第93話 ゴーレム?
今日は朝からメイド服ではない服を、能力で作っていた。
メイド服は既に作り終えていて、ローダウェイク城で働いているメイドたちはメイド服を着用している。かなり好評なようで、順次他の町の屋敷で働いているメイドたちにも支給される予定となっている。
そして今、僕が能力で作っている服はモイライ商会で販売する予定の服だ。
カトリーヌさんのお姉さん、セリーヌさんもモイライ商会に加わったことにより生産性がアップしたため、モイライ商会で販売する予定の服も作れるようになったのだ。
高級な服だけじゃなく、一般人でも手軽に買える服は僕の能力で量産することになっているので、現在能力を使って作っているのだ。
「エドワード様、アルバン様がお呼びです」
アスィミが呼びに来た。狼耳にメイド服がよく似合っている。
「おじい様が? 今行くよ、案内してもらえる?」
「畏まりました」
アスィミの後を付いて行く。アスィミのメイド服は尻尾が出るようにカトリーヌさんが改造してあり、アスィミが歩くと尻尾が揺れるのでどうしても見てしまう。
「こちらの部屋になります」
どうやら到着したようだが、初めて来る部屋だった。
「おじい様、エドワードです」
扉をノックして話しかけると扉が開けられる。
「おお、エドワード。待っていたぞ!」
中に入るとおじい様だけでなく、メグ姉に父様や母様、おばあ様や家令のルーカスと知らないお爺さんがいた。
部屋の中には僕がセラータの町で見つけた財宝が並べられていて、恐らくアウローラ王国金貨の時のように、何か見つかったのではないかと思う。
「僕が見つけた財宝ですね。変わったものでも見つかりましたか?」
「さすがエドワードだ、話が早い。この方は鑑定士のアルケオ殿だ」
「エドワード様、鑑定士をやっておりますアルケオと申します。この度は珍しい品々を鑑定させていただきありがとうございます」
「エドワード・ヴァルハーレンです。こちらこそありがとうございます。何か見つかったのですね?」
「おお、そうだ。エドワード、木でできた箱を開けて中を調べていたらこのような箱が出て来たんだ」
そう言っておじい様が見せてくれた箱は、長さが1メートルぐらいの棺のような形をした箱だった。
「変わった箱と言うか、装飾が細かく豪華ですが、棺みたいな形なんですね。棺にしては小さいから子供用なのでしょうか?」
「やはりエドワードもそう思うか? しかしアルケオ殿の鑑定によればこの箱だけが、あり得ない技術で作られているそうでの、本当に同じ場所にあったのか確認したいそうだ」
「確かに見たことないぐらい綺麗な装飾ですね。でも財宝はまとめて持ってきましたし、そこ以外では見つけてないので間違いないですよ」
「やはりそうですか、しかし、間違いなく現代でもどういう技術で作ったのか分らない箱であることは間違いないですな。そもそも箱でありながら蓋の継ぎ目すら見つからないとは、どうやって開けてよいのかもわかりませぬ」
現代の技術か……そう言うのってオーパーツとか言うんだっけ? 僕は改めて箱をよく見まわしてみる。
「なるほど、確かに蓋の継ぎ目が見当たりませんね。箱ではないのでは?」
「それにしては軽いのだ」
試しに持ち上げてみると、確かに軽い。箱ではなく、中身が詰まっているならここまで軽くないはずだ。
「切ってみたらどうですか?」
「何と言うことを! このような歴史的大発見に傷をつけるなどもったいない話ですぞ!」
「そうなんですね」
改めて装飾を見てみると宝石が10個ついていて、これが棺だとすると、頭から1個、2個、2個、1個、2個、1個、1個の順で並べられている。
この並びどこかで見たことがあるな……。
そうだ! この間、空間収納庫を習得した時に、瞑想して感じた力の流れる位置に似ているな。
そうなってくると、魔法を習得した際に感じた流れの位置には宝石がないんだな。
大体喉の位置だったから、この辺りにないとおかしいのかな?
僕が喉ぐらいの位置を触ってみると、突然10個の宝石が輝きだす。
「えっ! なんで?」
『――!』
みんなもビックリしているが、僕が一番驚いている。そして光が収まると喉の位置に宝石が出てきた。
「エドワード、いったい何をしたのだ!?」
「僕も触っただけなので、よく分からないんですけど」
この宝石、浮き出てきたよ、地球の技術でも無理そうなんですけど! そう思いながらその宝石に触れると魔力を吸われる!
「なっ!」
ビックリするが身動き取れない、そこへ、メグ姉が僕に抱きつき箱から引き離す。
「エディ、大丈夫?」
「ありがとう、メグ姉。助かったよ」
「今のはどうなったの?」
母様が聞いてくる。
「その宝石に魔力を奪われました。動けなくなったところを、メグ姉が引き離してくれたので助かりましたが、かなりの魔力を吸われましたね」
「そうだったのね。突然のことでビックリしたわ。マルグリットさん、ありがとう」
僕から魔力を吸った箱の横に、継ぎ目が入り蓋のような形になる。そしてその蓋がズレて隙間から白い煙のような物が出てくる。
「みんな下がるんだ!」
父様が叫びみんな箱から距離をとる、僕の目にはドライアイスの煙にしか見えないのだが……。
そして、完全に蓋がずれると、煙の充満した箱の中から何かが起き上がり喋り始めた。
「私は……私は高性能ネコ型ゴーレムだ!」
『クマじゃん!』
みんなの心が1つになった瞬間であった。
「コレット」
「畏まりました」
母様が合図するとコレットさんが、自称ネコ型ゴーレムに鏡を見せる。
自称ネコ型ゴーレムは頷くと、また煙の中に一度横たわり、そしてもう一度起き上がった。
「私はクマ型ゴーレムだ!」
まさかのやり直しだった! そもそもゴーレムじゃなくて、どう見てもぬいぐるみしか見えないぞ、はっきり言えば50センチぐらいのテディベア。
「ぬいぐるみにしか見えないんだけど、ゴーレムってこんな形が普通なんですか?」
「いや、僕も初めてみるけど」
「儂も初めて見たし、聞いたこともないな」
父様と、おじい様も知らないらしい。
「私は個体名、エドワード・ヴァルハーレンの魔力によって起動された、高性能クマ型ゴーレムである。さぁ、私に名前をつけるのだ!」
「魔力によって起動されたって、勝手に奪っただけじゃん……」
「さぁ! つけるがよい!」
うーん、まさかクマのぬいぐるみに、名前をつけることになるとは……やっぱりクマのぬいぐるみと言えば。
「じゃあ、テディ……」
「それは、却下だ!」
「却下ってあるの!?」
「私の中の命名却下リストに含まれる名前だ。次の候補だ!」
却下リストって何なんだ地球のデーターベースでもついているのか? それじゃあもう1つの世界的なクマのぬいぐるみ。
「じゃあ、プー……」
「それも却下だ!」
「じゃあ、ミッシェル」
「却下!」
「レオナルド博……」
「却下!」
めっちゃ拘るじゃん。って言うかコイツ地球の事、絶対知っているでしょう!
「それじゃあ、ウルスって言うのは?」
「ウルスか、まあそれでいいか。これからよろしくな!」
どうやら、命名却下リストにはフランス語は入っていないみたいだ……ヌヌースにした方がよかったか?
「何をよろしく頼むの? って言うか喋り方変わってるし!」
「私に魔力を与えて命名したんだ、当然従魔契約が成立したに決まっているのだ!」
「えっ! そんなバカな!」
慌ててステータスを確認してみると。
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】26
【HP】870
【MP】235/1565
【ATK】760
【DEF】760
【INT】1140
【AGL】870
【能力】糸(Lv5)▼、魔(雷、氷、聖、空)
【加護】モイライの加護▼、ミネルヴァの加護、フェンリルの加護
【従魔】ヴァイス、ウルス
登録されていた……と言うか魔力1000ぐらい奪われてるじゃん。




