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第87話 オークションからの帰還

 今日は朝からメイド服を作ったり、訓練したりしていたのだが昼過ぎになり、オークションへ参加しに王都まで行っていた、おじい様たちが帰還したのでみんなで出迎える。


「おじい様、お帰りなさい!」


「うむ、エドワードにみんなも、今帰ったぞ」


「エドワード様!」


 コウサキ親子のツムギちゃんが飛び出して来た。僕の名前をエドワードと呼んでいるということは、おじい様にでも聞いたのかな?


「ツムギちゃん、いらっしゃい。アキラさんもよく来てくれました。2人とも体調が良さそうなので安心しました」


「セリーヌ殿が差し入れしてくれたりしていたので、食べ物に困ることはなかったのでござる、それとこの道着をセリーヌ殿がエドワード殿から預かったという布で縫ってくれまして。エドワード殿には、どれだけ感謝しても足りないでござる」


「気に入ってもらえたのなら良かったです」


 コウサキ親子と話していると、名前を呼ばれ急に抱きしめられる。このちょっとだけ残念な感触は……。


「エディ君、来ちゃった!」


「セリーヌさん! どうしてここに?」


「あら? 雇ってくれるって言ったじゃない」


「確か狙われて王都にいられなくなったって……もしかして王都で危ない目に遭いました?」


「全然大丈夫だったわよ。エディ君のおじい様から、カティがここにいるって聞いたから、一緒に雇ってもらうために付いてきたのよ」


「お姉ちゃん!」


 カトリーヌさんが僕をセリーヌさんから奪い返すと同時に、残念感のない感触に包まれる。


「あら、カティ久しぶり! 本当に元気になってるのね、お姉ちゃん嬉しいわ。私もエディ君に雇ってもらうからよろしくね!」


「王都の店はどうしたのよ!」


「取りあえず休業にしてきたわよ。エディ君が王都に支店を出すときに、使えるかもしれないでしょ?」


「ほら、エドワード。いつまでも立ち話してないで中に入るぞ」


 おじい様に促されて城の中に入る。



 コウサキ親子やセリーヌさんの対応は一旦メイドに任せて、オークションの報告を聞くことになった。


「おじい様、オークションの方は上手くいきましたか?」


「うむ、予想以上に上手くいったと言えよう。まず絵画なんだが、およそ150年前の絵画らしくてな、金貨1120枚でブラウ伯爵のやつが競り落としたぞ」


『金貨1120枚!』


 みんな予想以上の高値にびっくりしている。


「ブラウ伯爵が落札したんですね」


「そうだ、レークスが言うには貴族派の、バーンシュタイン公爵に贈るのではないかということだ」


「なるほど、要塞絡みで色々貴族派に迷惑がかかっているので、ご機嫌取りという事なんですね?」


 父様が見解を述べる。


「レークスも同じようなことを言っておったな。それで次にジャイアントスパイダーの糸だが、ブラウ伯爵と競り合った結果、金貨3000枚でブラウ伯爵が落札したわい」


『金貨3000枚!』


「アルバン様のオークションでの金額の上げ方とても凄かったわよ」


「そうなんですね! おじい様、凄いです!」


「わっはっは! 凄いだろ! 孫に褒められるのは、こんなにも嬉しいものなのか!」


「父様それでアウローラ王国金貨はどの位まで引き上げたんですか?」


「孫に比べて、息子は冷たいわい。アウローラ王国金貨だが聞いて驚け。なんと金貨3万枚だ!」


『金貨3万枚!』


 みんな予想以上の高値でびっくりしている。


「おじい様。その3万枚という金額は妥当なんでしょうか?」


「明らかにオーバーしておるだろうな。6枚目の価値という事でも、いいとこ1万枚ぐらいが妥当なんじゃないかな」


「アルバン様の策略にブラウ伯爵が引っかかったって感じじゃないかしら?」


「さすがマーウォ殿は気が付いたか。ジャイアントスパイダーの糸の時に、ブラウ伯爵がバカなのは分かっておったから使えたテクニックだな」


「おじい様のテクニックが凄いのは分かりましたが、そんなブラウ伯爵に振り回されているっていうことに腹が立ちますね」


「ふむ、エドワードそれは違うのだ、7年前のエドワードの誘拐もブラウ伯爵が絡んでるとすれば、それは前ブラウ伯爵の仕業なのだ」


「前ブラウ伯爵ですか?」


「うむ、現在のブラウ伯爵のクリストフだが、本来は次男なので家督を相続する資格はないのだ。5年前ぐらいに前ブラウ伯爵と長男が盗賊に襲われて死亡するという事件が起きて、代わりに相続したのが現在のクリストフ・ブラウなのだ。だからここのところの杜撰な計画は、全てクリストフの計画ということになる」


「そうだったんですね」


 前ブラウ伯爵は有能だったが、現在のブラウ伯爵は無能という事なのかな。


「昔はそれほどバカって感じでもなかったと思うんだけどね」


 父様が言う。


「でも5年前の、前ブラウ伯爵が襲われた盗賊って、今のブラウ伯爵の仕業ですよね?」


「多分ね。ただブラウ伯爵領内の事件だから誰も介入出来ない。真相は分からないままだけど、今回のオークションは大成功だったってことだけは言えるね」


「おじい様のおかげですね!」


「そう言ってもらえると嬉しいな、それにしても落札金額がエドワードのモイライ商会に入ると言うのが笑えるがの」


「確かジャイアントスパイダーの糸は落札金額の5割だから金貨1500枚で、絵画とアウローラ王国金貨の手数料が2割だから入ってくるのは金貨2万4896枚、ということは金貨2万6396枚も入ってくるんですね!」


「さすがはエディだわ、まだ財宝もたくさんあるし、それを売るだけでも莫大な金額ね」


「あら、メグ。まだメイド服の件もあるからまだまだ増えるわよ!」


 そうだった。メイド服だけでも金貨3000枚になるんだった。


「そんなに多いと、お金の管理がよく分からなくなってきそうだよ」


「あら、そんなのエミリアに丸投げでいいんじゃないの?」


 さすがにメグ姉、それはどうかと。


「エドワード様、商会の運営やお金の管理についてはお任せください。というかやらせてください! まだ店舗も改装中だし商品も少ないのですることが少ないんです。既に商人ギルドのアリアナとも顔合わせしてきましたので、なんでも頼んでください!」


 うーん、エミリアさんはワーカーホリックなんだろうか。しばらくのんびりすればいいのに。


「分かりました。それではモイライ商会専属で働いてくれそうな木工職人を探してもらってもいいですか? この間はアリアナさん経由で作ってもらったんですが、専属で雇ったほうが便利そうなのと秘匿性が保てそうなので」


「確かにエドワードが作るものには秘匿性が必要だね」


「お任せください! エドワード様が気に入りそうな木工職人を必ずや見つけてきましょう!」


 ちょっと気合い入りすぎてるような。


「ところでエドワード。食べ物は商会で作らないのかしら? この間食べたベーコンとか干物はとても美味しかったし、エドワードの作る食べ物はどれも美味しいわ。量産すればローダウェイクの名物になるのは間違いないわよ」


 母様は僕の作った料理が、お気に入りなようで嬉しいな。


「ちょっと待て! 儂はそのベーコンと干物の話は初めて聞くのだが?」


 おじい様、ごめんなさい。おじい様がオークションに行っている間にみんなで食べたのです。


「あら、あなた。この間食べたじゃない。ボケるにはまだ早いわよ」


 おばあ様それは少し無理があるかと。


「そうだったか? 最近物忘れが……って騙されんぞクロエ! まだ物忘れするような歳ではないわい!」


「おじい様がオークションへ行かれてる時に食べたのです。おじい様とマーウォさんの分もまだありますので、酒のツマミにでも召し上がってください」


「エドワード! こんな優しい子に育って、おじいちゃんは嬉しいぞ!」


 おじい様が僕を抱きしめますが、お髭が痛かったです。

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