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第79話 商会のランクアップ

 オークションの話は一段落したので、モイライ商会のランクアップ手続きのために商人ギルドへ向う。


 主なメンバーは僕、父様、メグ姉、カトリーヌさん、レギンさんとマーウォさんの6人だ。もちろんジョセフィーナさんや護衛の人たちもいる。


「凄い景色だ!」


 ローダウェイクに運び込まれてからずっと気絶していたため、一度も町並みを見ていなかったのだ。


 馬車からローダウェイクの町並みを見ているのだが、とても綺麗で幻想的な景色に感動した。


 ローダウェイクはプレジール湖という大きな湖に囲まれており、城自体は湖の中に少し飛び出す形で建てられていて天然の要塞という感じだ。城の外観はドイツのノイシュヴァンシュタイン城みたいな白亜の城で、まさにおとぎ話の世界のようだった。町の中にはいたるところに湖から引いた水路が整備されていて、水の都という表現が相応しい町並みだった。


「そういえばエドワードは、ローダウェイクの町並みを見るのは初めてだったね」


「はい、とても綺麗な町並みなんですね!」


「ローダウェイクはプレジール湖の様々な恩恵を受けて発展していった町なんだよ」


 馬車は白い3階建ての建物の前で止まる。


「さあ、着いたよ。ここがローダウェイクの中の商業ギルドだ」


「商業ギルドも町並みに合わせて白で統一されているのですね」


 商業ギルドに入って行くと広いロビーが豪華だ。商業ギルドは大抵ドタバタしてる感満載なのだが、ここはそんなこと一切ない。


「ここは貴族専用の入り口なのかしら?」


「その通りだよ。貴族専用というか大公家専用の入り口だよ」


 カトリーヌさんが質問して父様が答える。大公家専用入り口なんてあるのか!


 広いロビーをまっすぐ行くと、カウンターが1つだけ用意されていて、そこには女性が座っていた。


 歳は20代前半ぐらい、アッシュゴールド色のゆるふわロングの髪に、カナリーイエロートルマリンのような黄色い瞳が特長で、お胸様は母性高めだ。


 女性は僕たちに気がつくと立ち上がり会釈する。


「これは、ヴァルハーレン大公様。お呼び下されば参りましたのに」


「やあ、アリアナ。今日は色々と手続きもして欲しかったので、来させてもらったよ」


「手続きでございますか? 畏まりました。ではこちらに」


 アリアナさんが近くの扉を開くとそこには大きな部屋があり、豪華なソファなどが並べられている。


 みんなが着席すると父様が話し出す。



「まず、アリアナに紹介しておこう。この子が息子のエドワードだ、そして息子の恩人のマルグリット、カトリーヌ、レギン、マーウォだ。あとエドワードの後ろにいるのはジョセフィーナなんだけど覚えているかい?」


 アリアナさんは僕を見て、次に後ろに控えているジョセフィーナさんを見てハッとする。そして目に涙を浮かべ。

 

「坊っちゃまにフィーナ!? それに恩人と言うことは遂に見つかったのですね! おめでとうございます。坊っちゃまはソフィア様にそっくりな顔立ちで、フィーナも美しくなりましたね」


 どうやらアリアナさんは僕たちの事を知っているようだ。


「エドワードたちにも紹介しておくね。彼女はアリアナ・グロース。ヴァルハーレン家で騎士団長をしている、フォルティス・グロースの次女だ。商人ギルドで大公家専属の仕事をやってもらってる。エドワードたちも今後はアリアナを必ず通すようにしてね」


「父様、分かりました。エドワード・ヴァルハーレンです。アリアナさん、よろしくお願いします」


「エドワード様、こちらこそよろしくお願いいたします。私のことはアリアナと呼び捨てでお呼び下さい」



「よし、それじゃあ色々と話をしたいかもしれないけれど、エドワードが帰ってきたことによってバタバタしているから、早速本題に入るよ」


「畏まりました。本日はどのようなご用向きで?」


「エドワードがコラビの町で商人ギルドに登録していてね。現在Eランクなんだが、その商会に3人の商会を吸収させて欲しいのだけど手続きを頼めるかな?」


「コラビの町で!? 畏まりました。それではギルドカードを拝見します」


 僕たち4人はギルドカードを渡す。


「エドワード様のモイライ商会に3人の商会を吸収する形でよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


「3人の商会はAランクの商会2つとBランクの商会ですか……モイライ商会はBランクとなりますが、問題ありませんか?」


「なるほど、やはりそのままではBランクになっちゃうんだね。アリアナ、大公家が保証人になるとランクは変わるかな?」


 父様が事前に打ち合わせしていた保証人の話を持ち出す。


「大公家が保証人ですか……それならば問題なくAランクの商会としてランクアップ可能でございます」


「それでは、それでよろしく頼むよ」


「畏まりました。ランクアップの手続きをしてきますので、しばらくお待ちください」


 アリアナさんはギルドカードを持って部屋を出て行った。


「3人とも凄くランクの高い商会だったんですね?」


「レギンとリーヌちゃんは変わらないけど、私の商会はBランクだったから、エディちゃんのおかげでAランクにアップするわよ」


「さっさと手続き終えて小僧の武器を作りたいんだがな、そういえば小僧はどんな武器を作りたいんじゃ?」


 僕はレギンさんに作りたい武器のイメージを伝える。


「ふむ、なかなか今度もおもしろい考えじゃな!」


「なるほど、エドワードの能力の特性を上手く利用したおもしろい武器だね」


「はい、今後能力をある程度隠さなければならないので『糸を自由に操れる能力』ってことで片付けられる武器にしました」


「所で大公殿、鍛冶に必要な小僧が持っていない材料は、先ほどの娘に頼めばよいかの?」


「もちろんです。アリアナにはお金も預けてあるので、頼めばすぐに手配してくれるでしょう」


「それは助かるぞ」


「エドワードのが完成したら僕もお願いしようかな?」


「父様、それは良い案です。レギンさんなら父様にピッタリの武器を作ってくれますよ」


「それは楽しみだな。僕が使うとすぐに剣の方がボロボロになるので、高い剣が使えなくて困っているんだよね」


「それは大公殿の力に武器がついていけてないのだな」


「何とかなりますかね?」


「それを何とかするのが儂ら鍛冶師の仕事じゃ。そうじゃ、一先ひとまずこれを使ってどの程度でボロボロになるか、感想を聞かせて欲しいな」


 レギンさんが父様に一振りの剣を渡す。父様は鞘から剣を出して見ると。


「ふむ、形は普通の剣だけど、鉄の感じが違うね」


「うむ、その剣の素材は小僧が能力で出した、鋼という一般的な鉄よりも強度のある鉄だ」


「一般的な鉄よりも強度のある鉄ですか? 興味ありますね」


 そこへアリアナさんが帰ってくる。


「それではこちらが更新された、みなさまのギルドカードになります」

 

【商会名】モイライ商会

【会頭】エディ

【ランク】A

【従魔】ヴァイス


 本当にAランクになってしまった。


「確かにAランクになっています」


「これで色々な計画が進めるようになったわけだ、それでアリアナ、オークションへの出品はまだ間に合うのかな?」


「オークションへでございますか? 輸送に大変なものでなければ間に合いますが、どういった品でしょうか?」


「うん、モイライ商会から出品と言うことで、これをお願いしたいのだが」


 父様はアウローラ王国金貨をアリアナさんに渡す。


「なるほど、金貨ですね。金貨なら輸送に問題はありませんので……」


 金貨を見ていたアリアナさんが何かに気がつく。


「こっ、これってもしかしてアウローラ王国金貨ですか!?」


「さすがアリアナ良く分かったね」


「ちょ、ちょっと待ってください! これは大公家所有の物じゃないんですか?」


「それはエドワードが見つけて来た別のやつだよ。つまり、この国で6枚目のアウローラ王国金貨ってことだね」


「まだ時間は大丈夫でしょうか? さすがに別の輸送の問題もあるので、ギルド長を連れてきます」


「分かったよ。レークスを連れてきてもらえるかな? あっ出来るだけ内密にお願いね」


「畏まりました」


 アリアナさんは慌てて出て行き、しばらくすると、お爺さんを連れて帰って来た。


「これは大公様、お久しぶりでございます」


「やあ、レークス。確かに久しぶりだね」


「ふむ、そちらがご子息のエドワード様ですか、エドワード様、儂がローダウェイク商人ギルドでギルド長を任されている、レークスと申します」


「エドワード・ヴァルハーレンです。ギルド長、よろしくお願いします」


 そこで、レギンさんが呟く。


「レークス? 昔、王都のギルドで、ギルド長に怒られてばっかりいたあのレークスか?」


「ゲッ! レギンのじじい!」


「誰がじじいだ! 今ではオヌシの方がじじいではないか」


「レギンさん、ギルド長と知り合いだったの?」


 意外なところで繋がりがあったようだ。


「姿が変わりすぎて気がつかなかったわい。昔、王都のギルドで女に振られるたび酒を付き合わされておった迷惑なやつじゃった。確かどこかの支部に飛ばされてしまったはずだが、今ではギルド長か」


「余計なことを……」


「レギンもモイライ商会所属になったわけだし、昔話は今度ゆっくりとするといいよ」


「そうじゃな、ほれさっさと仕事をするのだ」


「ぐぬぬ、覚えておれ。それでオークションに出品されたいと伺いましたが」


「ギルド長、こちらを出品なさるそうです」


「ふむ、金貨か……アウローラ王国金貨じゃないか! これは大公家の物では無いと言うことなんですな?」


「ええ、場所は明かせませんがエドワードが、遺跡のような所で見つけた物です」


「なるほど、コレを出品したいと……今回の目玉はジャイアントスパイダーじゃったが、コレがあればウチのギルドの株も上がるな……問題は情報の統制と輸送するための護衛の問題か……」


 レークスさんが考え込んでしまう。

 

「輸送については問題ないよ。父がオークションに参加することが決まってるから、父に持たせておけば大丈夫だろう。商会からはそこにいるマーウォが一緒に行くことが決まっている、商人ギルドには情報の統制に気をつかって欲しいな」


「アルバン様が行かれるのでしたら安心ですな。情報の統制については何か希望がありますかな?」


「ああ、まず公開する情報だけど、アウローラ王国金貨がオークションに出品されると言うことだけを流して欲しい。もちろんローダウェイクの商人ギルドから出品されるという情報も大丈夫だ。ただエドワードの事や商会の事は伏せたままにしておいて欲しい」


「畏まりました。では6枚目のアウローラ王国金貨が発見されて、当ギルドに持ち込まれオークションへ出品するという情報で流すことにいたします」


「頼んだよ。そちらのギルド担当者も父と一緒の隊列に混ざるといい。そうすれば襲撃の心配は減るだろう」


「それは安心ですな。アウローラ王国金貨が出品される以上、儂自ら出向かなければならないでしょう。アルバン様に相談させていただきます。後は落札金額の比率になりますが、今回は護衛の手配など全て大公家でお任せすることになるので、ウチの手数料は2割でどうでしょうか?」


「うん、それが妥当なラインだね。エドワードもそれでいいかい?」


 オークションに出品すると右から左ってわけにはいかないんだな。


「はい、問題ありません。ジャイアントスパイダーの糸は5割だと言ってましたが、それは護衛などの経費も含まれてたんですね」


「ジャイアントスパイダーの糸もエドワード様が関わっとったとは。オークションに出品すると、輸送を狙う輩が出てくるので、護衛は手を抜くわけにはいかんのですじゃ」


「これでオークションの件は大丈夫かな。まだまだやらなければならないことが山積みだから戻ろうか? アリアナは明日来てくれるかな? レギンが購入してほしい物を纏めるからそれを取りに来てね、ついでに家で必要なものも纏めておくから頼んだよ」


「畏まりました」


 無事ランクアップすることができ、オークションの出品も可能になったので、商人ギルドを後にしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばエドワードはまだ、ローダウェイクの町並みを見るのは初めてだったね→ そういえばエドワードは、ローダウェイクの町並みを見るのは初めてだったね もしくは そういえばエドワードは、ローダ…
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