、転移できる広場の景色はどこも統一されているのよ。広場から出ればわかるわ。」
なるほど。そういった配慮があるのか。それにしても、転移は一瞬でなんの衝撃もなかったな。快適すぎる。
「そうだな。じゃあ向かおうか。」
父がそう言い私たちはを先導して歩き始めた。広場が広いから向かいたい門までが長い。こういうデメリットがあるのか……。
門についてすぐ目の前が王城だった。王都は転移の広場と王城だけだ。王城と反対側の門から出ると城下町のように店舗等が立ち並んでいる。
「……あれが王城?」
私はあまりの大きさに圧倒された。母は昔ここに住んでいたのか……。お城なんて某夢の国のお城しか見たことがない。そのお城よりもはるかに大きい気がする。
「そうよ。お母さんはここで生まれたのよ。」
母が答えてくれた。ここで生まれ育つってどういう気持ちなんだろう…。色々なしきたりがあるんだろうなぁ。面倒そうだなぁ!
「お父さんも久しぶりに来た。相変わらずでかいなぁ。……、ウチの倍はあるなぁ……。」
後半何やらボソッと言っていたが聞こえなかった。
「王城としては一般的よ?ちなみにどの国も大きさが一定で格差はありませんよって謳ってるの。」
そんなところまで……。王族は王族で面倒なんだな……。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
王都につきました!
転移って便利ですよねぇ