60.立ち食いシチューと野球少年の愚痴
「なんと礼を言ったらいいのか……。あの、お騒がせしてすみません」
「まったくだ。いくら心配だからって、治療院にそんなヤツ連れてこられちゃ困るぜ」
ギロリと鋭い視線と実直な非難を浴び、返す言葉もない。
「…こんな時に何処で診てもらえばいいのか、分からなくて。動物や魔物の治療院ってあるんでしょうか」
「そんな奇特なモン知らねぇよ。少なくとも、ここいらにはねぇ」
動物専門の病院というのは、どうやら身近なものではないらしい。というのもペットとはお貴族の道楽であるというのが一般的な認識で、そんな動物を診る医者はその貴族お抱えだったり、使用人が兼ねていたりする。つまり、市井に開かれているものではないのだった。
やはりそうだったか…。動物病院さえ無いなら、魔物の病院なんてもっと無いだろう。
何故かナビはこの治療院を指し示したが、このアラスター医師の怒った反応を見るに、動物病院ではなさそうだ。
「あんた、ここらの人じゃないでしょ?どうやってここを知ったの?」
「えーっと……検兵やまわりの冒険者たちに片っ端から聞きまくったんです」
助手らしき少年に尋ねられ、俺は咄嗟に大嘘をつく。ナビに載ってましたなんて言えるはずもない。
「そしたら、ここなら動物も診てくれるかもと教えてもらえて」
「ははは、どーりで。そんな噂たっててもおかしくないもんな、旦那は」
助手くんはそれで納得してくれたようだ。揶揄うような口調だが、アラスター医師を見上げる目にはハッキリとした信頼が込められている。
なんでも彼は養鶏場に請われて鳥の様子を診たり、馬丁の相談に乗ることもあったらしい。ああ。もしかしたらそれで、ナビが動物病院としてここを候補地にあげたのか?
薬師としての腕が高いアラスター医師は近隣の住人だけでなく、離れた集落の人を診る事もあるという。その傍らで、前述のような動物の診察もこなすと…。ありがたやと畏敬の念を深くする俺に反し、小柄な医者は「俺ぁ獣医じゃねぇ!」と憤って否定した。
「ふざけやがって、どこのどいつだ!そんな事言いやがったのは!検兵か?冒険者か?」
「ど、どっちだったかな……。あ、そうだお代!これ受け取ってください…迷惑料として」
話題を変えるため、握りっぱなしだった金品を掲げる。俺は感謝と申し訳なさでいっぱいだが、アラスター医師からすればトチ狂った要望をされてさぞ不快だったろう。何とかお詫びをしなくては。
色んな支払いが楽なので、持ち歩いてるのは銀貨ばかりだ。あまり嵩張るのはかえって迷惑だろうか。とはいえ、高価な首飾りだ宝石だをポイッと渡すのもどうなんだ?
迷っていると、音もなく助手くんが隣へやってきた。いつの間に。
「良かったなっ旦那!親切は他人のためにあらずってヤツじゃん?」
「それを言うなら『情け』だ。ニコラてめえ、さっきから余計な事ばかりしやがって…!」
助手くんはターコイズブルーの目を爛々とさせて、俺の手元へ熱い視線を注いだ。何やら上手いこと言おうとしたようだが、アラスター医師にダメ出しされている。
…聞き馴染みのあることわざだったな。それって異世界から伝わったのだろうか。それとも、俺の知っていることわざへいい感じに翻訳されてるだけなんだろうか。溢れたミルクに泣くな、みたいな。
「何だよ、いいだろ。旦那は貰えるもん貰えて、このヒトは大事な相棒が助かった。両者ハッピー、めでたしめでたし」
「次はスライムでも診ろってか?俺がヤブの獣医だなんて噂がたってみろ、てめぇは今後一切ここを出禁にするからな!」
「えぇーっ?おれのせいじゃないでしょ!」
「面白がって余計な口出しした報いだ、阿呆。さっさと帰れ!」
帰れと告げられた助手くんことニコラ少年は、途端に慌ててアラスター医師を宥めはじめた。
あれ、助手を追い出しちゃうのか?そう不思議に思って初めて、ニコラくんの格好に意識がいった。革鎧にがっしりしたブーツ。腰に下がるポーチと短剣。町医者の助手というより、冒険者の出立ちである。
「おい、アンタもだ。気分が悪くないんなら、そいつを連れてもう行ってくれ」
「はい、大丈夫です。本当にありがとうございます」
「どうしても心配なら、故郷にでも帰んだな。魔族の国になら魔物の獣医くらいいるんじゃねぇのか?」
「……俺、人間です」
せめて受け取ってほしいと金品を手渡そうとしたが、医者には明確に断られた。「その代わり、ここを教えた阿呆野郎にしっかり言い聞かせとけ!ウチは動物は受け付けねぇってな!必ずだぞ」と念を押される。
そいつは街の人じゃなくて車のナビなので、安心してください…とは言えないが、医師の懸念が少しでも和らぐよう、しっかり頷いた。
「ケプッ」
「大丈夫か?」
「キー…」
腕の血をチビチビ啜ったおはぎは、やがて落ち着いて眠り始めた。回復したかの判別はつかないけど、それまで絶っていた血液をようやく摂取できたのだ。……きっと元気になってくれるはず。よくよく様子を見ておかないと。
もう一度アラスター医師へお礼を言って、入ってきたドアから外へ出る。お詫びを受け取ってもらえなかった俺は、客ですらない。完全にただの迷惑ヤローと成り果てるのだった。申し訳ない。本当に、すみませんでした…。
「あんた、これから毎日そいつに自分の血をやるのか?」
一緒に治療院の外へ出たニコラくんにそう尋ねられ、俺の意識は手のひらのおはぎへと戻った。
そうだな…。これからはフルーツや野菜と一緒に血も与えることになる。けど、毎日吸血されるのはきついな。
「いいや…そこまで無茶をしなくても、大きい街の薬屋とかに、適当な魔物の血が置いてあると思うんだ」
モストルデンの王都やリモダの街をプラプラした際、薬や魔道具を扱う店頭で並んでいたのを見かけた事がある。生き血が主食といっても、瓶詰めされた血じゃNGという事は流石にないだろう。ないよな…?
こんなことなら、リヒャルトたちとダンジョンアタックした時に得たグールの血液を少し貰っておけば良かった。あんなにドロップしてたのに。
「ふーん。てことは、その辺の魔物の血抜いたら買い取ってくれるんだ?」
「ん?君が?」
「おう!こちとら、冒険者でっす」
ででーん、と大仰に両手を広げて胸を張るニコラくん。
勝手にアラスターさんの助手だと思いこんでいたが、そうでなかった。なんでも、彼とは仕事を貰いに顔を合わせる間柄らしい。
「にーさん、はぶり良さそうじゃんか!なぁなぁ、今からおれがその辺の魔物の血を取ってくるから、買ってくんない?」
「えっ?うーん…」
「どうせ必要でしょ?その調子じゃ、手持ちに有るってわけでもなさそうだし。自力で取るの手間なんじゃない?」
「お、おう…確かに」
「さっきのじいさん、頑固だったろ?あのままじゃ、帰れの一点張りだったと思うんだ。まぁ、ああ見えてお人好しだから問診してくれてたけどさ、おれが口出ししたお陰って所もあるんじゃないかなぁ」
ぐいぐい来るねぇ、この子は。
それはそうと、血液は欲しい。相場も何となくなら分かるから彼の提案を受け入れたい所だけど…今この周辺って、村を滅ぼした魔物がいるんですよね。群れで。
「君一人でやるの?他にパーティメンバーは?」
「いないよ。だーいじょうぶ!ミーグラットやホーンラビットの血でも良いんでしょ?おれなら生息域が大体わかるし、それくらいの獲物はササッと仕留めれるよ」
おぉ、凄いな…まだ子供なのに。冒険者って本当に逞しい。
「でもなぁ……物騒な事件があったんだろ?君はギルドの強制依頼とやらは受けていないの?」
「それ、Cランクより下はお払い箱だよ。おれはDランクだから」
ニコラくんは途端に表情を曇らせてそう言った。俺としては良かったねという思いしかないが、本人は何故か不満そうだ。
しかし、Dランク冒険者が1人きりか。いくらなんでも危険だ。凶暴な群れがうろついている地帯へ「それじゃ頼みますね~」なんて送り出せんよ。
「ごめんな。こんな時分でなければお願いしたい所なんだけど…。また機会があったらにしよう」
すっぱりお断りすると、ニコラ少年は一層顔を顰めてしまった。
「ま、待ってよ。兄さん旅人だろ?またの機会なんて無いよ。おれ今、少しでも収入がいるんだ!」
俺は少々面食らう。魔物の群れの件を出しても食い下がってくるとは思わなかった。ニコラくんは慎重派ではなく、野心派の冒険者なのだろうか。
さりげなく彼を観察する。歳は少女ボスと同じか、少し下くらいだろう。ふわっとした黄土色の髪に晴れた秋空のような碧眼。健康的だが、冒険者としては頼りなく思える体格。革鎧や短剣が無ければ、爽やかサッカー少年といった印象の子供だ。
「なぁ頼む。ヘマしても逆恨みなんかしないよ!マジで入り用なの!人助けと思って」
「どうしてそんなに…」
思わず尋ねると、彼はグローブをはめた両手をぎゅっと握って俺を見上げる。
「ちょっと探してるヤツがいて、どうしても街の外に出なきゃいけないんだ」
それは何とも不穏な話だった。
ニコラくんには一緒に野球をするチーム仲間がおり、例の村襲撃事件の頃から姿が見えなくなっているのだという。そんな仲間を捜索しようにも村との距離は日を跨ぐため、その分の装備を整えなくてはならない。
なんて折に現れた俺を、ニコラくんはすっかり金ヅル認定している様子だった。友人が心配なのだろう。それは分かるけど…
「君が1人でその村に行くのは、危なすぎるんじゃないか?」
「そんなん織り込み済み!それでも行くの。これはおれの事情!まー要するに、あんたが血をお願いしようがしまいが、おれは外に出るってこと。だから何にも気に病まずに血を買い取ってくださいな。おれは資金を調達できて、あんたは相棒のメシを貰えて、両者ハッピーめでたしめでたし。なっ?」
なんて子だよ。爽やかサッカー少年どころか、向こう見ず野球少年じゃないの。
「おれの事情」などと言われちゃ、赤の他人の俺が止めるのは憚られる。危ないからやめなさいなんて言うのは簡単だが、相手は冒険者ーー危険を伴う仕事で生計を立ててる者だ。
……。
「だが断る」
「え~っ」
「どう考えても無茶だって。友達は心配だろうけど…それこそ、今Cランク冒険者たちが向かってるんだろ?その人たちに任せるべきだよ」
「ぜんぜん友達とかじゃねーし!ただの同業者。このまま身元不明じゃ、大事な取り決めがパァだから困ってんの。行くしかないじゃん…!」
最後はため息混じりでそう溢すニコラくん。
彼は他の冒険者とパーティを組んでなんとか強制依頼に参加しようとしたものの、上手くいかなかったらしい。そもそもギルドに招集された人手は魔物の捜索と掃討が目的で、街に住む少年の安否を追うものではないと。なんと世知辛い。
しかしそれはそれ、これはこれである。どうしても行くというなら止める義理はないが、向こう見ずの片棒をかつぐのはごめんだ。
「血をどうこうは断るけど、昼飯なら奢るよ」
「うぅー…」
俺はそう提案するも、ニコラ少年はあからさまに肩を落として見せた。折角の金ヅル、ここで捨て去るものかとその目が言っている。参ったな。
「ホラ。屋台でもお店でもいいから行こう。この街は初めてなんだ、何処かいいとこある?」
「………んじゃ、こっち」
不貞腐れたような顔で通りを指差すと、ニコラ少年は先導して歩きはじめる。取り敢えずはかわせたようで、少しホッとした。
美味いもんいっぱい食えよ、少年。
ーーー
流石、地元の子だ。ここへやって来たルートとは全く違う路地を迷いなく進み、いつの間にか街の大通りへと戻ってきていた。
案内されたのは通りに面したレストランで、いかにも人気店といった店構えだ。入り口から覗ける店内は、がやがやと人で一杯だ。
「ここの肉団子シチュー、めちゃくちゃうまいんだ。奮発すればパンもフワフワのやつ出してくれるぜ」
肉団子のシチュー。名前だけで、なんて美味そうなんだ。店先の一角にはテイクアウトの受け渡し口があり、器を手にした数人が野外で舌鼓をうっている。
ニコラくんが注文し、程なくして2人前を受け取る。大きな器に盛られたトロトロのシチューに、真っ白な丸いパンが添えられている。たまらない香りだ。
店先で並んで頂く。立ち食いそばならぬ、立ち食いシチューか。
「中に入らなくて良かったのか?」
「いいよ、混んでるし。大体、そのチビすけがいたら入れないじゃん」
嬉しそうに大きな肉団子を掬い上げながら、ニコラくんがおはぎを視線で指す。チビすけはカバンの上で丸まって眠ったままだ。
どうやら気を使ってくれたようだ。
「なぁ、あんたって何してる人?どうしてプラムバットなんて引き連れてんだ?」
「あーっと…コイツとは成り行きで従魔になったんだ。知り合った魔族に唆されたというか」
俺は言葉を選んで口ごもる。正直に「荷運び中です」と告げても、色々と訝しがられるだろう。荷物はどこだ、どうやって運んでるのだ、と尋ねられるのも不毛だ。
「ちょっと事情で家に帰れなくなったから、住みやすいっていうキーストリア王国を目指してるんだ」
「住みやすい……ふーん。なんか大変なんだな」
「君こそ、チームも組まずにその歳でソロの冒険者なんだろ?」
たった一人で冒険者の道を選んで生きている少年にいささか気後れを感じてそう言うと、彼は今気がついたという感じで「あ。おれニコラね」と自己紹介を挟んだ。なので俺も「シマヤです」と軽く名乗る。
「ソロっていうか、独り立ちしてるわけじゃないんだ。いつもは色んなパーティの下っ端してんの」
駆け出しとして受けられる依頼をコツコツこなし、Dランクにまで上がったニコラ。ここから更に一人前となるには、護衛や討伐の依頼をこなすパーティに付き添い、経験を積まないとならない。
生憎現在は、強制依頼のせいでそういった付き添いができなくなっているのだが。
「野球やってるんだよな?メンバーはみんな冒険者なの?」
「いいや、おれともう一人だけ。あとは色々だよ。あちこちの話が聞けて便利なんだ。どこそこの店が人手不足になるかもとか、どこだかの商隊が来るだとか」
「あぁ、そういう…」
身を立てる傍らで子供らしい遊びをしているのかと思いきや、そんな現実的な理由もあったとは。なるほど。考えてみれば、ギルドとは違う筋で己の身になりそうな情報を得られる場なのかもしれない。
投手は肩を壊すと聞くから、冒険者業に支障が出そうだと思ったが…その辺りはきちんと考えているみたいだ。
「投げてるのは洗濯屋の跡取り。コントロールはイマイチだけど、すげぇ速いぜ」
「へぇー。チームはいくつあるんだ?」
「んーと……6くらいかな。大人のも入れると、もっとあるな」
そんなに…!野球が盛んな街だ。気にした事なかったが、これまで訪れてきた街にも野球チームってあったのだろうか。
熱々の肉団子を頬張ろうとした手を止めて、ニコラがそっと呟く。
「本当はすぐに試合があったんだけど、一人抜けやがったから…しばらくヤキューも中止だ。ったく、迷惑な話」
あぁ、そうか。行方不明となったのは彼のチームメイトなんだったな。
「その…友達も街の子なんだよな?どこかに出かけているだけだったりしないのか?」
「友達なんかじゃないってば」
何故か執拗に強調して、ニコラはシチューに浸したパンにムシャムシャがっついた。微かに浮かんでいた寂しげな様子が、冷めた仏頂面へすり替わってしまう。
「もう7日も姿を見てないし、ギルドに問い合わせたら依頼を受けてる訳でもなかった」
「家族とか、一緒に住んでる人は?」
「身寄りは祖父さんだけだって言ってた……。その祖父さん、マホチェク村に住んでんだ」
「それって…」
件の村の名前じゃないか。
なんてこった。ならそのチームメイトは、お祖父さんの安否を確かめに村へと行ってしまったのでは。同じ考えなのか、ニコラも仏頂面のまま沈んだ声で続けた。
「片っ端から知り合いを当たったけど、誰にも言伝を残してなかった。あいつ、誰にも言わずに街を出たんだ」
村の襲撃があったのは、9日前だと推定されてるらしい。そんな時期に街の外へ飛び出したとなると、やはり村にいる祖父を案じての行動である可能性は高い。
そして未だ戻らずだ。俺は押し黙る他なかった。
「ちょうど村が封鎖されたのも7日前くらい。村には調査で冒険者がいるから、そいつらと鉢合わせて上手いこと同行してる場合だってある」
「そ、そうか…」
ニコラは希望を捨てていない。考えてみれば、強制依頼のせいで辺りには冒険者がわんさか駆り出されているのだ。どこかで保護されているかもしれない。冒険者ではなく魔物に鉢合わせている可能性も、同じくらいあるが…。
しかし街にいるだけではなんの情報も入ってこず、ただやきもきと待つしかない。そんな7日間ですっかり業を煮やしたニコラは、一人で確かめに行こうとしているのだった。
「二重遭難」の文字がデカデカと頭に浮かぶ。早まるんじゃないと言いたい所だが…彼自身そんなリスクは分かっているのだろう。
ニコラにとっては顔も名前も知ってる同業者で、一緒に野球をする程の仲間なのだ。
「ギルドに頼めないなら、検兵は?何かしてくれないの?」
「ない。まだギルドの方が動いている。一冒険者のおれじゃあいつらに顔なんて効かないし、騎士団も来そうにないって聞いたよ」
「騎士団?」
「要するに、領主さまんとこの人手ってこと」
本来なら、領主の膝元から騎士団が派遣され、冒険者ギルドはそのお手伝いをする……という手順の筈だが、その騎士団が来る様子はなく、討伐依頼だけが出されたという。ちなみに検兵ももとを辿れば行政、つまり領主の管轄だ。
ええ……。自分のとこの村がひとつ潰れたというのに、領主は知らんふりかよ。それって大丈夫なのか。この土地の事情があってやもなくの対応なのかもしれないが、それにしてもなぁ。
「…あのさ、よそ者の俺が言うのもなんだが、あまり無茶するなよ」
「嫌だね!こっちはいつもの依頼も駄目、ヤキューも駄目でやる事ないんだ。あの野郎に文句言ってやらんと気が済まねーよ!」
ニコラは空っぽになった器の底をスプーンでコツコツ叩きながらそう言い放つ。聞く耳持たんな君も。
ニコラが怒りを向けている相手はナダという子で、同じ時期に冒険者となった少年らしい。恐らく何らかのトラブルに遭っているであろう不運な少年相手に、そんな怒らなくてもいいじゃないか。
「絶対に、絶対に見つけねぇと」
…もしかしたら、心配のあまり腹を立てているのかもしれない。
「ひと束6000Gは固い」「恩売って取り分を8:2に」とかブツブツ言ってるが、本音はそういう事なのだろう。きっと。
この様子では、部外者の俺が何を言おうが諦めてくれなさそうだ。




