第92話 美味しいスープ
昨日の魔物狩りはとても有意義だった。しかし、ワンダリングデススパイダーはおじい様が倒したし、後半はジョセフィーナが主体となって魔物を狩っていたので、レベルは上がってないと思ったのだが2つ上がっていた。
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】26
【HP】870
【MP】1565
【ATK】760
【DEF】760
【INT】1140
【AGL】870
【能力】糸(Lv5)▼、魔(雷、氷、聖、空)
【加護】モイライの加護▼、ミネルヴァの加護、フェンリルの加護
【従魔】ヴァイス
よく見ると得意属性に『空』が追加されている。空間収納庫を覚えたからなのか、瞑想で光ったからなのかは不明だ。
空間収納庫を覚えたおかげで、食材だけでなく料理もストックできるようになったので、時間のかかる料理にチャレンジしたいというのは、ただの言い訳だが。
コンソメスープが無性に飲みたくなった! なんてことを思っても、地球と違って粉にお湯を注ぐだけで簡単に作れるわけではないので、飲みたければ自分で作らなくてはならない。
コンソメスープを作るにはまずはブイヨンが必要だ! ということで、取ってきた魔物や野菜を昨日からじっくりと煮込んでもらっている。料理人たちが交代で火の管理やアク取りなどをやってくれているのだ、1人で作らなくてもプロの料理人たちが手伝ってくれるのが分かったので、これからも色々チャレンジしてみようと思った。
「エドワード様、肉や野菜をこれだけ長時間煮込んで何を作られるのでしょうか?」
料理長のロブジョンさんは気になるようだ。
「これを少し味見して下さい」
出来上がったブイヨンをロブジョンさんや他の料理人に味見してもらう。
「――! これは!?︎」
「色々な旨味が凝縮してないですか?」
「確かに様々な旨味が複雑に合わさって、とても美味しいですな」
「肉や野菜を長時間煮込むとそのエキスがスープに染み出すようです。これを色々な料理に混ぜることによって料理のランクが数段アップすると思いませんか?」
「エドワード様はいったいこれをどこで?」
「旅の最中に偶々、鍋を火をかけたまま寝てしまって発見したのです」
さすがに前世の知識ですとは言えない。
「これは素晴らしい発見ですな! 全ての料理に革命が起きますぞ!」
「今回は肉を骨のまま入れたので時間をかけましたが、野菜のみでするとそこまで時間がかからないみたいです。あと野菜なら根に近い部分、肉なら骨からもエキスが出るので料理に合わせて使い分けるのが良さそうです。その辺りは料理長にお任せします」
「お任せください。それにしても煮込むものの組み合わせを変えるだけで味が変わるとは、組み合わせは無限に広がりますな」
「そうですね、作ったものは冷蔵か冷凍しておけば、日持ちしますから多めに作っても良いと思いますよ」
「素晴らしいですな、食材もたくさん狩ってきてもらえたようですので、色々と研究してみねばなりませんな!」
「その辺りは料理長にお任せしますのでお願いしますね」
「お任せください。ところで今回はこのエキスを使って何を作られますか?」
「試しにスープを作ってみようと思って」
「ほう、エキスを使ったスープですか! それは楽しみですな」
まず、ブイヨンを使う分だけ冷やしておく。次にラーゼンクーという大きく狂暴な牛の魔物の肉と、マーダークレインという鳥の魔物の肉を出すと料理長が反応する。
「エドワード様、その鳥肉は何という鳥の魔物でしょうか? 初めて見る肉質ですね」
「マーダークレインと言うらしいですよ、おじい様が言ってました」
「マーダークレイン! 幻の高級鳥じゃないですか! それをそのような肉片にしてもったいない!」
肉片じゃなくてミンチと言って欲しいのだが、ミンチと言う言葉は存在しないらしい。
ちなみにマーダークレインと言う鳥の魔物、見た目は大きな鶴なんだが白黒ではなく白赤でクチバシが鋭く怒らせると槍のように飛んで来るのだ。
数匹を糸で落としたところ、怒って一斉に飛んできたのでワンダリングデススパイダーの糸で蜘蛛の巣を作り、一網打尽で捕まえることができた。
おじい様の話によるとグレートボアクラスでも貫通する危険な鳥だったらしいのだが。
「魔の森の上空を飛んでたので、たくさん捕まえましたから、料理長も料理に使えますよ」
「本当ですか!? 危険な鳥なので捕獲が難しいらしく、1年に1羽出ればいいレベルの食材です。パーティーで是非使いたいので、エドワード様の空間収納庫にも確保をお願い致します」
「冷蔵庫に入りきらなかった分は、空間収納庫に入れてあるので大丈夫ですよ」
「それはありがたいですね」
料理を再開する。ミンチにした肉と玉ねぎなどの野菜、卵白を粘りが出るまで混ぜ合わせ、最初に冷やしておいたブイヨンを少しずつ混ぜる。
そして中火で沸騰直前まで混ぜると卵白が浮いてくるので、その下が透き通ってくるまでかき混ぜ、蓋をして弱火で1時間煮るわけだが。
「エドワード様の料理は実に不思議ですな」
料理長がそう言うと、他の料理人たちも頷いている。
「不思議ですか?」
「はい、スープ1つ作るのにかなりの手間暇をかけていらっしゃるようなので」
「旅の最中はエキスを抽出するような、時間のかかる作業は出来なかったからですね。でも先ほどのエキスを飲んだ皆さんなら分かるはずです。先ほどのエキスに更に旨味が加わるスープを想像してみてください」
誰かがゴクリと喉を鳴らした。
「答えは出ているのです。短時間で作れる料理がダメとは言いませんが、手間暇かけた料理が不味いはずありません」
後ろから声をかけられる。
「エドワード、今度はどんな料理を作ったのかな? 新しいの作ったら呼んで欲しいって言っていたのに」
父様だった。と言うか母様などみんな勢揃いしている……スープこれだけで足りるかな?
「実験的に作っていたので、美味しいか分からなかったのです、ちゃんと完成したら呼ぶつもりでした」
「でも今、『手間暇かけた料理が不味いはずありません』って言ってたよね?」
家族全員頷いている。メグ姉までそっち側なの!
「エディ、ズルいわ。お姉ちゃんなら失敗作でも味見するわよ」
「うん、ありがとう。次からは最初に声をかけるね」
『エディよ。もう良いのではないか? 先ほどから涎が止まらん!』
ヴァイスの口元がやばいな、涎は止めようよ。
「分かったよ、じゃあ仕上げに入るね」
火を止めてステンレスの網に布を敷いて濾していき、さらに浮いている油を掬うと綺麗な琥珀色のスープが出来上がる。色が薄い場合はカラメルなどで色付けして、綺麗な琥珀色にこだわるところもあるらしいが、今回はこれに塩、コショウして出来上がりだ。
完成したコンソメスープをカップに注いでいく。
「綺麗な琥珀色のスープだけど、具材は入ってないんだね」
「はい、具材はエキスにして飲むスープなので今回は入れてないです。もちろん入れても良いので、その辺りは料理長にお任せしたいと」
「じゃあみんな、エドワードの作ったスープを飲んでみよう」
『……』
あれ、みんな無言だ! 失敗したかな? 僕も慌てて飲んでみる。
美味い……あれ? コンソメスープなんだけどコンソメスープではないような。出汁にした魔物がちょっと豪華すぎたか?
「エドワード、このスープは毎日でも飲みたいわ!」
母様は気に入ったようだが、毎日は面倒だ。毎日お手軽に飲めるインスタントスープは偉大だな。
「この琥珀色のスープは凄いね! ロブジョン、パーティーに出したら驚くと思わないかい!?」
父様が珍しく興奮している。美味しかったようで何よりだ。
「ハリー様、これは素晴らしいスープ……お客様にはこのままの具材無しの状態で是非飲んで欲しい一品ですね!」
『エディ、おかわりだ!』
結局、空間収納庫にしまう分どころか、全て無くなってしまいもう一度作ることになったが、好評だったので良しとしておこう。




