表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/422

第8話 糸の能力

 朝一で孤児院のみんなに、元気になったことを報告すると、みんなに喜んでもらえたがメアリーやアレンたちは、僕に報告したあとは戻ってきてないそうだ。


 まあ、会ったら会ったで気まずいので別にいいんだけどね。


 その後、情報を整理したり能力の実験をするために、魔の森近くの人気のない場所に来ていた。


 前世の記憶が戻った今、メグ姉に抱き着かれて寝るというご褒美でしかないイベントをこなし、いくつか分かったことや思い出したことを整理していく。


 まず僕の前世の名前や仕事など、個人情報に関する記憶は一切残っていないし、全く思い出せないようだ。つまり僕の前世がどんな人物だったとか、何歳まで生きて、何が原因で死んだのかすら覚えていないことになる。


 膨大な知識の量から考えると、今の歳と同じ7歳で死んだということだけはないのは確実だと思う。


 前世の個人情報に関する記憶がないせいか、性格や人格が前世の影響を受けたり引っ張られるといったこともない。単純に前より知識の量が増えて、賢くなったと考えればありがたい。


 知識が増えた分、多少記憶が混ざる前より大人びた感はあるかもしれないが、祝福の儀の影響とすれば大した問題ないはずだ。



 そして、この世界に関してだが、文明レベル的には中世ヨーロッパの前期ぐらいではないだろうか。魔術があったり魔物がいたりするので、一概に同じとは言えないが、記憶にある情報と照らし合わせるとそのくらいが一番近いと思う。


 大人扱いされる年齢も中世ヨーロッパに近いだろう。その時代にはまだ子供という概念がなく、7歳ぐらいで小さな大人と見られていたという話もあり、普通に働かされていたそうだ。この世界でも7歳になり祝福の儀を受けて大人と同じ扱いになるのだが、地球と違って、この世界では女神様から加護を授かるだけましなのかもしれない。


 そして、【加護】についてだが、ミネルヴァという女神の名前に聞き覚えがあった。


 音楽・詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司るローマ神話の女神様だ。製織も司っていることから、僕の糸の能力って本当に生産職の可能性もでてきてしまった。


 ミネルヴァは他にも知恵の女神、戦争の女神、 芸術の女神とか言われており、ギリシア神話にでてくるアテナと同一視されているとか。


 アテナはギリシア神話で有名な戦争の女神なんだが、色々と司っているローマ神話のミネルヴァの方が多才に見える。


 モイライの加護も、地球の神話に出てくる神の名前なのかもしれないが、今のところは全く思い出せない。


 ◆



 それでは、現状を整理できたので、早速、糸の能力の検証を始めることにしよう。


 まずは、昨日失敗した某アメコミヒーローの技からだ。周りに()()()()()のをしっかり確認して。


「糸よ出ろ!」


 ポーズを決めるが、やはり何も出ない……。


 イメージが弱いのだろうか? 魔法はイメージが大事とかいって、無双するパターンがあったと思うので、今度は目を瞑ってしっかりとイメージしてみる。


 手首から糸が出るイメージをしっかり固めて。


「糸よ出ろ!」


 ポーズを決めて待つこと数十秒、やはり何も出ない……。念のため、誰かに見られていないか、もう一度周囲を確認しておく。


「そう言えば、手首から出るっていっても、実際手首からどうやって出るんだろう?」


 全然思い出せないな、というかその辺はボンヤリした感じでも出るのが定番だと思っていたのだが、意外と現実は厳しいようだ。


 あれっ? そういえば、新しい映画では手首に機械みたいなのを装着していたような気がするぞ……。


 ……そうだ! 元々機械自体はついてたけど、最初の映画化する時に『高校生がそんな機械発明できないだろう』という感じでなしにしたけど、結局その後の作品では復活させたみたいな話じゃなかっただろうか。


 そうなってくると、機械がないからダメなのか、それともそのイメージが邪魔してるのか、一向に出る気配すらない。



「よし、別の方法を考えよう」


 糸を操るネタはまだまだたくさんあるはずだ。気持ちを切り替えて考えよう! ……記憶を漁った僕は、ある漫画を思い出す。


「そうだ、これがあった!」

 

 失敗続きで血迷った僕は、大きな木に向かって走り出し、ジャンプする。


「立体○動装置!」


 当然ワイヤーなんて出るはずもなく、ゴロゴロと木の下の草むらに突っ込んでしまった。


「痛い……」


 精神的ライフゲージがゼロになった僕が、体に絡まった草を取った瞬間。

 

『素材、カラムシを確認。解析しますか?』


 突然、頭の中に直接響き渡り、目の前に透明な画面が現れたのだ。


【素材】植物、カラムシ、麻糸の原料


 解析しますか? ・はい ・いいえ


 登録しないと使えるようにならないタイプだったんだなと思いながら<はい>を押すと。


【素材】植物、カラムシ(解析中)

【登録数】1/100

【解析予測時間】24時間(登録数によって変わります)


「……」


 あと99本で使えるようになると分かった僕は、日が暮れるまでカラムシを探し回ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ