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51.餞別貰った

お二人からの質問をのらりくらりとかわしつつ、他愛無い世間話をする。例のBランクパーティが明日からにもダンジョンへ戻るのだと聞いてギョッした。


「あ、あんな血塗れになったのに、また行くってか!?」

「攻略意欲の高い連中なんだろーね。Bランクだし」


冒険者チームは傾向が多様だ。俺たちチーム・サンカヨウやこのお二人の属するチームのような、計画を立て慎重に稼ごうとする者達もいれば、明日をも知れぬ身・ならば一攫千金とばかりにずんどこ邁進する人たちもいるという。

俺からすればとんでもないが、それが冒険者というものなのかもしれない。こんな世界だ。そうしなければ生きていけなかった境遇の人だっているのだろう。

そんな界隈に身を置く若者二人へ思わず視線を注げば、「「?」」と不思議そうに首を傾げられた。兄妹みたいだな。


「旦那ら、従魔がいたよな?あのネコとプラムバットは連れてないの?」

「オハギちゃんならいるよ。ウチの子らは留守番だ」

「キィ?」(呼んだ?)

「わっ、出た!」


自分が話題に上がったと察したおはぎが、ノソノソッと裾の内側から伝ってきた。


「ほんとにただのプラムバットだ…。ネコもプラムバットも、ダンジョンでどうやって役に立つの?」

「いや、よく見ろよ。コイツ妙に毛がツヤツヤだ…!やっぱりなんか秘密があるんじゃないのか?」

「なんの秘密よそれ」


ツインテ女子とイケメン剣士にじろじろ眺められ、警戒したおはぎは毛をふわーんと膨らませた。ツヤツヤなのは今朝のブラッシングのせいだぞ、諸君。


「キ…」(なんだよぅ、こいつら…)

「別に大丈夫だよ。毛が綺麗だねって褒めてくれてるぞ」

「キィー?」(良いヤツなの?)

「そうそう」

「キィ、キーィ!」(じゃあまた自慢する!)

「せんでいいから」


いつぞやのように自分の宝物を自慢しようと意気込む毛玉を抑えている間に、二人の関心はイアニスの方へ向けられた。「ネコってテイムできるの?」という疑問に「あの子たちとはたまたま気があってね」と流れるように嘘を吐いている。

リヒャルトは有名人だが、イアニスは冒険者として特に知られていない。ギドーホッグのテイマーである事も貴族である事も、明かす気はないらしい。


「ダンジョンにいると気持ちが殺伐としちゃうだろう?だから可愛いモフモフに心を癒してもらうのさ。リヒャルトもあの子達にはメロメロなんだよ」

「あっははは!想像しちゃった…!」

「だ、旦那ァ…マジでいってる?」


因みにダンジョン攻略中、リヒャルトがロレッタちゃんたちに癒されていた素振りは全く無い。むしろイアニスの操るスズメバチにぶっ刺されて敗北した身だ。裏で勝手に猫好きキャラにされていると知ったら、キレるに違いない。


「本当だって。気持ちが和めばコミュニケーションがスムーズになって全員の士気が上がる。つまり僕らがパーティとしてやっていけたのは、あの子達のおかげでもあるんだよ」


さも本当かのように真面目な面持ちで言い張るイアニスに、二人とも困惑気味だ。嘘だよ、ウソ。

やがて根掘り葉掘り聞くのを諦めたツインテ女子とイケメン剣士は、手を振って仲間の元に去って行った。俺たちも「達者でね」と別れの挨拶で見送る。


「さて、荷車を調達しようか」

「なんか知らんが、やけに勘繰られたな」

「ああ。僕らはともかく、シマヤさんも魔法使いと思われてたね」

「というか魔族にされてた…」

「そりゃ従魔がいればね~」

「キキィ~」


魔物を従えるテイムは魔族の専売特許のようなものだ。人間と違って魔族は魔物の言葉が分かるもんな。


「見た目はシマヤさんが年長だし……案外、僕とリヒーの師匠だと思われてたりしてね?」

「そりゃないだろ、いくら何でも。…てか、やめてくれ。俺はピチピチの25だ」

「人間でも25はピチピチじゃないでしょう…」


なんでも、10代後半で所帯をもつのはザラだという。ぐぬぬ…悲しいから、この話題はもうよそうか。

悲しいといえば、あの可愛いリス獣人の受付さんに最後一目お会いしたかったなぁ。非番なのか、今日は見かけられなかったや。

さようなら、モストルデンの冒険者ギルド。


その後、荷車を求めてごみごみとした商店街(マーケット)を歩く。観光がてら何度か来たが、ここは色んな店が建ち並んでいる。百貨店というものは無く、靴は靴屋、食器は食器屋といった具合に品種の数ほど店があるのだ。

おかげで訪れるたび発見があって楽しいが、今みたいに何かを探している時は大変だ。


やっと目についた家具屋で、良さげなものを購入。滑車が付いた木製のソリだ。これなら車に積んでもあまりスペースをとらない。

さて、帰ろう。

店だけでなく人でもごった返す商店街を離れ、イアニスに周囲を見張ってもらいながら車を出す。乗り込んだ時には俺もイアニスもくたびれて、おはぎはぐっすり眠っていた。声をかけて、いつもの定位置にぶら下がってもらう。


「ほら、起きろ。ケツに敷いちまうぞ」

「キ…」

「ハァー…この窮屈だけど便利なクルマとも、今日でお別れか」


イアニスが大きく伸びをしながらしみじみといった口調でそうこぼす。

そうだった。報酬も受け取った事だし…これで明日、商会の荷物を運び込めば、俺が王都にいる必要はなくなる。


「口利きはしたけれど、この先商会で長くやっていけるかは貴方の働き次第だ。頑張ってくださいね」

「うん。まー…色々あったけど、ありがとうな」

「こちらこそ」


上手くやっていけるかという不安は途方もない。しかし、この世界で仕事という「やる事」が見つかったからか、今までにない安堵感のようなものを持てた。

やったるぞ。全ては、地に足のついた生活の為。それができなきゃ、またこの二人に頭を下げて塔ダンジョンで金稼ぎする羽目になりかねん…!魔物もそうだが、もうあの狭い通路によるクランク地獄にはしばらくお目にかかりたくない。

車はやっぱり、屋外を走らんとな。


レダート邸へ帰還した後、人目の心配の無い邸内で車を出して目的地の確認を行う。勿論、イアニスの許可を得てからだ。

アドリーさんから頂いた書面によると、最初の荷降ろしポイントはここから東のゾナドフという街だ。ナビで確認すれば、大きな河沿いにある。


「クルマだとどのくらいだ」

「2時間ちょいかかるな」

「…速すぎるのも考えものだね」


そうなのだ。王都からゾナドフへは、本来なら2日かかる道のりらしい。そこへ半日もかからずに「お届けでーす」と荷物を持ってくる奴など、いくら商会の身分証があろうと不自然過ぎる。最悪疑われて、荷物を受け取ってくれないかもしれない。


「程よく観光でもして調整しなよ。良いところだよ。魚が美味しくて」

「そうだな。えーとその次は…ラフィードって街か」


ナビをぽちぽちしてキーワードをいれる。「ラフィード」「ザクンダ商会」と…よし、出たぞ。書面には商会の位置は大体しか記されていないので助かる。ナビ様々だ。

最初の目的地・ゾナドフから次のラフィードまでは、大体1時間半という所か。


「ゾナドフ、ラフィード、それにリモダか。そのままダムザに伝えたら、半月分の食料を持たせようとするだろうなー」


どう説明したもんか…と苦笑している。

食料ね。半日もかからない移動なので昼飯があれば十分だが、側からすれば数日かけての長旅だ。優秀執事のダムザさんなら「客人の門出にお昼ご飯一つしか持たせないつもりか」とイアニスへ苦言を呈しそうだ。

頂けるのなら頂戴したいが、俺の車はこれから積荷でパンパンになるからなぁ。お断りするしかない。


「その分、お前らが持って行けよ。レダートまで一週間かかるんだろ?」


俺はそう声をかけた。この二人も数日後には王都を発つという。

正直「レダートまでクルマで送っていけ」と強要されると思っていたので、乗合馬車を使って自力で帰ると聞いた時は意外だった。助かるけども。


「お気遣いありがとう。僕らはどうにでもなるさ」

「他人を気にしてる場合か?ド素人のフラフラ一人旅など、つまらん連中のいい鴨だ。せいぜい尻尾を出さんようにするんだな」


うーん、ムカつくなぁ。リヒャルト節で「お前も気をつけろ」と言ってくれてんのかもしれないがよ…。言い方がよ…。

全く。とうとうコイツらともお別れである。



ーーー



翌朝。

今日も今日とてギーギー、ヂーヂー言ってるおはぎとパメラちゃんの声で目が覚める。日の上り具合から見て、やや寝坊だろうか。せっせと支度を済ませて荷物をまとめ、忘れ物が無いか部屋を見回していると、足元にパメラちゃんがやって来た。


「ヂー」


ピンクの鼻をひくつかせてこちらを見上げるパメラちゃん・イタチのすがたに最後のご挨拶をした。よしよし。体温はないが、撫で心地が滑らかだ。

元気でな、パメラちゃん。


「キキィー?」(おはぎのブラシタイムは?)

「後でな。寝坊しちまった。ほら行くぞ」

「ギ…」(なんと…)


2匹と一緒に下へ降りると、イアニスとリヒャルトがすでに待ち構えていた。いつもは忙しなく働いている5人の使用人さんも、勢ぞろいで迎えてくれている。


「お見送りもできず申し訳ないが、僕はこれから用があるので行くよ。ささやかだけど此方をどうぞ」


イアニスが言うと、ダムザさんが包みを俺にくれた。中身はいつかも食べたミートパイと、鮮やかな青リンゴだ。ブラシッングをサボられ不貞腐れていたおはぎのテンションがやにわに上がる。

そしてもう一つの袋には、スクロールがぎっしり入っていた。「旅の無事を願って。あなたの魔力量なら、問題なく使えるだろう」との事だ。目眩しや火おこし、認識阻害、炎や雷の攻撃魔法まで揃った、イアニスセレクションだった。

あとで落ち着いたら、一通り確認してみるか。


「代わりにリヒーが街の門まで送っていくよ」

「行くぞ。クルマは無しだ」

「は!?な、なんで?」

「黙れ。文句は受け付けん」


リヒャルトが、俺らをお見送りィ!?一体どういう風の吹き回しか。

警戒心マックスで躊躇う俺に、イアニスは苦笑して「今回はもう何も企んでないから」と首を振った。今回「は」だと?もうどこからツッコミすればいいんだよ。


「めんどくせーから早くしろ。何とかって所から荷物を取りに行くのだろう」

「あ、おう」

「シマヤさん」


スタスタと玄関へ行ってしまうリヒャルトへ続こうとすると、イアニスが声をかけてきた。


「本当に、ありがとうございました。レダート家は貴方から受けた恩を忘れません。いつかまた我が領へ…新生・サンカヨウへお越しくださいね」


貴族の御礼のポーズ、再びだ。礼を述べるイアニスに続いて、後ろのダムザさん達も一様に頭を下げる。

思わず鼻白んでしまった。リヒャルトも行っちまうし、ここは言葉通りに受け取っておこう。


「あ、うん。温泉経営頑張ってな」

「キィッ!」(バイバイ!)

「ああ」


穏やかに微笑む糸目顔に手を上げて、レダート邸の玄関をくぐる。すぐ前には馬車と御者さんが待っていて、リヒャルトが席にふんぞりがえって座っていた。


「ナントカ商会まではこれで行く。そこから東門までは徒歩だ。どうせクルマで門をくぐる気はないのだろう」


御者さんはザクンダ商会の位置をイアニスから聞いているという。とりあえず乗り込んで座ると、テキパキと支度をして手綱をとった。

そんな様子を見ながら、隣りに声をかける。


「何事だよ。人の見送りなんてするタマか?」

「だ、ま、れ。門などすぐなんだから、ガタガタぬかすな」


ピシャリと言い放って、仏頂面を正面に向けるリヒャルト。何を企んでるのかと、こっちはハラハラだ。

しかし、馬車は実に淀みなく通りを走り抜けていく。真っ直ぐにたどり着いたのは、昨日も訪れたザクンダ商会の倉庫だった。

送ってくれた御者さんに礼を言って別れ、昨日ぶりの受付へ向かう。


「おはようございます。荷物を受け取りに来ました」

「おう、新入りか。あっちの一角に揃ってるぜ!ホラよ」


いいガタイのおっさんから、積荷のリストを受け取る。おっさんが示した場所に、釘で蓋のされた木箱が積み上げられていた。クラーテルジンジャー等の箱が全部で12箱。それプラス、各地ごとに纏められた郵便書類だ。


「こんなもんを引きずって歩くのか」

「まっさか!どっかで車に積むよ」


これまでの滞在中で、車の出せそうないい感じのスポットを探してある。俺はえっちらおっちらとソリに箱を重ねて積み上げ、ロープに固定した。いっぺんにはちょっと無理かな…。


「やっぱり歩くんじゃねーか!仕方ない…」


ため息を吐くと、リヒャルトは積みきれなかったジンジャー箱をヒョイっとアイテムボックスに仕舞い込んだ。

ずるいぞ…羨ましいなあ、そのスキル。俺もワンチャン貰えたかもしれないのにと思えば尚更だ。


「あ、ありがとよ。てか大事な積荷なんだから、パクるなよ?」

「いるかこんなもん…!」


互いにぶつくさと言い合いながら、人気のない路地へと向かい車を出す。譲り受けた認識阻害のスクロールが、早速大活躍だ。

トランクを開けて(久しぶり、勇者の剣さん。ちょいとそこ詰めてね)木箱を積み込み、再チェックとしてリストで数を照らし合わせる。よし、オッケーだ。


バタンとトランクを閉めてキーをロック。車がスーッと消えてくのを確認して、リヒャルトへ向き直った。


「はい、終わった。東門ってどっちだ?」

「ついて来い」


スタスタと歩き出す後についていくと、静かな路地を後にして堂々たる大通りに出た。賑やかな人混みとすれ違いながら、無言で足を進めていく。

あー…気まずい。なんでまた見送りに来たんだ?イアニスに言われたんだろうか。いやしかし、何故?

話しかけようにも話題も無いし…口をひらけば憎まれ口だもんな。どうしようかと考えていると、ふいにあることを思い出した。


「そうだった。お前に聞きたいことがあったのに、忘れてたよ」

「あ?何だ」

「前に酔っ払いの精霊様と会った時、お前とおはぎが付けていた紐があったろ」

「ああ……魔繋ぎの紐だ」


リヒャルトの赤い目が怪訝そうにこちらを向く。それがどうした、という顔つきだ。

おはぎの食い気のせいではぐれた昨日の経緯を話すと、リヒャルトは馬鹿にしたように鼻を鳴らして言った。


「くだらん。それでは従魔ではなく、ただのペットではないか」

「俺はもうそう思ってるけど」

「キィ~?」(ペットってなに?)

「ハッ!友人か何かのつもりか?主人がそれでどうする。曲がりなりにも契約を交わした仲なら、下僕(しもべ)に役割を与えるのが務めだろうに」


役割りねぇ。

ふとダンジョン攻略での一場面を思い出した。あの時リヒャルトは勝手に声をかけ、おはぎに隠し部屋の偵察へ行かせていたっけ。


「そういうもんか…?」

「そうだ」

「キィッ」(おはぎは役に立つぞっ)

「嘘つけ。食ってるか寝てるかだろ」

「ギ!?」


とにかく。目を離している間に何かあった時のため、あの便利なヒモが欲しかったのだ。どこで買ったのかを聞いて調達するつもりだったのに…すっかり忘れてしまった。

後ろ髪を引かれていると、ふいにリヒャルトの手がずいっとこちらへ差し出された。


「ほらよ」


そこには、何処からともなく取り出された2組の紐がプラプラと揺れていた。金と黒のミサンガだ。


「ん?これ…」

「くれてやる。互いに魔力を込めてから結んでみろ」

「おっ?いいの?ほんとさっきからどうした!?具合でも悪いのかよ」

「何だと!?」


リヒャルトは怒りながらも、なんと魔繋ぎの紐を俺とおはぎにくれた。今日は中身が違う人なんだろうか。

俺が魔力を込めた紐をおはぎの後ろ脚に付け、おはぎが込めた紐を俺の手首に付ける。ファンタジー世界のミサンガは夢があるな。…しかしお揃いで付ける相手がちんちくりんの毛玉なのが微妙だ。


試しに手首の紐へ魔力を込めると、おはぎが「キィッ」(なんかキタ!)と反応する。逆も同様で、手首の周りがほんのり暖かくなった。

これで目が届かなくても、お互いを呼び出す合図くらいにはなる。少しだけ安心だ。


「ありがとな。これでGPSでも付いてりゃ完璧だけど、それは欲張りだな」

「じーぴえ?…また異世界のアイテムか」


礼を言う俺に構わずスタスタと再び歩き始めるリヒャルトに続いて、王都の通りを進んでいく。数分もすると、街壁の門へ辿り着いた。ダンジョンへ行く為に通った西の門とは反対の、東門だ。

出る際は並んだりしないようだが、入る時は検問の列ができる。今日も外にはずらっと人々が並んでいた。


「ここもすげー人だなぁ」


思わず呟く俺の隣で、リヒャルトは通りの向こうを眺めている。何か気になっているようだ。しかし俺がそちらへ目を向ける前に、いつもの不機嫌な声があがる。


「さぁ着いた。あばよ、クルマ人間」


おお。本当に何も企んでいなかったようだ。人を人造人間みたいに言うな。

どういうわけか知らないが、言葉通りに見送ってくれたリヒャルトにも最後の挨拶をしよう。


「はいはいあばよ、クソ魔族。温泉宿のオーナーがお客様にそんなお見送りしてたら、あっという間に潰れちまうからな。気をつけろよ」

「口の減らない野郎め」

「お前だ。全くもってそれはお前だから」

「貴様こそ、その見合わんスキルがバレて一文無しにならんよう気をつけるのだな」

「わかってるよ…!」

「キィキィッ」(さよならーっ)


最後までこんな感じなのだな。俺はさっさと歩みを進めて、人々の賑わう門へと向かった。おはぎを連れて。


門を潜って街の外へ出る。踏み鳴らされた街道が平地に伸びており、屋台や馬車、そして人々がワイワイと喧騒をなしている。

何となく振り返ると、ここから見える街の通りにリヒャルトの姿はもうなかった。


「はーぁ。今度は変なのに絡まれないようにしなきゃな…」


元はと言えば、ドルトナの街を出た途端に声をかけられたのが全ての始まりだった。また同じ目にあってたまるか。

周囲に立ち並ぶ露店への好奇心を抑え、街道を早足で進む。王都へ向かう人の流れは多いが、逆は少なかった。


ナビの地図によると、街道はゾナドフ方面へと続く河と並行して伸びていた。ここから見えるのは河沿いに茂る林の緑だけで、河自体は確認できない。水辺寄りは人が居そうだが、何処かの木立ちで車を出せるだろう。


てくてくてくと歩いて雑木林へ入り込み、おはぎに周囲を見張ってもらって車に乗り込めたのは、それから20分ほど経った頃だ。ブィーっと窓を開けておはぎを迎え入れながらナビを起動。

よく慣らされた街道に沿って、出発だ。


「ステルス運転モードへ移行します。車外へ出るときは安全を確認しましょう」

「じゃ、行きますか」

「キィ」(いいよー)



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