第84話 スライムの活用法?
アスィミが部屋をノックして入ってくる。
「エドワード様、家具工房から木の箱が届きましたが、いかがいたしましょうか?」
「もう届いたの? 僕の部屋に運ぶように言ってもらえる?」
「畏まりました」
しばらくすると大きな箱が2つ届けられる。横幅1メートル、高さ2メートル、奥行き50センチのかなり大きな箱だ。全面5センチほどの空間ができた2重構造になっており。正面には蓋が付いてる。まるで大型の冷蔵庫のようだ。
商人ギルドのアリアナに図面を渡してお願いしてあったのだが、角などは図面と違い綺麗に木の板が曲げられていて図面以上の仕上がりになっている。また、扉のヒンジも鉄でできたストラップヒンジと呼ばれる、横長のおしゃれにデザインされたものが取り付けてあり、そのままインテリアとしても置けそうな仕上がりだ。
「エドワード様、この大きな箱は何に使うのでしょうか?」
アスィミが聞いてくる。
「食材の鮮度を保つための箱を作りたいから、ちょっと実験してみようと思って」
『食材の鮮度を保つ箱か! どうやって作るのだ?』
「ほら、要塞のときに火の粉対策でアイススライムを薄くしたものを頭から被ってたんだけど、あの温度でも結構涼しかったから、アイススライムで食材を冷やす箱が作れないかなと思ってさ」
『それがその箱なのだな』
アイススライムの糸は出すときに、ある程度温度調節ができる。冷たいとか、凄く冷たいといったアバウトな感じではあるが。
凄く冷たくしたアイススライムの糸を水に入れてみたところ、かなりの速さで凍ったので、冷蔵庫だけではなく、冷凍庫も作れるかもと思い箱を2つ作ってもらった。
冷蔵庫の温度は2度から6度ぐらいだ。それに対し冷凍庫の温度はマイナス18度以下と決められていて、これは微生物が増殖できなくなると言われている温度らしい。
アイススライムの糸の特性としてもう1つ、温度を凄く冷たくしたときに限り、硬さを調節できるのだ。スライムの糸に氷属性を付与した場合は固まるの1択なのだが、アイススライムの糸は柔らかいまま、冷たい温度を保つことができるし、硬くもできるのだ。
冷たいアイススライムの糸と、凄く冷たいアイススライムの糸を、それぞれの箱の空間の部分に流し込み、木・アイススライム・木の三層構造にしてみた。
「よし、こんなもんかな」
庫内がひんやりして気持ちいい。成功したのではないだろうか。
『エディ、箱の外まで冷たいぞ』
木材の熱伝導率が低いとはいえ、冷たいアイススライムには勝てないようだな。
「うーん、これじゃ部屋の中まで寒くなっちゃうな、そうだ!」
熱伝導率の高いアルミの糸と、熱伝導率の低いチタンの糸を出して、ウインドカッターを付与したミスリルの糸でカットする。
それぞれを箱の中に入れ、木・チタン・空気・チタン・アイススライム・木・アルミの七層構造にしてみたのだ。
「今度はどうかな?」
『おお! 外側が冷たく無くなったぞ!』
「庫内もさっきより冷えてるから取りあえず成功かな」
成功を喜んでいると、父様と母様、おばあ様がやって来た。
「何やら変わったことを始めたって、アスィミから聞いたけど?」
「エドワード、その大きな箱は何かしら?」
どうやらアスィミが報告に行ったようだ。
「食材の鮮度を保つための箱、冷蔵庫と冷凍庫です」
「「「食材の鮮度を保つ?」」」
「はい、食材は冷やしたり凍らせることによって腐りにくくなるので、これが食材を冷やす箱の冷蔵庫、こっちが食材を凍らせる箱の冷凍庫になります」
みんな冷蔵庫と冷凍庫を開けたり閉めたりして確かめている。
「これはすごいね。どういう構造になっているのか聞いてもいいかい?」
父様が質問してきたので構造を説明した。
「アイススライムの糸がそんなことに役立つとは考えたね」
「はい、保存できる食材が増えると、料理の幅が広がるかなと思いまして」
「人を呼んできて厨房に設置してみましょう」
母様がそう言うとメイドたちが人を呼びに行き。冷蔵庫と冷凍庫は無事厨房に設置された。
「エドワード様は料理業界に革命を起こし続けますね」
料理長のロブジョンさんは、冷蔵庫と冷凍庫が設置されてご機嫌である。
「ところでエドワードはこれを商会として売りに出すのかい?」
「えっ、商会でですか? 全然考えてなかったですけど」
「これは、貴族だけでなく飲食店でも十分売り物になると思うけどね。飲食店については価格次第だけど」
「実は、まだ1つだけ分からないことがありまして、このアイススライムが、どのくらいの期間もつのか分かってないんですよ」
「なるほど、永久的じゃない可能性もあるってことだね。確かにその通りだ。ロブジョンは温度に注意して使って、変化があるようならエドワードに報告してね」
「畏まりました、お任せください」
ひとまず完成した冷蔵庫と冷凍庫が、どのくらいもつのか実験しながら試験運用が始まったのだった。
◆
夕方、カトリーヌさんによって完成されたメイド服を登録する作業に入る。
1つ登録するのに魔力300を消費するので、最低でもメイド服3種類、エプロン10種類の13種類登録しなくてはならない。現在の【MP】1505では最低でも3日はかかる。
本当は1日で5種類いけるのだが、消費魔力が少ないとはいえ、ミラブールの分の魔力やもしもの時に備えると1日4種類が限界だろう。そうなると4日かかるな。
「カトリーヌさん、これを登録すればいいんですね?」
「ええ、いいわよ。体の大きい人は少ないから、普通サイズと小さいサイズから作ったわ。大きいサイズはまだ作ってる最中だから明日まで待ってもらえる?」
「どのみち全部の登録は無理なんで大丈夫ですよ。前に見たときよりもデザインがさらに良くなりましたね?」
「あら、エディ君分かる? エディ君の能力で量産できるから、もう少し凝ったデザインに変更したわ」
「確かに200枚以上同じのを作るのは大変ですもんね」
「大変というよりも私1人では絶対に無理よ」
「誰か雇った方がいいですかね?」
「うーん、基本的にはエディ君の能力を上手く使えばいいから、増員は次に受注が入った時でいいんじゃない? そもそもこんな短期間で作る物でもないからね」
「なるほど、今回が特別ってことですね」
そういえば決めておかなければならないことがあったな。
「ところで値段ってどうしたらいいですかね? 僕じゃ全然分からないですよ」
「そうね、スパイダーの糸を使ってるし金貨15枚ぐらいが妥当かしら、一般販売するとしたら20枚はいくと思うわよ」
「金貨15枚! めちゃめちゃ高いんですね」
「そうよ、流行りのシルクで作ったドレスと同じぐらいかしら」
「ジャイアントスパイダーの糸だったらどのくらいしますか?」
「ジャイアントスパイダーの糸は特別よ、金貨1000枚で買えるか分からないわね」
「そ、そんな高いんですね」
「軽い上に鉄よりも丈夫なのだから当然ね。持ってたら家宝レベルよ」
カトリーヌさんと会話をしながら、4種類の登録を完成させた。
【能力】糸(Lv5)
【登録】麻、綿、毛、絹
【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、ピアノ線、マグネシウム、チタン、タングステン、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル
【特殊】元素、スライム▼、スパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)
【付与】毒▼、魔法▼
【媒染剤】鉄、銅、アルミ、ミョウバン
【素材】毛皮▼、ホーンラビットの角(22)、ダウン(5)、フェンリルの毛(8)
【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼
【登録製品】頭陀袋、メイド服▼、エプロン▼
【作成可能色】24色▼
【解析中】無
登録された中身を確認してみると。
【メイド服】S、M
【エプロン】S、M
しっかり4種類登録されているな。しかし、サイズの表記が普通サイズと小さいサイズではなく、MとかSに勝手に変換されていたのだった。




