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第80話 Side とある伯爵家

「クリストフ様! 商人ギルドより大変な情報が飛び込んできました!」


 家令のアヴァールが珍しく興奮した様子でやってくる。


「アヴァール、いったい何事だ? この忙しい時に」


「王都の商人ギルドに潜り込ませている者からの情報ですが、オークションにアウローラ王国金貨が出品されるとのことです!」


「アウローラ王国金貨が? どこの公爵が出品したんだ?」


「いえ、公爵からではなく、6枚目のアウローラ王国金貨が見つかったとのことです」


「6枚目だと! 出品者の情報は?」


「それが、出品者の情報は不明ですが、ローダウェイクの商人ギルドに持ち込まれたものと言うことしか分からないとのことです」


「チッ、ローダウェイクか……ヴァルハーレン領じゃスパイは難しいな」


「そうでございますな、今もあちこちに監視の目が光っておりますれば下手に動くのは危ないかと」



 俺様の企みをことごとく潰しやがって。



「こうなったのも全て忌々しいヴァルハーレンのせいだ!」


「クリストフ様、今しばらく大人しくしておく方が良いかと」


「奴らの動きはどうだ?」


「テネーブル伯爵の手の者がかなり領内に入り込んでおります、ベルティーユ侯爵の方も同様の監視下に置かれているとの情報も入って来ております」


「王の犬の分際で我が領内に入り込むとは生意気な。まだ要塞の方へも行けないのか?」


「はい、完全に付近には入り込めないように制限されております。このままではあの地は没収されることになるかと」


 クソッ、要塞の建設には5年もかかったのだぞ。



「あの、真っ昼間のように光り輝いた現象は何だったのだ……」


「大公様の新しい魔術でしょうか?」


「要塞の一部が溶けていたとの話だが、すぐに立ち入り禁止にされたので何も分からんな……イグルス帝国が不甲斐ないからこうなるんだ! 要塞まで提供してやったというのに!」


「イグルス帝国は数年、下手すれば10年はうちと戦争をしている場合ではないでしょう」


「戦争に来た5人の将軍全て討たれたというのは本当か?」


「それについては情報が一切入ってこないため分からないそうですが、ヴァルハーレン大公はすでにシュトライト城を陥落させたという噂が流れているそうです」


「要塞を潰しただけではなく、シュトライト城を陥落させただと!」


「はい、確認が取れないのは難点ですが。どうやらその影響で我が領内にイグルス帝国からの流民が流れ込んで、農作物などを荒らしまわっているらしいのです」


「どうやって我が領内にイグルス帝国からやってくるのだ⁉」


「それが要塞にイグルス帝国軍を招き入れた時のルートを通って来ているらしいのですが、監視にルートがばれるとまずいので、調査できない状況でございます」


「ルートはベルティーユ侯爵領も横切るのに、ベルティーユ侯爵は何をやっておるのだ!」


「ベルティーユ侯爵も動けないのでしょう。なお今回の件で貴族派全てが、監視の対象に入っているとの情報も入って来ております」


「それは不味いな……バーンシュタイン公爵が怒らなければ良いのだが……何か迷惑をかけたお詫びの品を贈ることにするか」


 バーンシュタイン公爵は貴族派のトップなのだが、気難しい人だ。


「それがよろしいかと。オークションでバーンシュタイン公爵好みの物があれば競り落とすのがよろしいかと」


「そうだな。所でヴォルガーの方とは連絡が取れたか?」


 王領内に立派な砦を建ててやったのに何の成果も上がってない無能め、所詮は盗賊という事か。


「そちらについては、監視の目が厳しい状況のためウェチゴーヤ商会の手の者を使って調べさせたのですが、砦が粉々に破壊されヴォルガーたちの痕跡も一切見つからなかったとの報告が入った次第にございます」


「クソッ! 俺様の侯爵への道を邪魔ばかりしおって! それでどこの手の者にやられたのかは分かったのか?」


「申し訳ございません。皆目見当もつかないとのことです」

 

 どいつもこいつも使えないヤツばっかりだ。



「今楽しめるのはオークションだけという事か」


「左様でございます。アウローラ王国金貨の方はどういたしましょうか?」


「もちろん落とす! ウェチゴーヤ商会に金を集めるように指示をだせ。ジャイアントスパイダーの糸は要塞を()()()()ご機嫌取りに王家へ献上せねばならぬから絶対に落とさなければならぬ! アウローラ王国金貨は今や公爵以上の貴族が持つにふさわしい金貨だ。俺様のコレクションでも絶対に揃わないと思っていた金貨が転がり込んできたのだ。この機会に落とさなければ後悔するだろう」


「それではウェチゴーヤ商会には指示を出しておきます」


「オークションには俺も顔を出して直接競り落とす。そうすれば、ウチに借金している貴族どもに関しては引き下がるだろう」


「さすがはクリストフ様でございます」


「当然だ! オークションなら監視されていようが堂々と参加できるから、息抜きにもちょうどいいだろう」


「それでは、至急王都への移動の準備をいたします」


 そう言うと家令のアヴァールは慌ただしく退出していった。


 アヴァールが出て行ったのを確認した俺は、寝室からしか行けない隠し部屋に入る。


 そこには数多く並べられた美術品の品々。その一角にある貨幣コレクションを眺めほくそ笑む。


「ふう。ここに遂にアウローラ王国金貨が並ぶのか。これは私に侯爵どころか、公爵になれとの神からの啓示ではないのだろうか?」


 今日は前祝いに秘蔵のワインを開けることにしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 公爵は王族だから、その他の貴族がなれるのは侯爵までかと。。。
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