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第83話 思わぬ再会※

 今朝、おじい様の出発を見届けた後、カトリーヌさんは正式なメイド服を作成中ということで、僕はメグ姉とジョセフィーナさんを連れて、ローダウェイクの町で現在改装中のモイライ商会の店舗を見に行くこととなった。もちろん僕の髪色は目立つので、頭からフードを被って隠しているけどね。


 変わった食材がないか確認しながら歩いていると、新鮮な野菜や魚が売っているのが見える。


「ローダウェイクには新鮮な野菜や魚が売っているんだね」


「本当ね、コラビとは大違いね」


「エドワード様、ローダウェイクではプレジール湖の恩恵を受け、綺麗な水が豊富なので野菜などは瑞々しく魚も獲れたばかりのものが並んでいるのです」


「へーそうなんだね。町と湖が凄く近いけどプレジール湖が大雨とかで溢れ出ることはないの?」


「プレジール湖は上流から水が流れてきているわけではなく、湧き水が溜まって出来た湖ですので、大雨でも水量は一定です。大雨の分は川へ流れて行くので、今までに溢れたことはないそうです」


 しばらく歩いて行くとモイライ商会の店舗となる建物に到着したのだが。


「大きいな……」


「確かに随分と大きいわね……」


「そうでしょうか? エドワード様の商会ならこのくらいは当たり前かと」


 目の前にある建物は3階建ての建物で、真っ白な壁に青色の屋根が非常に目立つ。


「いきなりこんなにも品物ないよね?」


「そうね、カティはメイド服にかかりっきりだし、レギンもエディの武器を作っていたわね」


「いきなり3階まで品物で埋めなくても良いかと。最初に1階だけオープンして、品物の量によって2階、3階とオープンしていけば良いかと」


「確かにそうだね、それならなんとかなりそうだよ」


 建物の確認が終わった僕たちは、何かお土産になりそうなものはないかと商店街を歩く。どこからか、パンの焼ける良い匂いがしたのでお店に入って見る。


 店の中には美味しそうなパンがたくさん並んでいた。


「いらっしゃいませ」


 返事をした女性は年齢20代半ばくらい。セミロングのブラウンヘアーをハーフアップにした、お胸様ゼロの女性だった……?


 あれっ? どこかで見たことのあるような……。


 僕が店員を見ていると向こうもこっちを見る。


「「……」」

「エディ、どうしたの?」


 メグ姉が聞いてくると店員が。


「あっ! エディ様!」


「やっぱり、どこかでお会いしましたよね?」


「アルトゥーラです! アルトゥーラの商人ギルドで副ギルド長をやっていたエミリアです!」


「あぁ、エミリアさんでしたか! なんでパン屋さんで?」


「ここ、私の実家なんですよ」


 エミリアさんは、僕とアントニーが揉めた後、アントニーを庇うギルド長と喧嘩して商人ギルドを退職。ローダウェイクにある実家へ戻ってきて、たまにパン屋さんを手伝っているとのことだ。


「僕のせいで副ギルド長を辞めてしまったんですね」


「エディ様のせいではないので、お気になさらず」


「ローダウェイクの商人ギルドでは働かないのですか?」


「それについては悩み中ですね。この歳で下働きからってのも色々大変なので」


 そうか、使われる側だけじゃなく使う側も気を使うんだな。


「そうだ! よかったら僕の商会で働きませんか? 店舗を出すことになっているんですけど、商売に詳しい人がいてくれると助かるんですが」


「エディ様の商会でですか?」


「エドワード様! ハリー様に相談することなく、外部の者を雇い入れるのはどうかと」


「父様なら反対はしないと思うけどな」


 反対するジョセフィーナを宥めていると。


「ハリー様って大公様のことよね……エディ様じゃなくてエドワード様!? もしかしてご病気になっていたというエドワード様なのかしら?」


「内緒ですけど、そのエドワードです。言いふらさないでくださいね」


「わ、分かりました」


「ジョセフィーナ、エディが勧誘しているんだからいいじゃない? 取りあえず、エディのお父さんに会わせてみればいいんじゃないの?」


「それが一番ですね。エミリアとやら、今から城までご足労願えるか?」


「メグ姉とジョセフィーナ、ちょっと待って! エミリアさんの都合もあるし、まだ商会に入るとも言ってないんだから」


「あら、そうだった? まさかエディの誘いを断ったりしないわよね?」


「その通りだ! エドワード様からの勧誘を断るなんて万死に値する!」


「だから2人共、脅しちゃダメだって」


 驚きっぱなしだったエミリアさんが復帰したみたいで、何か考え込んでいる。


「エディ様? でいいのかしら?」


「ええ、商会の会頭はエディなので大丈夫ですよ」


「大公様に確認をとるって言う事は、エディ様の商会に大公家がついているという事でいいのかしら?」


「そうですね、その辺りを説明しておくと、この町に来て3つの商会を吸収して大公家が保証人になることで、商会のランクがAランクになりました。今後他の貴族や王家との取引も予測されるのですが、吸収した商会の会頭は、元々売り手と言うよりは作り手なので、副ギルド長にまでなったエミリアさんなら上手く商会を回せるかなと思いまして」


 エミリアさんは僕の手を掴むと。


「エディ様の商会で雇ってください! このチャンスを逃すなんて有り得ないわ!」


「それでは城の方へ戻りましょう」


 ジョセフィーナさんが城へ戻ろうとした瞬間。


『ちょっと待つのだ! まだパンを買ってないではないか!』


「そうだった、忘れてた」


 パンを大量に購入して城に戻るのだった。


 城に戻り、父様と母様にエミリアさんを紹介すると。


「なるほど、アルトゥーラでそんなことがあったのね」


「ハットフィールド公爵家では、そんなことになっているんだね」


 母様と父様はアルトゥーラでの出来事に色々思うところがありそうな感じだ。


「あの、ハットフィールド公爵様は優しいお方なのですけど……」


 エミリアさんが言うと。


「まあ言いたいことは分かるよ。民と公爵の関係が近すぎるのかな?」


「近すぎると、まずいのですか?」


「まずくはないんだけどね、関係が近すぎると威厳みたいなものは薄れちゃうからね。なめられると言うよりは、友達感覚に近いのかもしれないね」


「そういう事もあるんですね」


「そうだね、エドワードも気を付けるんだよ」


「はい、分かりました。ところでエミリアさんはどうでしょうか?」


「いいんじゃないかな。エドワードも忙しくなるし、商会を上手く回す人物も必要になるだろうからね」


「ありがとうございます!」


 こうしてエミリアさんを、モイライ商会で雇うことが決定したのだった。



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 メイド服を着たアスィミのイメージ画像です。

挿絵(By みてみん)


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